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おっちょこちょいのかよちゃん

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43 始まった夏休み

 
前書き
《前回》
 期末テストを終えたかよ子は日本平の花火大会を満喫する。一方、日本赤軍は異世界からまた新たなる人物を召喚し、丸岡修とその異世界の人物の一人・ベニートを広島に連れて行き、その地で異世界の剣を奪取した!! 

 
 花火大会を終え、皆が帰っていく。かよ子達も勿論帰ろうとしていた。
「それにしてもこの混雑じゃ、バスも混雑しそうですね」
「なんなら、車出したんで送りますよ」
「ああ、ありがとうございます」
 利治が車を運転して来ていたのでかよ子の家族は羽柴家の自動車で帰る事になった。民族大移動のように客が帰る。その時、かよ子は聞き覚えのある声で呼ばれた。
「おお、山田じゃねえか!」
 かよ子は振り向いた。
「あ、す、杉山君・・・!!」
 かよ子は花火の終わりとはいえ、好きな男子に会えて嬉しかった。杉山は彼の家族や大野とその両親と一緒だった。
「お前も来てたのか。いい花火だったよな!?」
「うん、綺麗だったよ!」
 その時、二人の高校生のカップルが見えた。よく見ると男子の方は三河口だった。
「あ、隣のお兄ちゃん!」
 かよ子は三河口に手を振った。
「ああ、かよちゃん。杉山君や大野君も一緒か」
「そのお姉さんはもしかして彼女?」
「え!?あ・・・。そうと言っていいのか、違うと言っていいのか・・・」
 三河口は返答に詰まってしまった。
「三河口君、この子達は?」
 奏子は三河口に質問した。
「ああ、この子は隣の家に住んでいる山田かよ子ちゃんだよ。この二人はそのかよちゃんの友達の杉山さとし君と大野けんいち君」
「宜しくね」
「こんにちは!」
「いよっ、仲良し!」
 杉山が冷やかした。
「おいおい、杉山君まで・・・」
「まあ、でも楽しめたんでしょ?」
 叔母が聞く。
「は、はい・・・。それで俺達はバスも混雑すると思うんで歩いて帰るつもりです」
「そう、折角主人が車出したんだから乗ってきなよ」
「いえ、山田さん達を乗せるんでしょ?それなら定員オーバーになりますよ」
「それもそうね。ま、二人で楽しんで帰ってね」
「はあ・・・。了解しました」
 一行は三河口に奏子と別れ、出口を出ると駐車場の方へ向かった。
「それじゃ、山田さん、私達はこれで失礼します」
「はい、お休みなさい」
 大野や杉山の家族と別れてかよ子達は羽柴家の車に乗った。車に乗るのは久々だが、かよ子は車の窓から見える清水の夜景が美しく見えた。
(杉山君に会えて良かった・・・)
 かよ子にとっては最高の花火大会だった。

「冬田、今日は万一の事を考えて車で来たんだ。送ってくよ」
「あ、ありがとう・・・」
 冬田は長山の家族に送って貰えるのは嬉しかったが、自分は愛しき大野と会う事ができなくて残念だった。
(大野君と花火見たかったなあ・・・)
 冬田は長山達と共に花火大会の会場を後にした。

 三河口と奏子は歩く途中、学校の友人達とばったり対面した。
「おい、楽しかったか?」
「う・・・」
「う、うん、楽しかったよ」
 北勢田の質問には奏子の方が答えた。
(まあ、折角だから皆で楽しく帰るか・・・)
 三河口はそう思い、集団で帰る事にした。
「ところで、皆はバスかい?歩きかい?」
「ああ、バスすげえ混むと思うから歩きだよ」
「そうか」
 一同は歩いてそれぞれの帰路へ向かった。

 高台の秘密基地でもブー太郎達は帰る事にした。
「それじゃ、またなブー!」
「おう、じゃあな!」

 終業式の日となった。かよ子達は体育館にて校長の話を聞いていた。どの児童もこんな暑苦しい季節なのだから、そんなにぐだぐだ長く話さないでいいだろうと思った。25分以上経ち、ようやく話が終わった。それぞれのクラスの教室に残り、夏休みの宿題や、過ごし方について注意事項などの説明が続き、ようやく帰れるのだ。かよ子は不必要になった物は前の日から少しずつ持ち帰っていたのだが、まる子はそれを怠っていたので大変な下校であった。何しろ抱えきれぬ程の大量の荷物なのだから。
「ああ、ええ、重い・・・」
「まるちゃん、手伝うよ!」
「私も・・・」
「私も・・・」
 かよ子はたまえ、とし子と共にまる子の荷物を一部持つ事にした。
「たまちゃん、とし子ちゃん、かよちゃん、ごめん・・・」
 まる子の家の前まで荷物を持っていき、後はそれぞれの家へと帰っていった。
「はあ、少し遅くなっちゃったよ・・・」
 かよ子は空腹だった。終業式の日は午前のみのため、給食はない。(テスト返却の時から、午前授業となっていた為、必然である。)ちなみにクラスメイトで食べる事に命を掛けている小杉太(こすぎふとし)は給食がなくて不満がっていた。
「た、只今・・・」
「あら、遅かったわね」
「うん、まるちゃんが荷物をあんまり持ち帰ってなかったから手伝ってたの」
「そうなのね。まあいいわ。ご飯できてるわよ」
「うん、ありがとう」

 パレスチナの日本赤軍本部。丸岡は広島で手にして持ち帰った剣を房子に差し出していた。
「杖の時とは違って今度はきっちり奪えたのね」
「はい」
「それで、これはどうするんですか?」
「『あの世界』に預けるのよ。全ての物が揃った時、その世界と我々の能力(ちから)に大いなる力が得られるの。今の日本を変えられるくらいにね」
 房子は異世界との出入り口である混沌の穴に剣を授けた。
「レーニン様、これが貴方の敵の世界の物であり、この世界を変える力を持つ剣です」
「ほう、重信房子、これであと杯、護符、杖が来れば、我が世界は理想を叶えられる。あと三つ、急げよ」
「はい」
 出入り口の向こうの声の主は剣を吸い取るように貰った。

 夏休みも数日経ち、東京に住む一人の少女・安藤りえが荷造りをしていた。
(いよいよ明日ね・・・)
 りえは親戚のおばあさんが住むという静岡・清水へ行く予定でいたのだった。

 かよ子はたまには外に遊びに行こうと外へ出た。その時、隣の羽柴家が車を出していた。
「あ、おはようございまーす!!」
「あ、かよちゃん、おはよう」
「どこか行くんですか?」
「ああ、健ちゃんがウチの娘で、この前来たさりの姉のありのいる札幌へ行く事になったから静岡駅まで送るところなんよ」
「そうですか」
「かよちゃん、北海道土産送るよ」
「うん、行ってらっしゃい!」
 奈美子は車を出した。
「札幌かあ・・・」
 かよ子は外を出歩く。暑く、帽子を被ったものの、それでも汗が出る。丁度みつやに到着し、かき氷のイチゴを頼んだ。
「ふう」
 かき氷は冷たくて美味しかった。その時、とし子が来た。
「あ、かよちゃん!」
「とし子ちゃん!」
「かき氷か、私も貰おう」
 とし子もかき氷を食べた(シロップはメロンである)。
「そうだ、お母さんがアイスクリーム作りしてるんだ。よかったら午後ウチに来ない?」
「うん、いいね!」
 かよ子はとし子と別れる。その後、すぐに走ってしまった為か、途中で腹痛になり、帰宅するなりトイレに直行するといういつものおっちょこちょいをやってしまった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「教会のピアノ」
 三河口は札幌へ向かった。そしてある少女が東京から訪れていた。そんな時、かよ子のクラスメイトの藤木茂は教会から聞こえるピアノの音に恐怖を覚える・・・。 
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