剣を舞う男の娘
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4話
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ヘルトサイド
この世界の貴族は成人になってから自分で宣言しないと家督を放棄できない。ましてや、俺は既に死んでると思ってる身だ。だけど、旧姓がバウマイスターだ。それじゃあ、一応、貴族の身分になっちまう。
残念な話だ。
馬車で移動してる最中、俺はルビアやレオノーラ、シャオにも招待されたわけを聞く。
「じゃあ、ルビアたちも貴族だから呼ばれたというわけか?」
「そうなるわね。それに私たちの共通点が寄親がブライヒレーダー辺境伯なのものあるのよ」
「なるほどな」
「それと噂に聞いたのだけど、私たちやイーナちゃんたちも含めて、冒険者予備校で成績が良かったからお声を掛けようかなって噂らしいよ」
「でも、それは噂でしょう。とにかく、粗相をかけないようにしましょう」
となれば、なんの思惑がねぇと思うけど・・・。
俺は思いながら、外の景色を眺めていた。
『園遊会』の会場となってるブライヒレーダー辺境伯。流石、領主の屋敷の庭、その広さは数百人の招待客がノンビリと食事や酒や歓談を行えるほどであった。なお、この『園遊会』は年に一度、ブライヒレーダー辺境伯家が、内外の貴族とその家族、陪臣とその家族、取り引きのある商人、各種ギルドや教会関係者などを招待しているらしい。
となれば、貴族籍の予備校の生徒は商隊されてるだろうな・・・と言ってる先にヴェル兄たちも招待されてたの知ってるから早速、出会い、立ち話をしながら、食事に敢行した。
食事の大半は肉だけど――。
それよりも気になったことがあった。
「ルビア・・・気が付いた?」
「ええ、屋敷の方に魔力反応があったよね」
「ああ、しかも、見方からして、魔法使いだ」
俺も気が付いてるなら、ルビアも気が付いてた。おそらく、魔力を持つものと触れあっていくうちに直感的に分かったものだろう。
ルビアと話してる最中、俺は
「まあ、3年もすれば、俺は貴族籍じゃないから。あまり、気にすることも――」
「いや、そうとも言えないよ。ヘルト・フォン・ベンノ・バウマイスターくん」
俺に話しかけてきた、白髪でオールバックしてる好青年。
「ああ今は、ヘルト・シュバルツ・フォン・シェルマイスくんだったね」
しかも、今の名前と昔の名前を言ったな。
一応、俺はルビアにボソボソと
「なあ、ルビア。この人が・・・」(-。-) ボソッ
「ちょっ!? ヘルト!? この御方は」(゜o゜;
ルビアが驚き、俺を注意しようとしたところで、
「ああ、申し遅れました。私の名はアマデウス・フライターク・フォン・ブライヒレーダーと申します」
俺はその名前を聞いて
(この人がブライヒレーダー辺境伯・・・)
気が付き、
「これは失礼しました。平にご容赦を」
頭を軽く下げて謝罪したが、
「ヘルトくんは、今までこの手の席に顔を出した事がないと聞いています。しかも、キミはバウマイスター家の跡取りでもない。私の顔を知らなくて当然ですよ」
自分の非を認めた。
「しかし、キミいやキミたち双子が冒険者予備校に入学していて助かりました」
「ああ、俺の実家はなにかと不便ですからね」
「はい。しかも、ご兄弟揃って魔法使いとは、お会いできて光栄です」
「恐縮です」
俺が軽く会釈をする中、ルビアたちは
(((ヘルト凄い!!)))
「挨拶も終わりましたので、これが本題です。少々、お時間を頂けませんでしょうか?」
この質問に対し、俺は些か、疑問が生まれたが
「それは構いませんが、俺に用事でも」
「いえ、些細な用事です」
と言われて、俺は・・・いや、俺とヴェル兄はブライヒレーダー辺境伯に誘われて屋敷へと向かった。
「お手間をかけてすまないね」
「いえ」
「・・・・・・」
ヴェル兄は気が付いていねぇようだが・・・俺にはビンビンに感じとれている。
(この屋敷の中に魔法使いがいるのが・・・)
俺は少々警戒しながら屋敷内を歩いていく。
彼に案内されたのは彼の私室。中には俺とヴェル兄と彼だけ。隣の部屋に誰かがいる。しかも、魔法使いだ。
最初にメイドが人数分の紅茶を煎れていたが、彼女は一礼してからすぐに部屋を退室してしまう。
「それで、用件とは?」
ソワソワとしてるヴェル兄がブライヒレーダー辺境伯にわけを話すも、そこをぶった切るように俺が割り込む。
「すみませんが、隣の部屋にいる人を呼んできてくれませんか」
俺が言ったことにブライヒレーダー辺境伯はおっといった感じで目を開かせ、ヴェル兄は隣に誰かいるのかに動揺していた。
俺が言ったことにブライヒレーダー辺境伯は
「どうやら、ヘルトくんは気が付いてるようだね。もう良いですよ。どうぞ」
そう言った後、ブライヒレーダー辺境伯が誰かを呼ぶと、そこに一人の男性が入ってくる。年齢は、40歳代後半くらい。白髪混じりの黒髪を角刈りにしている、鋭い眼光の歴戦の冒険者といった感じだろうか? しかも、魔法使いのローブまで羽織っているな。――ということは魔法使いであることは確かだ。そういや、帝国にいた頃、同じような魔法使いがいたな。
「彼はうちの、筆頭お抱え魔法使いです」
ブライヒレーダー辺境伯の紹介をして、
「ブランターク・リングスタットだ。見ての通りに、以前は冒険者をしていてな」
「更に付け加えると、前にうちの筆頭お抱え魔法使いであったアルフレッド・レインフォードと筆頭剣士であったアーヴリル・シェルマイスの師匠でもあった人です」
「「えっ?」」
いきなり、師匠の名前が出て、俺とヴェル兄は驚きを隠せない。ブランタークさんは俺とヴェル兄を交互に視て、
「ヴェンデリンの方は魔法使いとしての気配に鈍感で、ヘルトの方は俺の気配に気が付いていた」
ここは、正直に話した方が良いな。
「俺は5歳の頃、未開地の海岸で波に攫われて、そのまま、極北の土地に流れ着いたんですよ」
「話の冒頭だけでも災難としか言えないぞ」
「そうですね。極北の土地にある国に保護されて、5年ほどはその土地に暮らして、10歳の頃に故郷に帰ろうと思って、南へと進んでいったんです」
俺の説明の途中でブライヒレーダー辺境伯が質問をする。
「極北の土地と言いますとアーカート神聖帝国のことでしょうか?」
「はい。そうなりますね。でも、自治領って言ってましたが・・・」
「アーカート神聖帝国より北に自治領ですか」
「話を戻すと、俺は南に進んでいく最中、いろんな人と出会ったので、その時に魔法使いとかも知り合っています。なので、魔法使いの気配に気がつけたのはその所為かと・・・」
「なるほどな・・・災難にしては密度の濃い冒険してるな」
「そうですね。それで、お二方が聞きたいのは師匠たちのことですか?」
俺の聞き返しにブライヒレーダー辺境伯とブランタークさんは諭されて頷いた。
その後、俺はアーヴリル・シェルマイスのことを、ヴェル兄はアルフレッド・レインフォードのことを話した。
ヴェル兄はブランタークさんに遠征の時の補給物資を返却し、報酬として、俺たち双子に500万セント。日本円で言うところの5億円に相当する。
しかも、俺たちは師匠の遺産を受け継ぐ権利まで渡された。いや、これは俗に言う、押しつけだな。
その押しつけがギルド預託金で師匠は1000万セント。日本円で言うところの10億円。さらに、師匠の屋敷までがあった。ヴェル兄にもあったらしく、俺たち合わせて、大金持ちになってしまった。
しかも、実際のところ、外装も内装もピッカピカという始末。魔法とはおっかないなという心情だった。
あと、この屋敷にルビアたちを住まわせるか。一緒にパーティーで行動するんだし。
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後書き
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