おっちょこちょいのかよちゃん
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41 護符の所持者、名古屋へ戻る
前書き
《前回》
森の石松は御穂神社にて御穂津姫と出会い、自身でも知らない極秘情報という平和を司る異世界の強大な4つのアイテムの存在を知る。かよ子はまる子やたまえをさりの送別会に招待する。そして東京ではある少女が静岡県に行く事を予定していた!!
パレスチナの日本赤軍の要塞。丸岡修は奥平純三に和光晴生、日高敏彦と共にいた。
「しかし、奥平。お前はよくバーシムが消えないように戻ってこれたな」
「ああ、兄貴が『この世の人間』だった頃から房子さんにとって大事な存在だったからな」
「『偽装結婚』だがな」
その時、房子が現れた。
「でも、結局は杖も護符も獲れなかったでしょうが」
「はい、すみませんでした」
「作戦を変更しましょう。『あの世界』からあの人を呼ぶ事にしたわ。目的は杖も護符も後回しにして剣と杯よ」
「それはどこにあるんですか?」
和光が質問する。
「剣は広島。そして杯は東京よ」
「『あの人』ってのは?」
次に日高が質問した。
「嘗てこの世の戦争で独裁者として動いた名将よ」
海鮮専門の料理店でさりの送別会を行った。海鮮にしたのは漁港のある清水だからマグロが食べたいというさりの意向による。勿論、反対する者はいなかった。
「皆来てくれてありがとうね。もうちょっといたくなっちゃうよ」
「それなら帰るのを延ばしてもいいんじゃないかブー?」
「そういう訳にもいかないわよ。バイトもあるし」
「そ、そうだよね・・・。あっ!」
かよ子はサーモンの刺し身を箸から落としてしまった。皿の上に落ちたので問題なく食べられるが。
(また、おっちょこちょいしちゃったよ・・・)
「かよちゃんのそのおっちょこちょい、案外可愛いわよね」
「う・・・」
さりにそう言われてかよ子は恥ずかしくなった。皆も笑う。
「でもまあ、それが山田らしいですよ」
「す、杉山君・・・」
皆にとって楽しく充実した送別会となった。
さりが名古屋へ戻る日が訪れた。さりは学校へ行こうとする従弟に言う。
「健ちゃん、また会おうね」
「はい」
「あの奏子ちゃんと上手くやるのよ」
「分かりました・・・」
三河口はさりに何を言うんだと心の中で突っ込みたくなった。三河が学校を出て90分後、さりも実家を出る。奈美子は娘を車で静岡駅まで送った。
「それじゃ、その護符、有効に使うんよ」
「うん」
さりは母と別れ、新幹線の駅の改札を通り、新大阪行きのこだまに乗車した。さりは車内である事を予定する。
(世界の異変か・・・。今度連休取ったら神戸のゆり姉の所に行ってみよう)
さりは自分の姉の事を考えた。
かよ子は学校から帰るとすぐに隣の家へ行った。
「こんにちは」
「あら、かよちゃん」
おばさんが出迎えた。
「お姉さん、無事に帰りましたか?」
「うん、問題なく帰ったよ」
「良かったあ〜」
かよ子は安堵した。
「おばさん、お姉さんは今名古屋に住んでるんですよね?」
「うん、そうよ」
「もし、異世界や日本赤軍が来た時、大丈夫かなって」
「確かに心配やけどね。まあ、大丈夫だって信じないと。かよちゃんもお母さんから杖を貰ったのもお母さんがかよちゃんの事信じてるからよ」
「うん・・・」
かよ子は己を顧みた。おっちょこちょいな自分でもできる事はあるんだと。
「あ、そうだ、明日はテストだ、勉強しないと!それじゃ、失礼します・・・、って、あ!!」
かよ子は門を出た途端、爪先を塀にぶつけてしまった。
「いたたたた・・・」
かよ子はまたおっちょこちょいをやってしまった。
「落ち着きなよ、かよちゃん」
「うん・・・」
かよ子を足を引きずりながら自分の家へ戻った。
奏子は勉強しながら、日本平の花火大会を楽しみにしていた。
(三河口君と一緒に花火見れたら、楽しいな・・・)
奏子はそう思いながら、勉強を続けた。期末テストまで時間は殆どない。しかし、その後には日本平良での花火大会が待っている。必ずこのテストを乗り越えると奏子は決めた。
(はあ、はあ、勉強大変だな・・・)
かよ子もテスト勉強に追われていた。その間の夕食、かよ子は父からこんな事を案じられた。
「かよ子、テスト終わったら日本平の花火大会見に行こうか!」
「え・・・!?うん!」
かよ子は喜んだ。その為にはテストを乗り切らなければならない。かよ子はその先の花火大会を楽しみにするのだった。
同じ頃、羽柴家から電話がかかった。奈美子が出る。
「もしもし、羽柴です」
『あ、お母さん、札幌のありでーす』
「ああ、あり!久しぶり」
ありとは、羽柴家の次女でさりの姉である。今は結婚で札幌に住んでいた。
『清水にすんごい雨っ振ったけど大丈夫だったの?』
「うん、大丈夫よ。さりや健ちゃんとかが色々頑張ってたからね」
『そっか、安心したよ。そうだ、健ちゃんが居候してんだってね』
「うん」
『夏休みに札幌においでよ、って、言っといて』
「うん、分かったよ」
『そんじゃ、お父さんにもよろしくー』
ありは電話を切った。
「健ちゃん」
奈美子は甥を呼ぶ。
「ありが夏休みに札幌来ないかって」
「ありちゃんが・・・。分かりました。伺ってみたいと思います」
三河口は承諾した。
「うん、ありにも伝えとくね」
りえはピアノが得意である。将来の夢は勿論ピアニストである。しかし、三年生になった春のある時、謎の揺れが起きた。そんな時に母からある杯を貰った。その杯は何か物質を入れるとその物質の精霊が現れるという不思議な杯だった。ある時、その杯を狙う異世界からの敵が現れた。だが、その杯の能力を使用して何とか撃退した。あれ以降、なぜか自分の夢が叶わないような予感がしてしまった。元の日常が失われたような感だったのだ。
「りえ、大丈夫よ。ピアニストにきっとなれるわよ」
母も心配した。りえの父も心配した。
「大丈夫だよ。そうだ、お父さんの知り合いに教会のシスターやってる人がいるんだ。教会のピアノを貸して貰えるよう頼んどくよ」
「ありがとう、お父さん」
りえは静岡に行ったら、気分転換のみならず、そこでも教会のピアノで特訓すると決めた。何しろ9月にあるピアノのコンクールに参加するのだから・・・。
期末テストが始まった。今日は算数のテスト、そして明日は社会のテストがある。おっちょこちょいして字を間違えたり計算ミスしては何にもならないと思い、かよ子はテストに臨んだ。
(ゆっくり、深呼吸をしよう・・・)
かよ子は深呼吸をした。素早く答えを書かずにゆっくりと問題を読み、名前の書き忘れがないか確認した。何度も何度も・・・。次の日は理科、そして休みを挟んで最後は国語のテストだった。かよ子は落ち着いて乗り越える事ができたと感じた。あとは結果が良い事を祈るのみだった。
後書き
次回は・・・
「剣を持つ者」
期末テストを終え、学校は夏休みへのカウントダウン体制となった。その間、三河口は奏子と日本平の花火大会を満喫し、かよ子も花火大会へ向かう。だが、その裏では日本赤軍がある物を奪う為に、強大な異世界の人物を日本へ送り込む・・・。
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