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戦国異伝供書

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第七十七話 諱その二

 新九郎は諱のことを考えていった、だがここで。
 ふとだ、織田家からだった、新九郎は思わぬ話を聞いた。それで新九郎は使者として来た使者に対して問うた。
「それはか」
「はい」
 使者は新九郎に答えた。
「殿からです」
「当家にか」
「浅井様にです」
 新九郎自身にというのだ。
「是非にと言われています」
「ご自身の妹君をか」
「市様を」
「殿、市様といえば」 
 どうかとだ、彼は話した。
「尾張だけでなくこの辺りにまで、です」
「噂になる程の美しさじゃな」
「そこまでの方で聡明であられ」
 このことも有名になってというのだ。
「そしてです」
「ご気質もですな」
「素晴らしい方とのことです」
「ならばじゃな」
「はい、このお話です」
「是非じゃな」
「受けるべきです」
 こう言うのだった。
「そしてです」
「さらにじゃな」
「はい」 
 まさにというのだ。
「織田家ともです」
「盟約を結べるな」
「はい、殿はです」
 まさにとだ、使者は話した。
「浅井家とです」
「盟約をか」
「結んでです」  
 それでというのだ。
「共に栄えていきたいです」
「そうか、ではな」
「それではですな」
「お願いします」
「ではな」
「はい、それでは」
「その申し出有り難く思う」
 こう言うのだった。
「それでは」
「有り難きお言葉です」
「うむ、しかし」
 ここでだ、新九郎は織田家の使者に話した。
「まさかな」
「まさかとは」
「いや。織田殿がじゃ」
 信長、彼がというのだ。
「ご自身からお話を持って来て下さるとは」
「そのことがですか」
「まさかな」
 こう言うのだった。
「思いもじゃ」
「左様ですか」
「まことに当家でよいのか」
 使者に問うた。
「それで」
「はい、殿は浅井殿ならとです」
「そう言われてか」
「はい」
 それでというのだ。
「それがしをこちらに送られました」
「そうなのか」
「浅井殿をです」
 まさにというのだ。
「市様の婿にとされて」
「そしてか」
「共に天下を目指そうと」
「天下をか」
「そう言われています」
「そこまでとは。しかし」
 新九郎は使者に言った。 
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