戦国異伝供書
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第七十五話 逐一その七
「考えたことがなかったが」
「それがどうもです」
「かなりだとか」
「細面で色が白く」
そうしてというのだ。
「目鼻立ちも整っておられ」
「ご一門も美形揃いだとか」
「その様です」
「中でも」
ここで言われる者はというと。
「妹君のお一人がとりわけだとか」
「市殿と言われるそうですが」
「あの方が特にとのことです」
「その織田家でも随一の美形だとか」
「大層美しい方だとか」
「そうなのか、武田家もかなりと聞いているが」
この家も美形が多いと言われているのだ。
「織田家もか」
「はい、その中でもです」
「その市殿です」
「市殿は天下一の美女とも言われています」
「とかく素晴らしい方だとか」
「そのお顔立ちは」
「ふむ、では一度どういった方かお会いしたいな」
新九郎はここでこうしたことを言った。
「織田弾正殿にな」
「市殿ではなく」
「あの方ですか」
「弾正殿ですか」
「あの方ですか」
「うむ、確かに市殿も気になるが」
新九郎は素直に述べた。
「わしも男であるからな」
「しかしですか」
「弾正殿がですか」
「特にですか」
「そうじゃ、ただ傑物だけでなくお顔立ちもよいなら」
それならというのだ。
「尚更じゃ」
「お会いしたくなった」
「どういった方か」
「そのことを確かめたくなったのですな」
「そうじゃ」
家臣達に強い声で述べた。
「そう思った、しかしな」
「お会いすることはですな」
「後ですな」
「今ではありませんな」
「それは」
「六角家と決着をつけてな」
そしてというのだ。
「そのうえでな」
「さらにですな」
「お家を安定させて」
「そのうえで、ですな」
「弾正殿とお会いしたいですか」
「そう思った、まあ当家は織田家と結ぶにしても」
将来はそう考えているがというのだ。
「しかしな」
「それは、ですな」
「あくまで後のこと」
「弾正殿とお会いすることも」
「そのこともですな」
「後じゃ、まずは六角家を退ける為に打てる手を全て打とう」
新九郎はこう言って戦の場となる野良田の方も自ら行ってそうして見ることもした。そのうえでだった。
兵を集める動きを見せた、宗滴はその動きを見て言った。
「いよいよじゃ」
「戦ですか」
「浅井家と六角家の戦がはじまりますか」
「今より」
「そうなる」
まさにというのだ。
「今後な、だが当家はな」
「今はですな」
「動きませぬな」
「出陣の用意はしても」
「そこまでは至りませぬな」
「そうじゃ、浅井家が勝つからな」
そうなるからだというのだ。
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