おっちょこちょいのかよちゃん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
38 収まりゆく雨
前書き
《前回》
飛行機内で日本赤軍の一員・奥平純三と異世界の男・バーシムと闘うかよ子達。彼女らに石松、ブー太郎、山口、川村、ヤス太郎が加勢し、奥平とバーシムを追い詰めるが、奥平は自爆スイッチを作動。だが、さりの思いが異世界の護符と連動し、瞬間移動で戦艦に戻る事ができた。だが、かよ子は雨を強めて清水の町を荒らした二人を恨み続けるのだった!!
飛行機の自爆スイッチを押した奥平はバーシムを何とか連れていた。飛行機は自爆したものの、バーシムを連れてパラシュートを何とか出して脱出した。
「くそ、何が何でも見つけて・・・」
奥平は民家の屋根に着地した。その時、別の飛行機が現れた。
「純三、乗りなさい」
女性が現れた。
「総長!」
奥平が総長と呼ぶその女性は日本赤軍の総括・重信房子だった。
「貴方もしくじってくれたわね。まあ、兎に角、次の作戦に移りましょう」
「はい」
重信は飛行機は奥平とバーシムを乗せ、パレスチナへと進んでいった。
奏子は夜も眠れずに窓の雨を見ていた。飛行機が爆破されたり、何らかの砲弾が飛ぶ様が確認され、恐怖心を持った。
(三河口君、大丈夫かな・・・?)
かよ子は弱まる雨を見ていた。
「雨が弱くなってくね」
「ああ、あいつらの仕業なんてな、雨乞い師みたいな事してくれるぜ」
「わ、私、杉山君が無事で良かった・・・」
「山田・・・。俺もお前達が来てくれて助かったぜ。サンキューな」
かよ子は照れた。
「う、うん、どう、致しまして・・・」
「あら、お似合いね、お二人さん」
さりがからかった。
「そ、そんな、ち、違うよ・・・」
かよ子は誤魔化そうとした。杉山も恥ずかしくなった。
「救出作業も済んだし、皆で公民館に行こうか」
「ところで」
大野は山口達に聞く。
「お前らんちは大丈夫なのか?」
「ああ、俺達は高台の方だったから大丈夫だよ」
「俺も」
「おいらもでやんす」
「分かった。冬田、この羽根、お前に返すよ。これで山口達をそれぞれの家へ送ってやってくれ」
「大野くうん・・・」
冬田は大野の為に仕事ができると思って嬉しくなった。
「うん、分かったわあ!」
「あ、ついでに私もお父さんとお母さんが心配してると思うから私達が行く予定の公民館へ連れてって・・・」
冬田は羽根を使って山口、川村、ヤス太郎、そしてすみ子とその兄を連れて行った。
「オイラも戻るブー」
ブー太郎は水の石の能力を行使して水の踏台を作り、サーフィンのように水の上に乗って戻る。
「じゃあなブー」
「おう、またな」
ブー太郎と別れると皆は公民館へ向かう。
「では、某も失礼致す。では」
石松はスッと幽霊のように消えた。
「それにしてもこの浸水じゃ明日は臨時休校だな」
三河口は呟いた。
「わ、私の学校もそうかな?」
かよ子が聞く。
「そうだね、かよちゃんも、長山君も、大野君も、杉山君も避難を余儀なくされる状況だし、君の学校の多くの児童も避難で学校どころじゃなくなるよ」
「うん・・・。う、ふあああ〜」
かよ子は深夜での戦いだった為か欠伸をしてしまった。
「あ・・・」
不謹慎だったかなと、かよ子は思った
「はは、気にするなよ。もう公民館だよ」
かよ子の父は全く気にしていなかった。
「うん・・・」
公民館に到着すると、戦艦は役目を終えた為か光って消えた。
「けんいち!心配してたのよ」
大野の両親もその場にいた。
「ああ、父さん、母さん、ごめんな・・・」
「大野さん、ごめんなさい。私達が息子さんに人助けに協力させていただきました」
かよ子の母が弁解した。
「そうだったんですか・・・。どうもすみません」
その一方で、長山も家族と再会していた。
「おにいちゃん、あいたかったよ・・・」
「ああ、小春、お兄ちゃん、帰ったよ」
「大野、俺達も休もうぜ」
「そうだな」
「山田も眠いだろ。休めよ」
「うん・・・」
公民館は人がいっぱいでどこの会議室も人でいっぱだった為、階段や廊下で佇む者もいた。かよ子もたまたま空いていた廊下のスペースで大野や杉山、長山と仮眠した。
(杉山君と一緒に夜を過ごせるなんて・・・)
かよ子にとっては大変な夜であったが、好きな男子と夜を共にする事ができるのにはどこか嬉しく感じるのであった。
冬田はすみ子達を送っていた。
「ありがとう、冬田さん」
「ええ」
「また、会うかもしれないわね」
「そうねえ、また敵が襲ってきたら一緒に戦いましょうねえ!」
冬田はすみ子達を下ろし終えると、自分の家へと戻った。
(疲れたわあ・・・)
冬田はベッドに入るとすぐに寝てしまった。
翌朝、雨は小降りにまで弱まった。ブー太郎は夜の戦いの疲れから寝坊してしまった。
「いつまで寝てるんだいブー!?」
母に起こされた。
「ご、ごめんブー・・・」
「丸尾君から電話だよブー!」
「わ、分かったブー」
ブー太郎は電話に出た。クラスメイトで学級委員の丸尾末男の声が聞こえる。
「富田君、学級委員としてお知らせします。今日はスバリ、休校でしょう!!」
「分かったブー」
ブー太郎は電話を切った。深夜の戦いで疲れていたので学校が休みなのは嬉しいが、同時に大野や杉山達が心配でもあった。
かよ子が起きた時には午前8時を過ぎていた。
「お、山田も起きたか」
「お、おはよう」
かよ子は空腹感を感じた。
「はあ、お腹減ったな・・・」
「ああ、配給も来るかな?浸水した店の食料は多分駄目になってる筈だし、高地にある店とかの在庫があればいいんだが・・・」
そして、5分後、案内放送が流れる。
『皆さん、食料として付近のお店のパンを支給して参りました。玄関前で順番にお並び下さい』
「パンだってよ、大野、山田、長山、行こうぜ!」
「おう!」
「北勢田、俺達も行こうか」
「ああ」
皆は順番にならんで玄関前に停まったトラックに積んであるダンボール入りのパンを待った。
「いろいろあるね」
パンはクリームパン、メロンパン、あんパン、焼きそばパン、コロッケパンなど、菓子パン・惣菜パン問わず多種多様だった。かよ子はクリームパンを貰った。大野はあんパンを、杉山はホットドッグを、長山はコロッケパンを貰って食べた。
「それにしても今日は学校休みになるかな」
大野は思う。
「この大雨じゃ、授業はまず無理だよ。この雨じゃ、学校まで被害が及んでいると思うよ」
長山はそう推察した。その時、アナウンスが流れた。
『大雨により、本日は清水市内の全ての幼稚園、小学校、中学校および高等学校は休校となりました』
「休校、か・・・」
「つまんねえな」
「でも、仕方ねえよな」
かよ子達はそんな会話をしていた。もし家にいて休校ならば杉山に会えずに寂しい思いをしていたかもしれないだろう、とかよ子は思った。
休校の連絡は冬田の家にも来ていた。
「はあ~、大野君に会えないわあ~、つまらないわねえ・・・」
冬田は学校で大野に会えない事に溜め息をついた。
「さりちゃん、今日は帰れませんね」
「ええ、でもあともう二、三日だけ、健ちゃん達と一緒にいられてよかったかもしれないわね」
「そうですか、バイトは大丈夫ですか」
「うん、電話で言っておくわ。きっと解ってくれるわよ」
「そうですね、さりちゃんが帰る前の日には皆で送別会、やりたいですね」
「いいわね、お父さん、お母さん、やろうよ!」
「もう調子に乗って・・・。ま、いいわよ」
三河口はかよ子達の元へ行く。
「皆、さりちゃんが帰る日に皆で送別会をしないかい?」
「お姉ちゃんの送別会・・・」
かよ子は幼い頃からお世話になっている為、その話に乗らないわけにはいかなかった。
「うん、やろう、やろう!」
「いいな!」
かよ子も、杉山も、大野も、長山も賛成した。三河口はさりに伝える。
「皆も賛成してますよ、さりちゃん」
「ありがとう。そうだ、折角だから清水のマグロがいいわね」
さりは送別会をありがたく思うのであった。
後書き
次回は・・・
「水浸しの町の復元」
ようやく雨が止み、清水の町は低地を中心に水に浸かってしまった。その光景を見てただ呆然とするしかできないかよ子達。その時、さりの願いに対して護符の力が応え出す・・・。
ページ上へ戻る