あべこべ道! 乙女が強き世界にて
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第4話 学生自治会と風紀委員
(落ち着け..考えろ...あーでも身動き取れないし...)
「くっ...やめてください! このっ! 離せっ!」
体を必死にくねらせもがいて抜け出そうとするが、力の差が歴然すぎて全く効果がない
「...そんな抵抗無駄ですよ? 男女でどれだけ力の差があるとお思いですか? 体力を消耗するだけですよ」
「くっ...」
(五十鈴さんの言う通り...力任せに押しても無意味だ..もっと別の方法を...)バキッ
「あらあら、床が抜けてしまいましたわ。無理もないですね。この部屋、長らく使われていないせいで相当老朽化も進んでいますから....」
(老朽化...脆い...もしかしたら!)
「...さて、万策つきましたか? ではこちらの番...」
「...それはどうかな! 喰らえ!床踏み抜きキィーック!」
片足に思い切り体重をかけ床を踏み抜く。カクンと体制が崩れたおかげで掴んでいた腕が離れたその瞬間を狙い、もう片方の足で五十鈴さんの脇腹に向かって全力で蹴りを加える。
「うおお! くらええええ!!」
「...なるほど...状況に応じた機転は効くようですね。ですが....」ガシッ
渾身の左キックはいとも簡単に片手で見切られ、逆に掴まれてしまった。
「この場合はにげることに重きをおくべきです。こうなったらどうするつもりだったのですか?」
(あ....おわた...右足固定されてて逃げられんし...)
ぎゅっと目をつぶり死を覚悟したが、しばらくして少しため息をついた五十鈴さんは、掴んでいた自分の足をそっと下ろした。
「..まぁ及第点といったところですかね。肝心の判断力が少しズレてはいますが....あ、もう入ってきていいですよ、皆様方」 ガチャ
「すごいね、華さん。演技とは思えなかったよ」
「ほんとよ! 正直本気なんじゃないかってハラハラしたわよ!」
「あー、声だけじゃなくて状況も見たかったなぁ」
「へ?...えっと...え?」
声とともにおかっぱの3人組の女の子が部屋に入ってくる。よく見ると先ほど後ろで叫んでいた風紀委員のメンツだった。
「...改めて自己紹介します。わたくし、大洗大学 学生自治会の五十鈴華と申します。今回風紀委員にご協力していただき、あなたのテストをさせていただきました」
「て、テスト? 」
「...はぁ。この状況でもまだわからないのですか...。襲われた時どうするのかのテストですよ! 全く...獣の群れに自ら志願したと聞いてどんなに肝の座った子だと思えば...男って自覚あるんですか?だいたい...」
「まぁまぁ! そんなツンツンしなさんな。まったくぅ、素直じゃないんだからー。めちゃくちゃ心配してた癖に」
「なっ...し、してません! ただこの子があまりに無警戒だから...心配とかじゃ...」
さっきまでの威勢が一気になくなり、困惑する五十鈴さん。それに追い打ちをかけるように他の2人も話し始める。
「そうよ! 1人じゃ危ないからとか言って入学式から見張らされてた私たちの身にもなりなさいよ! 職権乱用よ!」
「さっきだって作戦無視して突撃しちゃうしねー、あんなに真剣な顔久々に見たよー」
「いやっ....だから違います...そんなんじゃ...ただ生徒会として職務を...」
なるほど、すぐに後ろから風紀委員が駆けつけたのもこれで合点が行く。
(獣の群れか...。たしかに逆転した世界ではこの人の言う通りだ...だとしたら自分の身は自分で守れるようにならないと...いつまでも甘えてちゃダメだよな....)
「あ、あの....もしよかったらこれからも...その...ご指導お願いしてもいいですか? 」
「ど、どうしてあなたのためのそんな...」
「お願いします! 俺、五十鈴さんのようにかっこよくなりたいんです!」
「っ!...し、仕方ありませんね! わたくしとしてもあなたのような危険因子を野放しにはできませんしね。協力して差し上げましょう!」
「やった! ありがとうございます!」
「うわぁ、めっちゃ嬉しそー、てかちょろすぎる」
「女のツンデレなんて需要ないわよまったく」
「声うわずってない? 案外ウブなんだねー」 ヒソヒソ
「...そこの3人、全部聞こえてますけど?」
「「「...あっやばい...目がマジだ...」」」
「...さて、では用も済みましたし移動しましょうか」
「そうですね、そろそろお昼のじかんですし...。あ、そうだ、これから友人と食堂に行く予定なんですが...みなさん一緒にどうですか?」
「あー、申し訳ないけど風紀委員はこの後会議があるから遠慮するわ」
「わたくしは是非、行かせていただきますわ。...それで、そのお友達というのはどこに...」
「あー! いたいた! もーどこいってたのよー」
「...よかった、とりあえず無事のようだな」
部室を出て、すぐに武部さんと冷泉さんが駆けつけてきてくれた。どうやら大学中を探し回ってくれていたらしい。悪いことをしてしまった。
「ごめんなさい、ご心配おかけしました」
「大丈夫? 怪我はない?」
「はい。この方々が助けてくれたので...」
「この方々...って華!? それに風紀委員3人組も! なんで!?」
「まあ、かくかくしかじかありまして...」
「あーなるほどねー!」
「ちっ..なんでお前がここに...」
「あらー、これはこれは...れまこさん、奇遇ねえ」
「...おまえ。河野さんに変なことしてないだろうな」
「ふん、するわけないでしょ。清く正しい風紀のため、か弱き男子を助けたまでよ。...ねー河野さん」
「あ、はい...。その節はお世話になりました...」
(なんだ、このおかっぱの子急に積極的になったな...冷泉さんめっちゃ睨んでくるし...)
「そどこ...お前、どうやら本気でぶっ飛ばされたいようだな...」
「上等よ! かかってきなさいよ!アホれまこ!」
まさに蛇とマングース。一触即発の雰囲気が二人の間に流れていた。ただならぬ空気の中、沙織さんに耳打ちする。
「...あ、あの武部さん、あのお二人って仲が悪いんですか?」
「あー、気にしないで。いっつもあんな感じだから」
「まあ、風物詩...いえ、痴話喧嘩といったところでしょうか。わたくし含めここにいる全員が同じ高校だったので見慣れた光景ですね」
「あ、皆さん同じ高校だったんですね! それは知りませんでした」
「まあ、喧嘩するほど仲がいいってやつだね」
「「仲良くない!」」
「あはは...ほんとだ。息ぴったりですね...」
「...あーそうです沙織さん、この後お昼にいくんですよね。私もご一緒してもよろしいですか?」
「オッケー、全然いいよー! ここの食堂めっちゃ美味しいらしいよ!」
「あら、それは楽しみですね。...お恥ずかしながら朝からずっと動きっぱなしで、もうお腹ペコペコでして...」
今にも殴りかからんとする勢いで言い合いをする二人を気にも留めず、話し始める二人。どうやら本当にいつも通りの風景らしい。
「じゃあ河野ちゃん、食堂行こっか。 お腹すいたでしょ!」
「はい、いきましょう」
「...ほーら!麻子も!行くよー、いつまでやってんの!!」ガシッ
「離せ沙織! 一回こいつにはガツンと...お前! 二度と河野さんに近づくなよ!」
「ソド子もほら、その辺にしていくよー。会議遅れちゃうよ」ガシッ
「何すんのよゴモヨ! ここは風紀員としてあのバカにお灸を据えてやるのよ!」
「うふふ...さて..何をたべましょうか...楽しみです...」
「もー! 麻子! 暴れないでよー!!」
「あははー...皆さんお元気ですね...」
(なんかこの大学...みんな個性的だな...別の意味で不安になってきた...)
言い合いの最中、首根っこを捕まれながら、武部さんとゴモヨさん(?)にズルズルと引っ張られ、強制的に連れていかれる二人。その横でお昼のことで頭がいっぱいの五十鈴さんを眺めながら、ただただ苦笑いをするしかない河野であった。
後書き
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〇〇出して欲しい、〇〇はこう言う設定がいい等も嬉しいです。
参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです。
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