| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七十四話 元服しその七

「当家はこれからはな」
「織田家とですか」
「手を結んで、ですか」
「生きるべきだというのですな」
「この度の浅井家のことだけではない」
 こう言うのだった。
「むしろな」
「これからですな」
「当家のこれからのことを考え」
「そして天下を見られて」
「そのうえでのお考えですな」
「織田弾正殿は天下の傑物じゃ」
 信長、彼はというのだ。
「必ず雄飛されてな」
「天下人になられる」
「そうなられますな」
「やはり」
「だからですか」
「我等はな」
 まさにというのだ。
「これからは織田家と結んでな」
「そしてですな」
「そのうえで生きるべきですな」
「わしはそう思う、だからな」
 それでというのだ。
「当家はこれからはな」
「まさにですな」
「織田家と結ぶ様にですか」
「動いておきますか」
「そうすべきじゃ」
 宗滴の考えはそこにあった。
「今は静観してもな」
「殿は出陣の備えを言っておられますが」
「それはされも」
「出陣はない」
「だからですか」
「静観となる、しかし新九郎殿は出来物」
 彼のことも言うのだった。
「出来るなら当家はあの方と誼を深くすべきじゃ」
「浅井家の中で」
「そうされるべきですか」
「これからは」
「うむ、先代殿ともこのまま誼を通じたいが」
 久政だけでなくというのだ。
「さらにじゃ」
「新九郎殿ともですか」
「この度浅井家の主となられた」
「あの方ともですか」
「諱は流石に無理としても」
 それでもというのだ。
「ご正室となる姫君を送ってでもな」
「誼を深くして」
「そうしてですか」
「共に織田家の中で生きるべきですか」
「そう言われますか」
「そうじゃ、後は殿のご決断次第じゃが」
 それでもとだ、宗滴は暗い顔で述べた。
「しかしな」
「それは、ですか」
「殿のご決断は」
「それは」
「残念ながらな」
 どうしてもというのだ。
「そうしたご決断はな」
「されませぬか」
「どうしても」
「あの方は」
「殿はどうも外のことはわしに任せてばかりでな」
 そしてというのだ。
「内の政と和歌や古典、蹴鞠等にお心が向かわれ」
「そうしてですな」
「外のことは然程動かれず」
「そうしてですな」
「そしてな」
 それでというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧