戦国異伝供書
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第七十三話 元服前その十
「しかしじゃ」
「それでもですか」
「織田家の軍勢は違う」
「そう言われますか」
「弱兵と言うがそれなりに鍛錬を受けていてじゃ」
織田家の兵達はというのだ。
「戦の場にも出ていて武具もじゃ」
「そちらもですか」
「しっかりしている」
「だからですか」
「一向宗の様にはいきませぬか」
「そうじゃ、長槍に鉄砲を持っていてじゃ」
それも多くというのだ。
「優れた将帥達が率いておる」
「それならばですか」
「一向宗とは質が違い」
「当家の何杯もの兵となりますと」
「勝てませぬか」
「到底な」
それは無理だというのだ。
「だから若し織田家と戦えば」
「滅びるのは当家である」
「だから避けねばならぬ」
「そう言われますか」
「そうじゃ、間違ってもな」
それこそという言葉だった。
「当家は争ってはならぬ」
「家の格は下でも」
「織田家はやがてそれだけの家になる」
「だからですか」
「手を結ぶべきですか」
「従ってもじゃ」
格下の織田家にというのだ。
「生きねばならぬ」
「我等は斯波家の家臣出身です」
「織田家も同じです」
「ですが越前の神主の出の織田家と比べると」
「当家は格上ですが」
「それでもですか」
「そうじゃ、そもそも今はどういう世じゃ」
今の世についてもだ、宗滴は話した。
「そもそも」
「戦国の世です」
「下剋上の世です」
「その格下の相手に覆される世です」
「今は」
「そうであるな、かく言う当家もじゃ」
朝倉家もというのだ。
「越前を斯波家から奪っておるな」
「左様ですな」
「まさにその下剋上で」
「守護の斯波家から越前を奪い」
「国を動かしていますな」
「左様、格下格上だからと言うとな」
そうすればというのだ。
「当家ともなる」
「だからですな」
「ここは余計にですな」
「織田家が格下であることは意識せず」
「そのうえで」
「織田家が大きくなってからでもよい」
遅いがその時でもというのだ。
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