| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

おっちょこちょいのかよちゃん

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

33 夜中の大豪雨

 
前書き
《前回》
 雨の日の日曜日、かよ子はさりと三河口、そしてまる子にたまえと共に人生ゲームをして遊ぶ。そして二人の男が日本へと着々と接近するのであった!! 

 
 夕方になると、雨は弱まるどころかむしろ強まるばかりであった。杉山は自分の家の窓からもその様子を見る。
(雨、強いな・・・)
「酷いわね、この雨、まるで洪水になりそうだわ」
 杉山の姉が呟く。
「姉ちゃん、この家大丈夫なのかな?」
「分からないわ。ここも高台とは言えないからね」
 雨は時が経つにつれ、激しさを増してゆく。

 山田家でもかよ子は降り続く雨を見ていた。
「酷いわね」
 母もその様子を見る。
「うん。洪水になると学校休みになっちゃうんだよね」
「そうね。行けるような状態じゃないからね」
(そうなると杉山君に会えないな・・・)
 かよ子は意気消沈した。
「そういえば、ここの地盤はそんなに高い方じゃないよな」
「そうね、海にも近いからね」
 かよ子はそれを聞くともっとぞっとした。
(わ、私の家、どうなっちゃうんだろう・・・?とにかくこの杖だけは手放さないようにしよう・・・)

 隣の家の人間でも大雨の様子を見る。三河口はこの雨が普通でない異常な感じがした。
(この感じ・・・。異世界の人間が来た時と同じ感触だ・・・!!)
 以前爆破された道路を見た時も同じような気持ちになった(その時は異世界からの侵略者やその人物達と手を組んだ組織の事は知らなかったが)。
「おばさん、あの護符、何か反応していませんか?」
 三河口は叔母に聞く。
「護符?ああ、見てみるよ」
 奈美子は護符を確認しに行った。
「健ちゃん、護符って?」
「信じられないとは思いますが、叔母さんが終戦後、異世界の住人から貰ったという護符ですよ」
(護符・・・。異世界・・・!!)
 さりはかよ子を送る時にも異世界の杖を聞いてはいたが、自分の母親も異世界の道具を所持しているとは思いもしなかった。
(お母さんもかよちゃんのお母さんと一緒に異世界の道具を貰っていたんだね・・・!!)
 その時、叔母が戻って来た。護符を持っている。
「やっぱり護符が反応してるよ」
 そして、外から避難勧告が流れる。
『低地の皆さん、大変です。川が溢れました。これからますます浸水する可能性があります。高台の公民館に避難してください』

 すみ子の住む地域でも警報が発令されていた。
(この胸騒ぎ・・・。間違いない。異世界の人間だ!この大雨は絶対普通のものじゃない!!)
「すみ子、警報出たぞ。避難所に行こう」
「う、うん・・・」
 兄に呼ばれてすみ子は避難所へと向かった。
「お兄ちゃん・・・」
「ん?」
「私、なんか胸騒ぎがする・・・!!」
「やっぱり変な気がすると思ったのか。俺もだよ」
 濃藤は以前、妹が異世界からの敵と奮闘した事を三河口と北勢田から聞いていた。妹は今、その予感がしていたのではないかと彼は思っていた。

 かよ子達は避難勧告発令の為、両親と共に家を出た。
「それにしても今までの雨とは比べ物にならないくらい酷いな」
「かよ子、あの杖は持ってる?」
「う、うん!」
 さすがにおっちょこちょいのかよ子でもその杖だけは忘れる事はなかった。既に雨水は増えており、かよ子の膝の上にまで使っている。上手く歩けず、泳いだ方が進めると皮肉を言いたいくらいだ。その時、戦艦大和のようなものが現れた。しかし、戦艦にしては水線長が短く、幅も道路を通れる程度である。
「あ、皆、これに乗って!!」
 デッキに見えたのは隣のおばさんだった。
「あ、奈美子さん!」
 皆は戦艦についていた梯子でデッキにのぼり、ハッチの中に入った。そこには奈美子の主人、その娘、そして甥もいた。
「あ、かよちゃん!」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
 内装が戦艦の中みたいで驚くと共に、三河口とさりに会えて少し嬉しかった。
「すごいね」
「叔母さんが護符の力で出した戦艦だよ」
「私は外国の客船みたいなのがよかったんだけどね」
「そんな贅沢言ってる場合じゃないよ」
 奈美子が窘めた。
「はあい・・・」
 かよ子は三河口が険しい表情をしているのに気づいた。
「お兄ちゃん」
「え?」
「どうしたの?」
「ああ、この豪雨に変な胸騒ぎを感じるんだ。異世界からの敵が来たような感触をね」
「え!?じゃ、じゃあ、やっぱりこれは異世界の敵の仕業なの!?」
「そうかもしれないね」
 その時、奈美子が呼び掛ける。
「雨が強くなってきたよ!さり、健ちゃん、避難に遅れている人を助け出すよ!!」
「はい!」
「わ、私も行く!!」
 かよ子も動き出す。皆、動き始めた。

 冬田は雨が家の屋根を打つ音で眠れなかった。
(雨が酷いわあ・・・)
 遠くから避難勧告が発令される声が聞こえたが、幸い冬田の住んでいる所は高台の方の為、道路の浸水は免れている。
(大野くうん、私怖いわあ・・・)
 冬田は好きな男子の事を考える。大野の家は浸水の被害に遭っているのではないかと。
(やっぱり大野君の事がとっても心配だわあ・・・!!)
 その時、冬田は以前フローレンスという異世界の女性から貰った羽根を思い出す。今ならそれで大野の様子を確認できるのではと考えた。冬田はベッドから出て、机の引き出しにしまっていた羽根を取り出した。そして窓から羽根に乗って出ていった。

 二人の男は日本の上空に辿り着いた。そして大雨の様を見て喜ぶ。
「弟よ、見たまえ。雨が強くなっているぞ!天が私に仕事をやりやすくしているぞ!」
「よかったな、兄貴!」
 悪天候にも関わらず三保の飛行場に普通に着陸した。
「はて、奴等を探さないとな」
「こういう時こそ動いているはずだからなあ」

 旧約聖書のような洪水の中、かよ子達は床上浸水で二階へ避難する人達の救出に乗り出し、戦艦で公民館へと送っていた。その時、かよ子は聞き覚えのある声を耳にした。
「助けて〜!!」
「あ、たまちゃん!!」
 かよ子はクラスメイトの穂波たまえが両親と共に屋根に登っているのが見えた。
「かよちゃん、確か君はフローレンスから不思議な羽根を貰っていなかったか?」
「え?あ・・・!!」
 かよ子は三河口の言葉で寝た子を起こされた気分になった。杖を持ってきたのにあの羽根を忘れてしまった。この一大事におっちょこちょいをやってしまった。
(どうか、あの子を・・・!!)
 さりはそう考えると、急に奈美子の護符が震えだした。護符が光ると、急にたまえの家族が瞬間移動したかのように戦艦のデッキに移動した。
「かよちゃん!」
「たまちゃん、よかった~、無事で・・・!」
「どうもありがとうございます」
 たまえの両親も礼をした。しかし、かよ子はなぜたまえ達が瞬間移動できたのか気になった。自身は杖を使用していない。
「い、今のはおばさんが・・・!?」
 かよ子はおばさんが能力を行使したのかと思った。
「え?何もやっとらんよ」
「じゃあ、お兄ちゃん?」
「いや、俺にはそんな能力はないし、護符の力は使えない」
 三河口も否定した。
「さりちゃん」
 三河口は従姉に質問する。
「もしかして、この子達を助けたいと思いませんでしたか?」
「う、うん、そうなんだ」
「もしかしたら、さりちゃんの能力(ちから)で護符が動いたのかもしれませんね」
「そ、そうなんだ、凄いよ!!」
「そうかな・・・?」
「兎に角、皆を公民館に運ぶよ!」
「はい!」
 一行は救出した人々を公民館に連れて行き、そこで降ろした。そしてまだ救助待ちの人々を助けに浸水しゆく低地へと戦艦を動かした。その一方で三河口は胸騒ぎがなぜか収まらなかった。次は別の地区を廻る。その時、かよ子は好きな男子の姿が見えた。
「す、杉山君・・・!!」 
 

 
後書き
次回は・・・
「大雨に動き出す者」
 かよ子は杉山の家族を救出し、さらには長山の家族も発見する。冬田は大野の安否を心配し、そしてすみ子は胸騒ぎが収まらずに飛び出した所、ある人物と出会う・・・。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧