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今年も同じく

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第三章

「あのシーズンからな」
「今に至るまでね」
「リーグ優勝していないからな」
「それでなのね」
「来年こそはだよ」 
 まさにというのだ。
「本当にな」
「優勝するっていうのね」
「リーグ優勝して」
 二〇〇五年以来のそれを果たしてというのだ。
「そしてだよ」
「クライマックスも勝ち抜いて」
「シリーズも勝って」
 そうしてというのだ。
「胴上げもするよ」
「言うわね、ただね」
「それは広島って言うんだよな」
「そうよ、お兄ちゃんにとっては残念だけれどね」
 千佳は寿に胸を張って言い切った。
「日本一は広島のものよ」
「言ってくれるな」
「勿論巨人は叩きのめすわ」
 邪悪の権化であるこの忌まわしいチームはというのだ。
「言うまでもなくね」
「そうしてか」
「そうよ、そしてね」
 そのうえでというのだ。
「悪いけれど他のチームもよ」
「阪神にもか」
「例年通り勝ち越させてもらうから」
「言ってくれるな、来年こそはな」
「カープにも勝ち越すのね」
「そして何度も言うが日本一になってなるからな」
 こう言ってだった、そのうえで。
 千佳は広島の祖父の家に向かった、寿は元旦まで家にいてだった。
 除夜の鐘の音を聴きつつ母に言った。
「じゃあ今からね」
「西宮に行って来るのね」
「あっちにね」
「毎年通りそうするのね」
「そうしないと」
 それこそとだ、寿は母に言った。
「阪神の為にも」
「あんたのことはお願いしないの」
「することはするけれど」
 それでもというのだ。
「成績と健康のことはね、けれどね」
「第一はっていうのね」
「阪神が優勝したら凄いことじゃない」
 寿は母に熱い声で語った。
「日本中がフィーバーになって」
「お祭り騒ぎになるわね」
「そうなるから」
 だからだというのだ。
「今年こそはだよ」
「日本一になるのね」
「そのことをお願いしに行くんだよ」
 初詣へのそれでというのだ。
「今からね」
「そうするのね」
「そうだよ、じゃあ行って来るよ」
「やれやれね、千佳も今頃は」
「あいつは厳島だから」
「同じね、何でうちの子達はこうまで野球好きなのかしら」
「野球は好きだよ、けれど」
 寿は母に熱い声のままで語った。
「それ以前にそれ以上にね」
「阪神が好きなのよね」
「阪神は僕の全てだよ」
 こうまで言っていいものだというのだ。 
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