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戦国異伝供書

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第七十九話 初陣その九

「わしの上に立つ」
「そうした御仁ですか」
「わしは今言った通りじゃ」
「天下はですか」
「上洛までは考えておる」
 土佐そして四国を統一してというのだ。
「そこまではな、しかしな」
「それでもですか」
「天下人までは考えておらぬ、だがな」
「織田殿は天下を見ておられる」
「ならば」
 それならばというのだ。
「その時点で器が違うのではないのか」
「まさか」
「いや、まさかではない」
 そこはというのだ。
「わしは実際にな」
「織田殿とはですか」
「器が違うやもな」
「だからですか」
「織田殿はわしの、長曾我部家の上にじゃ」
「立たれる方だと」
「そうも思う」
 こう言うのだった。
「何処かな」
「そうなのですか」
「しかしわしはわしでじゃ」
「はい、この土佐をですな」
「まずはじゃ」
 この国をというのだ。
「一つにしようぞ」
「そうされますな」
「初陣を迎えればな」
「その時からですな」
「そうしたい」 
 こう親貞に話した。
「それからじゃ」
「左様ですか、ですが」
 親貞は兄の話を聞いて頷いてからだ、すぐに。
 暗い顔になってだ、彼にこうも言った。
「ですが」
「その初陣がか」
「何時になるか」
「何、それはじゃ」
「特にですか」
「思っておらぬ」
「焦りませぬか」
「全くじゃ」
 やはり落ち着いての返事であった、元親は親貞に対して全く何でもないといった口調で言うのだった。
「わしは何でも焦らぬしな」
「だからですか」
「このことについてもな」
 初陣のこともというのだ。
「別にじゃ」
「そうなのですか」
「時は必ず来る、ならな」
「今は、ですか」
「武芸と学問に励み」
 これまで通りそうしてというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「初陣の時に備える」
「時が来ることを」
「それだけじゃ」
 やはり落ち着いて言うのだった。
「わしはな」
「兄上がそう思われているならよいですが」
「それで武具の手入れもじゃ」
 こちらもというのだ。
「させておる」
「そちらのことも」
「何時初陣になってもいい様にな」
「そうなのですか」
「今はな、ではこれからもな」
 さらにというのだ。 
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