おぢばにおかえり
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第五十七話 卒業式その二十四
「困るのよね」
「困るって?」
「気付かないことがよ」
「気付かないかしら」
「お母さんは気付いてるわよ」
「お父さんもな」
二人で私に言ってきました。
「ちゃんとわかっているぞ」
「本当にね」
「何がなのよ。ただあの子春も神戸に来るそうだから」
私はお父さんとお母さんが何を言っているのか全くわからないままこのこともお話しました。どうにもというお顔で。
「教会に来るかも知れないわ」
「そうか、それじゃあな」
「夏みたいに楽しくお話出来るわね」
「お茶出さないとな」
「あとお菓子もね」
「あの子そういうのは気を使わないでって言うから」
図々しいかと思ったらそうしたところは謙虚です。
「別にね」
「そういう問題じゃないからな」
「お客さんだからよ」
「そこはちゃんとしないとな」
「お茶とお菓子はね」
「そうなのね」
二人のお話を聞いて言いました。
「阿波野君はお客さんなのね」
「違うわ、信者さんよ」
お母さんは私に笑って答えました。
「おみちのね」
「信者さんなのね」
「そうよ、まだようぼくじゃないけれど」
それでもというのです。
「あの子はそうした子よ」
「信者さんで」
「多分これからおみちをしっかり歩いていく子ね」
「そうかしら」
「確か教会長さんにもなりたいって言ってるのね」
「そうなの、お家は普通のサラリーマンらしいけれど」
「それは見所があるわね」
「あるかしら」
「ええ、かなりね」
何かお母さんの言葉に力が宿っていました、そのうえでの言葉でした。
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