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あべこべ道! 乙女が強き世界にて

作者:マロンex
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第7話 飲み会

 
前書き
今回は後半の書き方ガラッと変えてみました。
みほって苦労人のイメージ 

 
第7話 飲み会

「見てよ! 河野さん! これK様のストラップ!2つ買ったから良かったらどう?」
 
「あ、どうも、でも俺は別にK様は...」
 
「ねえねえ! ほら! K様と同じ髪型にしてみたけどどうかな? こういうのがタイプなんでしょ?」
 
「え、いや別に...」
 
「河野さーん! 良かったら今度K様がでるドラマの撮影会に...」
 
-----
食堂
 
「はぁ..なんだろうこの疲労感....」
 
あの事件以降、すっかり『K様ファン』という噂は広がってしまい、大学は今作り出されたK様ブームでてんやわんやの状態だった
 
「河野殿の影響はすごいですね。今やこの大学で入っていない方が少数派になりかけてますよ」
 
「まあ大体は河野さんと話題が合うだとか、口実ができるとかいった下衆な輩ばかりだがな。...全く、恥を知れ」
 
「一番最初にFC加入した麻子がいっても説得力皆無だけどね」
 
「大学の公式グッズにもK様の商品入ったらしいし...あー!すごいよ!プラウダとの合同オープンキャンパスの計画もたってるって!」
 
「もう誤解だなんて言える雰囲気じゃないですよ....」
 
「申し訳ないであります...あそこで私が否定していれば...まさか本当に弟殿のものだったとはつゆ知らず」
 
「まあ..タイミングが悪かったとしか...言えまへんね...まあ、少しふれば...噂も自然と無くなるでひょう」モグモグ
(クッソ、こいつ...他人事だからって幸せそうに飯くいやがって...)
 
「うーん...じゃあ少し気晴らししない?」
 
「気晴らし...ですか。そうですね、いつまでも悩んでても解決することじゃないですし」
 
「で、言い出しっぺは何かいい案でもあるんだろうな」
 
「ふふーん! これだよ!これ!」
 
沙織さんがバックから取り出したのは一枚のチラシ。どうやら最近この近くに新しく居酒屋ができたようだ。
 
「大学生といえば、飲み会!親睦を深めつつ!お酒で時間を忘れようよ!」※この世界は18から飲酒できる世界戦です(後付け)
 
「いいでありますね! 私実は飲めるようになってから一回も飲んだことないんですよね!」
 
「居酒屋のお料理は大層美味と聞いておりますし...行きましょう!」
 
「私も好きだから別に構わんが......河野さんはどうする? 」
 
「うーん...自分も飲んだことないし....ちょっと怖いかも」
 
「まあ、心配しなくても、みんな酒に関しては同じくらいのレベルだ。無理に飲ませる気もないし、親睦を深める食事会だと思ってみてはどうだ」
 
「食事会....そうですね...じゃあいって...見ようかな」
 
「やったね!! 決まりだ! じゃあ席空いてるか確認するねー!」
(ナイスまこ!ファインプレー!)
 
「いやあ、楽しみであります!是非親睦を深め合いましょう!」
 
「あ、あはは...お手柔らかに...」
 
こうして、大学入って初の飲み会が開催されることとなった。
 
ーーーー(ここから別視点)
 
「はあ...また戦車道の練習長引いちゃった。もうこんな時間だよ...」
 
付けていた時計を確認すると丁度20時を回ったタイミングだった。高校3年の秋頃から私は戦車道連盟に声をかけられ、早くも推薦で大洗大学に通っていた。推薦が決まった後からは、練習以外の勉学等は一切免除され、その分空いた時間は大学へ足を運ぶ生活となり高校にはほとんど顔を出さなくなっていった。やりたいことを好きなだけしているこの生活が充実しているのは間違いないが、それと引き換えに疎遠になってしまった友人も多くいる。
 
「...みんな怒ってないといいな。久しぶりに会うのに大遅刻だし..」
 
時を遡ること1時間ほど前だろうか、練習の合間に電話が来た。それは高校の頃からの友人からだった。「久々に会いたい、紹介したい人が居る」と唐突に連絡がきたのだが、もうだいぶ出来上がっている様子のその人はどうやら大学の近くに居酒屋にいるようだった。
 
『行けたら行くね、練習長引いちゃうかもだから。私のことは気にしないで』
 
曖昧な返事。本当は這ってでも行きたい、かけがえのない友人たちからの久々の誘いだ。だが、それ以上に疎遠になった友人たちがキラキラしているのを見ると自分の進んだ道に揺らぎが生じそうで、怖いと言う感情が押し寄せ、私の返答を重くした。
結論として練習しながら私が出した答えは「途中から参加して、様子を見る」と言うなんとも情けない答えだった。
 
「ついた。...あ、連絡連絡。LINEを部活仲間以外に送るのも久々だな...」ピコン
 
だが、既読はつかない。まあのみの場だ。話に花を咲かせているのかもしれない。ため息をつきながら店に入り、周りを見渡していると大声で呼び止められた。
 
「おーい!みぽりぃぃん! 久しぶりぃ!」
 
「わ、わあ! 沙織さん!久しぶりって...大丈夫!?」
 
上気した顔の友人は私を見て近づいてくると、間髪入れずに抱きついてきた。ずっしりと重たくのしかかる彼女はほとんどフラフラ状態だった。
 
「おい、沙織、お前酔いすぎだぞ...。すまんな西住さん、こいつ見栄はってガンガン飲んじゃってな。もうダメそうだから今からタクシーに乗せるところだ....。きたばかりで申し訳ないがこいつ送るから私とこいつは帰らせてもらう」
 
「あ、うん...気にしないで。遅れちゃったのは私だし」
 
「すまんな」と小声で言うと沙織をおぶってタクシーに乗り込んだ。まあ、しょうがない、せっかく来たんだし、残っている友人と話そう。そう思い麻子さんに席を尋ねると、先ほどよりもさらに申し訳なさそうに口を開いた。
 
「あー...席はその、奥の個室なんだが...。一緒に来てた五十鈴さんは急な用事で、秋山さんは沙織よりもさらに早く潰れてしまってな。今部屋には河野さんって子しかいないんだ」
 
「河野さん...? あー沙織さんがいってた紹介したい人?」
 
「そうだ。だが状況が状況だしな..もうこのまま解散の方が...いやしかし来てもらって早々申し訳ないし...」
 
「全然大丈夫だよ!その子一人なんでしょ、挨拶がてらちょっとお話しして帰るから気にしないで!」
 
「そ、そうか...流石だな西住さんは。...ありがとう。じゃあすまんが行かせてもらう。...またいつか飲もうな」
 
走り出したタクシーを見送って、ふっとため息をつく。
 
「『またいつか』か...そうだよね。次いつ会えるかわからないしね」
 
高校の頃の『また明日』から『またいつか』に変わった彼女の最後の言葉はやけに遠く感じ、一人になった自分を余計に寂しくさせた。それを紛らわすように店内に入り、先ほど教えてもらった席の襖を開ける。中を覗くとビクッと驚いた男の子がこちらを見ていた。
 
「え、えっと...あなたが河野さん?」
 
「は、はい! よろしくお願いします!西住さんですよね!」
 
「え...あ、うん!よ、よろしくね...」
 
予想外、まさかの男の子。大学に一人だけ男子が入ったと聞いていたが、まさかその一人じゃないだろうとタカをくくっていたのだが....。絶句して立ち尽くしていた私を見て悟ったのか、男の子が話を始めた。
 
「驚きますよね...戦車道の名門大学に男なんて...」
 
「...ううん! 違う違う! 単に沙織さんが会いたがっているって言うからてっきり女の子がと思って!」
 
必死に否定して、急いで対面に座る。うん、何回見てもやっぱり男の子だ。
 
「あ、ああ...。なるほど、そうですよね。男なんて僕一人ですし」
 
「あーいやえっと...そうじゃなくてね...あんまり私自身男の子と交友なくてその...」
 
「あ、そうなんですね、実は俺も女の子とはほとんど...あはは」
 
「えっと...ご出身は...?」
 
気まずい。あまり仲良くない人と電車乗り合わせた時のようなギクシャクした会話。そんな当たり障りのない話題がいつまでも続くわけもなくしばらくして料理を頼み始めた。それと一緒にカクテルのお酒を頼んでいたので私も、と同じのを頼んだ。だが不思議と彼からは目を離せなかった。
 
「...お酒強いんだね。みんな酔ってるのに一人だけピンピンしてるみたいだし」
 
「い、いや実は、自分まだ飲んでなくて...。沙織さんや優花里さんが張り切って飲みまくっちゃったみたいで...介抱したら飲むタイミング失っちゃったんですよね...あはは」
 
「あー、だから嵐がさった後にちょっと飲んでみようって感じか」
 
「ま、まあそんなところです....ご迷惑はおかけしません!...多分」
 
なるほど、みんなが酔いつぶれたのはこの子が原因かも。そりゃ目の前にこんな子いたら張り切りたくもなるかもね。でもこの子に飲ませないあたりやっぱりみんな優しいな。
 
「ん...ぷはあ! こ、これがお酒ですか!へんな味ですけど...嫌いじゃないかも...」
 
「え、もしかしてお酒初めて?」
 
「おはずかしながらそうですね...今日も本当は飲まないつもりだったのですが、あまりに皆さん美味しそうに飲まれていて....。特に華さん!日本酒をぐいっとやっていてかっこよかったなあ...」
 
「...へえ。まあ確かにかっこいいね...すみません!私も日本酒ください!」
 
嬉しそうに華さんについて話す河野さんを見て、なぜかちょっともやっとした。あまり勝負事は好きじゃないがなぜかこの時は強い対抗意識を燃やし、背伸びして飲んだこともないお酒に手を出した。なるほど、これは確かに潰れるな。この子意外と小悪魔かもしれない。
 
「に、西住さんも飲まれるんですね、流石」
 
「ま、まあね、ちょっと飲んでみる?」
 
お酒の力を借りて少しずつ打ち解けた私たちは結局、お店の閉店時間までたわいも無い会話を続けた。元々お酒に強かった私はなんともなかったのだが、河野さんは弱かったようで、帰り道はフラフラだった。「帰れます、西住さんに迷惑かけたく無いです」と懇願されたが、こんな状態の男の子を見捨てて帰れないと、無理やり肩を貸し、家まで送ることにした。だが、その途中、事件は起きた。
 
「いたいた..よお、西住流。男連れて歩いてるなんて随分浮かれてんねぇ」
 
「おたのしみ中のとこ悪いけどさぁ、あんた強いんだって? お相手してよぉ」
 
はぁ...またか。ピアスをつけた金髪の女性の3人組がこちらに近づいてきた。
 
大洗高校が優勝した後、西住みほの名は瞬く間に全国を駆け回った。『軍神』『最強の後継者』『真西住流』などなど。私が金になると思ったメディアの誇張や、誤解を呼ぶような二つ名が流布したことで『西住みほは喧嘩に強い』という謎のデマがここ数ヶ月流れているようだった。もちろん、喧嘩は強く無い上、勝負事も嫌いな私なのでそのような輩に会うたびに逃げるように退散していたのだが....。今は彼がいる。
 
(うーんどうやってこの場を切り抜けよう...とりあえず河野さんだけでも先に...)
 
思考を巡らせていると肩に乗った重みがふっと消えた。
 
「や、やめろ! チンピラども!! みほさんに手を出すな!!」
 
ガクガクと震える足を必死に抑えながら私の前に立っていたのは河野さんだった。一瞬唖然とした表情した女たちだったが、すぐに全員がゲラゲラと笑い出した。
 
「あっはは!なんだこの男!しっし、女3人に勝てるわけないだろ、すっこんでな。お前には興味ないんだよ」
 
「ちょ、ちょっと!河野さん!? 何してるの!?」
 
「もうこれ以上迷惑かけられません」
 
「迷惑って...あなたじゃ無理だよ! 私のことは気にしないで、ね?」
 
必死に勇気を出してくれている相手をここまで真っ向から否定するのは辛いが、これも彼のためだ。だいぶ酔いも冷めてきてるみたいだし、とりあえずは逃げてもらって...
 
「嫌です、友達を...仲間を見捨てることなんてできません!」
 
会ってから初めての否定の言葉。だがなぜかその瞬間、黒森峰にいた頃の自分が重なった。
その言葉に呆然としている私を置いて、勇敢にタックルした彼の頭はチンピラの一人の腹に思い切り当たった。
 
「ってえな! 男だからって容赦しねえぞ!?」
 
少しは効いたようだがやはり男の非力さではどうしようもなかったようで、即座にカウンターをくらいうずくまる彼。だが、すぐに起き上がり必死に足にまとわりつく。『仲間を見捨てられない』その言葉が頭で反復する。
 
(そうか...この子から目が離せない理由って...)
 
ーーーー(別視点)
 
いつしか失神していた俺が目を覚ますと、横たわる3人のチンピラを尻目に誰かに膝枕をされていた。愛おしそうに俺を眺めていた彼女の目からは涙の粒がポタポタ流れ、自分の顔に垂れていた。
 
「よかった...本当に良かった...」
 
消え入りそうな声で自分を包む。それが誰なのか、全く状況もつかめないまままた俺は深い眠りにつくのだった。
 
 

 
後書き
感想、ご意見気軽にください。励みにします。
〇〇出して欲しい、〇〇はこう言う設定がいい等も嬉しいです。
参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです。 
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