おっちょこちょいのかよちゃん
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36 三方向から襲撃せよ
前書き
《前回》
大野が心配で外で飛び出した冬田は飛行機に乗る二人組の男に掴まり、尋問を受けてしまう。だが、濃藤兄妹に助けられ、かよ子や大野、杉山、三河口達とも合流する。事情を聞いたかよ子達は飛行機に乗る二人組の男を迎え撃つ作戦を開始した!!
ブー太郎は水の石の能力を行使した。水の上に立って移動する。
「富田太郎」
己をフルネームで呼ぶ声がした。森の石松だった。
「石松!?」
「お主もこの大雨は尋常でないと思ったか。某もだ」
「ああ、これはもしかしてオリガとか丸岡とかみたいな奴の仕業かブー?」
「いかにも」
その時、雨の中、飛行機の飛ぶ音がした。
「なんでこんな大雨で飛行機が飛んでいるんだブー!?」
「うむ、あれが最も怪しい。行くぞ!」
ブー太郎と石松は飛行機へと向かった。
まる子の家は幸い高地の方だった為、まる子はこの大変な状況でも普通に爆睡していた。他の「次郎長」のメンバーが必死で出動しているとも知らずに。
徳林奏子の住む地区は何とか浸水を免れてはいたが、奏子はクラスメイトの男子・三河口が無事か心配だった。遠くから避難勧告も聞こえているので彼が無事に避難できた事を今は祈るしかなかった。
(三河口君・・・)
奏子は眠れずに窓を見た。未だに雨は強く降っている。さらには飛行機の音も聞こえた。
(三河口君が無事でいられたらな・・・)
飛行機に乗る二人組の男はすみ子による硬直攻撃の効き目がやっと切れた所で、体を動かせるようになっていた。
「やっと硬直が解けたぜ」
「くそ、だが、あいつらも何か知っているかもしれんぞ」
「何としても奴等を探すか」
「いや、その必要はない。近づいてきている。俺にはそう感じるんだ。天は仕事の成果をくれたのだ!」
「仕事の成果?」
「ああ、今そのアイテムを持つ者が近くにいるんだ。天よ、我に仕事を・・・」
その時、雷が急に落ちた。ただし、落雷ではない。同時に飛行機がその場で勝手に静止し、動かなくなった。
「うわああ、何だ!?」
「よう、お邪魔するぜ」
二人は振り向いた。少年がニ名、大人の女性が一名入ってきていた。
「お前らは何だ!?」
「この清水に住んでる最強コンビだ!」
「貴方達こそ何者なの?」
「俺は奥平純三。この世界を変える為に動く誇り高き日本赤軍の一人だ!」
「日本赤軍!?」
「そして我が名はバーシム。日本赤軍の一人として二年前に死んだが、重信房子総長により、本名を捨て、この世界に戻ってきた」
「でも日本赤軍はアラブを拠点に動いているはず。なぜわざわざ戦争放棄した日本を襲撃するの?」
「その目的は大日本帝国の再建だ。そんな御託はともかく、お前は護符を持っているな!」
さりは見抜かれてぎょっとした。
「ちょうど良い所に来てくれたものだ。一つ要のものが手に入ったな。天よ、我に仕事を与えてくれた事を感謝する!」
「さあ、お前ら纏めて死んでもらうぞ!」
奥平は手榴弾を出した。
「させるか!」
大野が草の石の能力を行使する。蔓が伸び、奥平を締め付けた。
「うお!」
「なら俺がやる!天よ、我に仕事を与えよ!」
バーシムがそう唱えると、皆の体が動かなくなった。
「く、くそ、これでは動けねえ・・・」
「突撃が裏目に出たな」
バーシムはさりに近づこうとする。しかし、その時、バーシムは跳ね返された。
「な、何だ!?」
「護符の、力ね・・・」
さりは自分と大野、杉山を守ろうという気持ちを持っていた為に護符の力が働き。バーシムは近づく事ができなかったのである。
「この野郎、だから手に入れるのは難しいのか!だが、目標の一つはそこにある!何が何でも手に入れる!天よ、我に仕事を与えよ!!」
戦艦に残った者達は遠距離攻撃の準備をした。
「さりちゃんが出した物が戦艦で良かったよ」
三河口はさりに遠くから感謝した。
「でもこれ砲撃できんのか?」
北勢田が聞いた。
「ああ、よく見たら砲弾がセット済だし、替えの弾丸もここにある」
「それじゃ、健ちゃんと濃藤君、北勢田君、セットしよう」
「はい」
利治の命令に三人はセットした。
「あ、あのお・・・」
「どうしたの?」
冬田の呼びかけにかよ子の母が答えた。
「大野君は無事に、戻って来てくれるんでしょうかあ?」
「大丈夫よ。大野君も前に強敵と戦って打ち勝った事があるるわ。それに大野君と杉山君のコンビは最強だと思うわ」
「で、でも、私、大野君に戻ってきて欲しいんです。好き、だから・・・」
「そうなのね。冬田さんは大野君が好きなのね」
「は、はい・・・」
「実はね、ウチの子も杉山君が好きなのよ」
「そ、そうなんですかあ・・・。でも、一回大野君には好きだって言ったんですが、振られてしまってえ・・・。でも、それでもそんな大野君がますます好きになってるんです」
「そうね、きっと分かってくれるわ」
「ありがとうございますう」
その話をしているうちに三河口達は作業を進めていた。
「濃藤、翼を狙え!胴体を狙うと杉山君達も巻き添えになる」
「OK!」
濃藤は発砲した。
バーシムの呪文のような叫びでさりは持っていた護符が念力のようにバーシムの方へ動いている事に気づいた。
(お母さんの護符が・・・!!)
大野も杉山も動けない。絶望である。その時、爆発音がして、飛行機がぐらぐら揺れた。
「うわあああ!何だ!?」
皆は叫んだ。窓ガラス越しから煙が見える。奥平とバーシムは見ると右の翼が燃えていた。飛行機のバランスも崩れ落ちる。
「くそっ、墜落しちまう!」
バーシムはこの爆破で呪文の力が途切れてしまったため、さりの持つ護符を奪う事ができず、杉山達は再び動けるようになった。
「な、何があったんだ!?まさかまた別の敵か!?」
杉山は見回そうとしたが、機体が揺れているので上手く動けない。
「違うわ。誰かが戦艦から砲撃したのよ」
「あの戦艦、それもできるのか!すげえ!!」
かよ子達は飛行機が戦艦からの砲撃によってバランスを崩した所を見た。
「今よ、突撃するわよ!」
「うん!」
かよ子、すみ子、杉山の姉は飛行機へと近づいた。
「よし、北勢田、反対の翼だ!」
「おう!」
北勢田も発砲した。見事左の翼に命中した。
「うわああ!!」
「くそ、迎え撃ってやる!」
奥平がライフル反対側の出入口から出ようとする。しかし、扉から水が吹き出た。
「な、何だ!?」
水が止んで改めて扉口を確認すると、球体のような物が浮かんでいた。女子が三人いる。
「反対の翼に当たった・・・!」
すみ子も戦艦からの砲撃に勿論気づいていた。かよ子は杖の説明書となる本の文章の一部を思い出した。
【水など液体に杖を向けると水を操る能力が得られる】
「よし、今だ!」
かよ子は雨水に杖を向け、水の操る能力を手にした。そして飛行機の扉に向けて放水する。すみ子が作った球体のバリアに穴を開けたが、球体が壊れる事はなかった。内側からの攻撃は例外なのであろう。
かよ子、すみ子、そして杉山の姉は飛行機に乗り込んだ。そして扉の前に立つ相手は怖じ気づくどころかむしろ喜んでいた。
「お前は・・・。来たか!兄貴、俺達の獲物がもう一つ来たぞ!」
「獲物・・・?もう一つ・・・?」
かよ子は冬田が大野に泣きついて言った言葉を思い出した。冬田は先程までこの飛行機内で尋問を受けていた。それも護符とか杖とか知っているかと。
「もしかして、日本を戦争の国にしようとしてる人だね!」
「ええ!?」
すみ子も杉山の姉も驚いた。また別の男が現れた。
「ここに杉山君、大野君、お姉ちゃんもいるんでしょ!?」
「ほう、来たか、杖を持つ者!我が名はバーシム。異世界から舞い戻ってきた!!さあ、その杖を渡してもらおうか」
「山田あ!?そこにいるのか!?」
聞き覚えのある声がした。
「す、杉山君!?」
「絶対に渡すなあ!」
奥平がライフルをかよ子に向けた。そして発砲する。
「さ、させないわ・・・!」
すみ子が己の銃の引き金を引いた。目の前に壁紙が現れ、ライフルの弾丸を跳ね返した。
「ならば、俺の能力だ。天よ、我に仕事を与えよ!」
かよ子は杖が勝手に動き、バーシムの所へ持っていかれるのを感じた。
「つ、杖が・・・」
「弟よ、これで杖も護符も一気に手に入るぞ!ふはははは!!」
バーシムも奥平も喜びに溢れた。その時、窓ガラスに強力な水鉄砲がかかった。水圧で窓ガラスが割れる。同時にバーシムの能力も途切れた。杖と護符が途中で落ちる。
「な、何だ!?」
かよ子は今度こそ取られまいと杖を拾った。
「遅くなっちまってわりいな!」
現れたのは隣町の学校の男子、山口、川村、ヤス太郎、そしてブー太郎と石松だった。
後書き
次回は・・・
「飛行機内での決戦」
多くの者達が奥平とバーシムの乗る飛行機で集合し、戦いが始まる。だが、三河口達が乗る戦艦の砲撃によってボロボロの飛行機は墜落へと進んでおり・・・。
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