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ペルソナ3 ケン と マコト

作者:hastymouse
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前編

 
前書き
前回、P3の天田君とP4の菜々子ちゃんの競演を書いた際、P5キャラとの共演はできないのか考えてみました。P5はP4の何年後の話なのか明確になっていませんが、5年後という見方が主流のようです。
ということはP3からは7年後。アレ? じゃあマコちゃんと春ちゃんは、天田君と同い年ではないのか?
ということで、この話です。ちょっと大人びた二人の子供の冒険が始まります。
 

 
その顔には見覚えがあった。
連続強盗で手配を受けている男だ。確か・・・名前は大高。
土屋という男と2人組で高齢者の住まいを狙って犯行を重ねているらしい。最近の事件では高齢の男性に暴行を加えており、被害者は意識不明の重体となっている。犯人は既に2名とも特定され指名手配されている。それでも、どこかに潜伏しているらしくて未だに捕まっていない。
もちろん、私の見た男が人違いである可能性もあるのだけれど、すぐにマスクをしてサングラスをかけるという行動はあまりに怪し過ぎる。
(さて、どうしようか・・・)
今日、一緒に来たお姉ちゃんは、少し前に「用がある」と言って店の外に出たまま、まだ戻って来ていない。
大高と思われる男は、がっしりとした体格にグレーのシャツ、黒いズボンという姿。少し落ち着かない様子で何度か腕時計を確認している。やがてしびれを切らしたように席を立つと、会計を済ませ、店を出て行ってしまった。
私は一瞬迷ったものの、そのままにもしておけず、慌てて会計を済ませると男の後を追って歩き出した。お姉ちゃんには「後で連絡する」という伝言を店の人に頼んでおいた。
大高はポートアイランド駅の方に向かって足早に歩いている。
もう夏も終わりが近いが、日差しはまだまだ強い。それでも休日とあって人通りはそれなりに多かった。
なんとかチャンスを見つけて警察に連絡を入れたい。少し距離を取って後ろを歩きながら、私はその方法を考えた。
携帯電話があれば楽なんだけど、残念ながら私はまだ持たせてもらっていなかった。最近は共働きの家庭も多く、小学生でも携帯を持っている子は多い。うちはその辺、少し固いのかもしれない。
手配犯の尾行など、自分でも無謀なことをしていると思う。それでもこのチャンスを逃したくはなかった。
繰り返し弱い高齢者を狙って襲うという卑劣な行為がどうしても許せない。
犯行の全てが明らかになったわけではないけれど、既にかなりの金額を荒稼ぎしているはずだ。普段は温厚なお父さんでさえ、この犯人に対しては怒りをあらわにしていた。
男は駅の近くまで来ると、立ち止まって携帯電話をかけ始めた。
今が通報のチャンスだ。私はあたりを見回してみた。警官は見つからない。携帯電話が普及したため、公衆電話もめったに見かけない。
すぐ目の前の映画館には、宣伝用モニターで流している映画の予告編を食い入るように見ている半ズボンの男の子がいた。
彼が見入っているのは、現在公開中の戦隊ヒーローの劇場版のようだ。
見たところ年齢的には私と同じくらいのようだけど、この年になってもああいうものに夢中になれるんだから、男子って本当に子供だと思う。
私は彼に近づいていくと「ちょっといいかしら・・・。」と声をかけた。
「えっ?」
急に声をかけられて驚いたのか、顔を少し赤らめて「な・・何?」とあたふたと振り返る。
「あなた、もしかして携帯電話を持っていない?」
「も・・持ってるけど・・・」
「いきなりで悪いんだけど、電話をかけさせてもらえない?お礼はするわ。」
我ながら強引な言い方だとは思うけど、ともかく今は時間が惜しい。
「それは・・・まあ・・・でもなんで・・・」
男の子は事態が呑み込めずに戸惑っている。
「ごめんなさい。説明しているヒマが無いの。」
こちらの緊迫した雰囲気が伝わったのか、彼はようやくポケットから携帯電話を引っ張り出した。
私はそれを慌てて受け取ると、すぐにお姉ちゃんの携帯電話にかけた。コール2回でお姉ちゃんが出る。
「お姉ちゃん?私・・・。」
「マコト!どうしたの? 店に戻ったらいないから心配したわ。今どこにいるの。」
お姉ちゃんが怒った声で言った。。
「待って!それより聞いて。あいつを見つけたの。お父さんが追っている強盗の一人。名前は大高だったはずよ。」
「えっ?なんですって?」
お姉ちゃんは意表を突かれたように訊きかえす。
「多分、間違いないと思う。はっきり顔を見たの。でも今はマスクにサングラスをかけてしまってるわ。」
話しながらも大高から目を離さずにいると、電話が終わったのか、大高は駅の方に向かって足早に歩き出した。
「今、ポートアイランド駅よ。モノレールに乗ろうとしてるみたい。警察に連絡を・・・。」
私は話しながら、その後を追い、駅に向かって歩き出した。
「ちょっ、ちょっと・・」
それまで横に立って茫然としていた男の子が、慌てたように声をかけてきた。
「僕の携帯電話!」
夢中になっててうっかりしてた。
「申し訳ないんだけど、しばらく貸してくれない?必ず返すわ。あなたの連絡先を教えて。」
「えっ、そんなこと言われても・・・。」
男の子はとまどった様子だ。この状況では当然のことだろう。見知らぬ相手にそこまでするわけがない。いくらなんでも強引過ぎたようだ。
これは、あきらめるしかないか・・・。
「それより今の話・・・強盗ってどういうこと?」
男の子が真剣な顔で訊いてくる。
一方、大高が改札に入っていくのが見える。このままでは見失ってしまう。これ以上話をしている暇はない。
「お姉ちゃん。追いかけるわ。また連絡する。」
「ちょっと、マコト・・・待ちなさ・・・」
お姉ちゃんの声を振り切って電話を切ると、男の子に五百円玉を添えて携帯電話を返した。
「ありがとう。使用料よ。」
それだけ言うと、私は慌てて大高を追って走った。
改札まで来るとホームに上がる男の後ろ姿が見える。急いでICカードで改札を抜けて後を追う。
ちょうどホームにモノレールが入ってくるところだった。
急いで階段を駆けあがり、なんとか大高が入ったのと同じ車両に滑り込むことができた。
車内は空いていて、まばらに座っている人がいる程度だ。これなら見失うことはなさそうだ。
私は距離を置いて席に座った。
ともかくなんとか次のチャンスを見つけよう。
相手から目を離さずに、心を落ち着けようとしていると・・・
「あのさあ。」
「きゃっ。」
いきなり声をかけられて、私は飛び上がりそうになった。

その日、僕はポロニアンモールまで足を延ばして買い物をした後、ポートアイランド駅まで戻ってきていた。。
駅前の映画館の外では、いつもモニターに公開中の映画の予告編を流している。そこを通りかかったところで、聞き覚えのあるテーマ曲が聞こえてきて、僕は足をとめた。
ちょうど劇場版「不死鳥戦隊フェザーマン」の予告編が始まるところだった。
思わず足がそちらに向いてしまう。
新たな強敵。そして敵か味方か、謎の新キャラの登場。主人公たちに襲いかかるピンチ。
映画版とあって特撮も派手で豪華だ。前から気になっていた映画だが、こうして見るとやっぱりかっこいい。これはどうしても観に行きたい。
僕はワクワクしながら映像に見入った。
しかし映画料金は小学生には高すぎる。しかも小学生だけでは映画を観に行くこともできないので、誰か同伴者を探す必要がある。なかなか前途多難だ。
予告編が終わって他の映画のものに代わる。何本かの映画の予告を繰り返しやっているようだ。
少し待ってもう1回観ようか・・・と考えていると・・・
いきなり「ちょっといいかしら?」と声をかけられてドキリとした。
振り向くと見知らぬ女の子がいた。僕と同い年くらいか?
ショートヘアにオーバーオールのスカート、少し大人びた感じの整った顔立ち。生真面目そうな雰囲気だ。あだ名をつけるなら『委員長』って感じかな。
フェザーマンに見入っているところを見られて、(子供っぽいと思われたか?)と思うと少し恥ずかしくなった。
「携帯電話をかけさせてもらえない?お礼はするわ。」
その切り出し方はいささか唐突で強引だった。口調は切羽詰まった感じで、なんだか余裕の無い雰囲気だ。
何かに困っているのか、もしくは急用でもあるのかもしれない。こちらに有無を言わせない気迫は、まさに『委員長』という感じだ。
僕が、幾月さんに持たせてもらっている緊急連絡用の携帯電話をポケットから出すと、『委員長』はそれをひったくるように手に取って、慌ててどこかに電話をかけだした。
「お姉ちゃん。・・・あいつを見つけたの。お父さんが追っている強盗の一人。」
あっけにとられていたら、なんだかいきなりとんでもないセリフが飛び出した。
驚いて『委員長』を凝視する。彼女の方は、話しながらも駅前の広場を見つめている。
僕もそちらに目を向けると、黒っぽい服を着たサングラスにマスクの男が、立ったまま携帯電話で話をしていた。
あいつが強盗?
サングラスにマスクという姿は確かにあからさまに怪しいが、しかし最近は普段からマスクをかけている人も多く、それだけで危険人物とはいえない。
そうこうしているうちに、男は電話を終えて、駅に向けて歩き出した。それを追うように、『委員長』が電話で話しながら歩き出す。
僕は慌てて声をかけた。
「ちょっ、ちょっと・・僕の携帯電話」
『委員長』はそこでこちらに気が付いたようだ。
しかしすぐに駅に向かう男をの方を見る。気持ちは一刻も早く後を追いたいらしい。
気もそぞろで、こちらと話すゆとりは無さそうだ。
彼女は「また連絡する。」と言って電話を切ると、それを五百円玉と一緒に返してよこした。
そしてこちらの反応も見ず、一目散に改札に向かって走り去った。
僕は状況についていけず、ポカンと見送った。
もしかして、本当に強盗なのか?
あの様子、その表情に漂う緊張感。信じ難い話ではあるけれど・・・冗談とも思えない。
だとしたら、小学生の女の子が強盗犯を一人で追うなんて、そんな危険なことを見過ごすことができるのか?
そこまで考えたところで、僕は彼女の後を追って走り出していた。
男の姿はもう見えないが、『委員長』の後ろ姿は見える。
ホームにはモノレールが入ってきたようだ。
僕は乗り遅れまいとさらに速度を上げ、駅の構内に駆け込むとそのまま一段飛ばしで一気に階段を駆け上がり、ドアが閉まる寸前に車両に飛び込んだ。
さすがに膝が笑う。心臓が破裂しそうだ。
息をハアハアさせながら見回すと、『委員長』は男から距離を取って座っていた。
男に食い入るように視線を送っており、傍から見ると見張ってますと言わんばかりだ。
僕は『委員長』の前に立ったが、集中していてこちらに気づく様子すらない。
「あのさあ。」と声をかけると、彼女は「きゃっ」と小さな声をあげて振り向き、信じられないものでも見るようにこちらをまじまじ見た。それから「なんでついてきたの?」と呆れたように訊いてきた。
「あんな思わせぶりな態度取られてほっとけないだろ。なんだか、危ないことしてるみたいだし・・・。」
僕は非難するような口調で返した。
「そう、これは危険なことなの。だから帰りなさい。できれば警察にこのことを伝えて・・・。」
まるで年下の子に言い聞かせるように彼女が言う。
そして僕との話は終わったとでもいうように、視線をあの男に戻すと、真剣な顔で凝視する。
僕は子供扱いされたことに少しむっとして、「そんなに相手をにらみつけてたらすぐに気づかれるよ。」と言った。
「えっ?」
『委員長』は、僕の指摘に意表をつかれたようだ。こちらをぽかんと見上げてくる。
僕は誰かが網棚の上に放り出していった漫画雑誌を手に取ると、彼女の隣に座った。
今週号の「少年チャンプ」だった。
「こういうのを広げてさ。読んでるように見せかけながら、それとなく相手の様子を見るんだ。」
『委員長』は、感心したようにうなずく。
「そうね。確かにテレビでやってる刑事ドラマなんかでは、新聞を広げて張り込みしてるわね。」
「僕らが新聞なんか広げてると、違和感があってかえって目立つだろ。こういう漫画雑誌の方が自然に見えるし、子供だと思って侮ってもらえる。」
「なるほど・・・あなた、なかなかやるわね。」
彼女は感嘆の声をもらした。案外、素直な性格のようだ。
僕は少し点を取り返したようないい気分になった。
「それに子供は二人でいた方が、かえって怪しまれないよ。一人だと目立って、何してるんだ?って思われるからね。」
「確かに、その通りだわ。」
その後、僕らは二人で雑誌を広げて読むふりをしながら小声で話を続けた。
「あいつ・・・ほんとうに強盗なの?」
「ニュースで見てない?お年寄りばかり狙った連続強盗。その主犯と思われる容疑者の大高よ。」
そのニュースは見た覚えがある。
「この間、おじいさんに大けがさせた奴か。」
「あのお年寄り、今も意識が戻ってないの。」
『委員長』が眉をひそめて答える。
「ひどいことするなあ。」
僕も怒りを込めて言った。お年寄りをターゲットにした犯罪は多いが、中でも力の弱い人に対する暴力というのは本当に卑劣な行為だ。
「許せないよね。」
『委員長』がそう言い、僕らは二人で顔を見合わせてうなずく。
「ね、もう一回携帯電話を貸してくれない? あいつが下りたら場所を通報しないと。」
「うん」と答えて僕はポケットに手をつっこみ、そしてそのまま固まった。
・・・無い・・・
(あれ?・・・さっき受け取って、それから確かに・・・)
「どうしたの?」
『委員長』怪訝な顔をした。
「落としたらしい。」
「・・・」
『委員長』は無言で目を見開いた。
「たぶん、階段を駆け上がるときだ。」
僕は言い訳をするように言葉を続けた。
返された携帯電話をしっかりポケットに入れていなかったのかもしれない。
階段を駆け上がるとき、慌てていたので落としたことにも気づかなかったのだろう。
自分の大失敗に頭をかかえたくなった。
「そう、しょうがないわね。それじゃあ次の手を考えましょう。」
『委員長』は、携帯電話の件ついてそれ以上何も言わず、手を顎にあてて考え込んだ。
失敗を責める気は無いようだ。懐が広い上に肝っ玉が据わっている。冷静で、逆境にもくじけないタチらしい。
僕はすっかり感心して、彼女のあだ名を『委員長』から『生徒会長』に格上げした。 
 

 
後書き
今回、ダブル主人公ということで、主人公二人が交互に一人称で語るスタイルにしてみました。
実はこの話は、いろいろと制約が多くて、少々難航しました。
その一つの理由が、携帯電話の存在。尾行しながら通報できる、この便利な機械の存在は、この手の話にははっきり言って邪魔。早々に失くしてもらいました。
さて次回は、いよいよ二人が犯人と直接接触。バトルもあります。 
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