クーぐだ♀ワンライまとめ
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第11回 魔術礼装晴れの新年(プニぐだ♀)
前書き
二部想定:旧へ、一番に晴れ着姿をお披露目するぐださん(1,000文字程度)
キスの描写あります
まさか、また振袖が着られるなんて思いもしなかった。"晴れの新年"そう言ってダ・ヴィンチちゃんとシオンさんから渡された新しい礼装に袖を通せば、着物かその名前故か、自然と背筋が伸びる。一通り可笑しなところがないか姿見で確認して、髪飾りとショールも身に着ければ完了。二人にお披露目を兼ねてもう一度お礼を言いに行く前に、まずは彼に会いに行こう。と言っても、部屋の外で待ってくれているのだが。
「お待たせ! いいよー」
「おう、んじゃ入るぜ……おお」
まじまじと見られるのは恥ずかしいので、照れ隠しに両袖を持ち上げるように両肩辺りまで上げ、ゆっくりめにターンする。軽く首を傾けて雑誌のようなポーズを決めると、似合ってる、とお褒めの言葉を貰った。
「てっきり赤かピンクあたりだと思ってたが」
「うん、水色なんだー」
「いいじゃねえか、青空みたいでよ。お前さんらしい」
ストーレートに飛んでくる賛辞に、じわじわと頬へ熱が集まっているのが分かる。視線をそっと外し、手慰みに首元のショールを撫でながら何度目かのありがとうを伝えていると、珍しい素手の指が伸びてきた。無骨な見た目とは違い、優しい手付きでファーに触れている。彼の左肩から手を覆う鎧に附属しているものと同じものだろうに。
「柔らかいな」
「触り心地いいからつい、もふもふしちゃうんだ」
それとね、"お揃い"みたいで嬉しくて。小声での告白は、無事に届いたらしく彼の表情が驚きに変わった。自らの装飾品の感触を確かめてから納得したように頷くと、いつものような明るい笑みを浮かべる。
「いっそのことオレも巻くか?」
「ふふっ、いいかも」
巻いてみる? と外そうとした動作は止められ、整った顔が近付いたと思えば唇に淡い熱。あまりにも自然に盗まれたせいか、まるで夢でも見ていたかのような気がした。自分の指でなぞったところで温度が残っているはずもなく、リップクリームの色が薄っすらと移っただけだ。
「クー、もっかい。あとで」
「珍しいな? お望みならいくらで……後でだと?」
作ってくれた二人にもお披露目した上でもう一度お礼を言いたいのだと伝えれば、不満そうな視線と溜息を頂戴したものの、付き合ってくれるらしく手が差し出された。
「クー! 今年もまた、宜しくね」
「おう。使いこなしてみせろよ?」
当然、と強気に頷いて迷いなく自分の手をそこに重ねる。しっかりと握り返される感覚に何だか胸が詰まるような、そんな気分になったけれど大丈夫、わたしは今日のことを忘れないで、きっと進んでいける。だから今日は、皆の厚意に甘えてお正月を満喫するのだ――彼と一緒に。
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