夢幻水滸伝
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第百二十一話 台風その一
第百二十一話 台風
芥川は蓬莱の天守、日本の城を思わせる造りの建物の中心にある十層十五階であり青瓦と白い壁のその最上階から南の方を見つつ共にいる綾乃と中里に言った。
「最初は南洋とやり合いそうやな」
「あそことやね」
「そや、中国はまだ出陣してなくて」
綾乃に対して答えた、今は三人で天守の最上階にいるのだ。
「アメリカはワシントンからようやくな」
「出陣出来そうやね」
「中南米とアフリカもまだでな」
「それで出陣してるのは今はうち等と」
「南洋でな」
「その南洋がこっちに向かってきてるから」
「それでや」
その為にというのだ。
「それでや」
「最初はやね」
「あそこと戦や」
その南洋と、というのだ。
「そうなる」
「そやねんね」
「それでな」
芥川はさらに話した。
「肝心なことはどう戦うかや」
「それやな」
中里が芥川に応えた。
「やっぱり」
「そや、それでや」
「その考えはやな」
「今連中はシンガポールを出てフィリピン上空に入ろうとしてる」
「連中の移動要塞はやな」
「今僕等は薩摩の南におる」
北を見ればそこに桜島がある、それが何よりの目印だった。
「そこからさらにや」
「琉球に行くな」
「それで動きはこっちの方がずっと速い」
日本の移動要塞である蓬莱の方がというのだ。
「そやからな」
「そこを活かしてやな」
「攻めるけどな」
それでもというのだ。
「ここはや」
「どうするかやな」
「面白い策で行こうか」
「面白い?」
「そや、蓬莱は今は南に向かうが」
「敵はこっちから来るしな」
「それで台湾の東の沖辺りで戦うが」
しかしというのだ。
「ほんまに敵の数は多い」
「四百万やな」
「六十万の兵でどうして戦って」
「どうして勝つか」
「それが一番の問題やが」
「どうするかやな」
「そや、台風や」
ここで芥川は言った。
「台風を使うんや」
「台風?」
「そや、僕等が今から行く場所は台風が発生するな」
「そやね、大体フィリピンの海から発生して」
綾乃も台風と聞いて言った。
「それでやね」
「こっちに来るな」
「大抵そやね」
「その台風を使うんや」
「っていうとどうするん?」
「今この時期はほんまに台風が多い」
芥川は綾乃に笑みを浮かべて話した。
「南から北に来る」
「あっ、南洋の進路やね」
「それで連中も当然気をつけてる」
「というかリーとシェリルやと」
中里は南洋の棟梁である二人のことをここで思い出した、天守から見える蓬莱から見下ろす海の遥か先まで見つつ。
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