八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

　　　　　　　　　　　　　　　　第二百六十話　　炎を見ながら
　キャンプファイアーは燃えていた、僕はその燃え盛る炎を見ながら詩織さんと一緒に踊った。その中で。
　僕は詩織さんにさらに話した。
「井伊直弼さんみたいな人はね」
「政治家になったら」
「よくないかもね」
「芸術家である方がよかったのね」
「だってね」
　幕末のことを思うとだ。
「あれだけのことをしたからね」
「安政の大獄ね」
「幕府の慣習を破ってまでしてね」
　刑罰を評定所というその刑罰を定めるところより軽くするというそれをだ。
「独裁者そのものでね」
「沢山の人を殺して」
「処罰してきたから」
　死罪以外にも蟄居とかそうした刑罰を乱発していた、その為江戸城内でもこの人の評判は甚だ悪かった。
「そのことを考えたら」
「大老になるべきじゃなかったのね」
「そうだよ」
　心からそう思う。
「自分もああなったしね」
「桜田門外の変でね」
「正直自業自得だけれど」
　あれだけのことをやったからにはだ。
「正直ざま見ろだけれどね」
「あの人皆からそう思われてるわね」
「当時からみたいだね」
「つくづく人気のない人ね」
「傲慢ってイメージもあるしね」
　大老としてふんぞり返っていてだ。
「実際下の人にやたら怒っていたそうだし」
「お仕事で」
「うん、ちょっと働きが悪いとね」
　そう見るとだ。
「怒ったっていうから」
「嫌な上司でもあったのね」
「積極的に動いたら外国のスパイとか」
「そうも言ったの」
「そう、それでね」
　そのうえでだ。
「その時からね」
「嫌われていたのね」
「そう、それでね」
「殺されたその時も喜ばれて」
「そんな風だったから」
「本当に大老になるべきじゃなかったわね」
　詩織さんもこう言った。
「殺されてそれだと」
「殺されて喜ばれるなら」　
　もうそれならだ。
「こんなに嫌なことないわよね」
「そうだよね、死ぬにしても」
　人間絶対に死ぬ、けれどそれでもだ。
「それが喜ばれるとか」
「これ以上はない位嫌だから」
「そんなのだとね」
　それだとだ。
「本当にね」
「そうした立場になりたくないわね」
「どうせならね」
　僕もこう思う。
「死んだ時は悲しまれる」
「そうじゃないとね」
「やっぱり嫌だよ」
　本当にこう思う。
「そうでもないとね」
「そうした人生でないとね」
「まだね」
「まだ？」
「芹沢鴨さんの方がね」　
　実は人望があったこの人の方がだ。
「死んで残念だったとか言われてたから」
「そうみたいね、あの人は」
「まだね」
　僕は踊りながら一緒に踊っている詩織さんに話した。
「人望あったから」
「酒乱でもね」
「まあ新選組そうした人多かったらしいし」
　酒乱の人もだ。