ヘタリア大帝国
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TURN26 親衛隊その六
「手袋をしていても。この石はね」
「効果がある」
「そうですね」
「俺達の神の力がある」
言う言葉はこれだった。
「そしてその力はあの娘にも効果があったみたいだ」
「レーティア=アドルフも」
「無事篭絡できましたか」
「できたよ。親衛隊の面々と同じくね」
「親衛隊には気付かれていないですか」
「主立った者達には」
「気付く筈がないからね」
自分の部下達だがそれでもだ。ヒムラーは彼等には愚弄を見せた。
そしてその愚弄に基きだ。こうも言うのだった。
「所詮はただの追っかけさ。俺には気付かないさ」
「はい、そして我々にも」
「全くですね」
「ドーラ神のことは誰も気付かない」
ヒムラーはある神の名前を出した。
「そう、誰もね」
「ロンメル元帥もですか」
「気付きませんでした」
「ロンメルは今の俺にも気付かなかったさ」
ヒムラーは自信たっぷりに言えた。このことも。
「彼が見ているのはあくまで過去の俺さ」
「今のヒムラー様ではない」
「そうですね」
「そもそも何故俺が養鶏場を大きくできたか」
左手の甲の石をだ。ヒムラーはまた見たのだった。
「そのことも。ましてや俺の手のことも」
「全くですね」
「誰も気付かなかったのですね」
「慎重にしてるからね。あえて右手も隠しているからね」
両手を怪我したことにしてだ。左手の甲のそれを隠しているのだ。
「周到にしているからね」
「我々のことは気付かせない」
「時が来るまでは」
「ましてや大怪獣達のことも」
ヒムラーは人類を脅かすそうした存在のことも話に出した。
「気付かせないさ」
「全くですね」
「そうしていってですね」
「ソビエトを倒してからだね」
これは彼にしては当然の流れだった。彼もドクツがソビエトを倒すと考えていた。
だがそれと共にだ。彼はこうも言うのだった。
「けれどソビエトが勝っても」
「ヒムラー様、そして我々は」
「生き残りますね」
「そうするさ」
こう言うのだった。
「俺の石がある限り。それは可能さ」
「あのカテーリンという娘もどうやら」
「石を持っていますね」
石、この言葉が出てだ。ヒムラーだけでなく闇の中にいる者達も彼の手の甲の石を見る。石は無気味な紅の光を放ってそこに輝いている。
その石を見てだ。彼等は言うのだった。
「それだけに厄介ですが」
「しかしヒムラー様にも石があります」
「何、所詮は子供だよ」
ヒムラーはカテーリンもこう言って終わらせた。
「俺の相手じゃないさ」
「交渉はですね」
「それについては」
「まあ。俺にこの石がある限り大丈夫さ」
全くだというのだ。
「何でもできるさ」
「ではそのうえで」
「我々もまた」
「ではドーラ様の前に行こう」
ヒムラーは彼等の中心に立った。
「今日も祈りを捧げよう」
「わかりました」
「では」
こう話してだ。そうしてだった。
ヒムラーは闇の中で礼拝をするのだった。何か得体の知れない存在の前に向かって。
レーティアはその時にだ。グレシアとドイツ妹からだ。ある教団の話を聞いていた。その教団はというと。
「ドーラ教だな」
「前に言ったわね」
「あの教団ですが」
「胡散臭い教団だな」
その金色の流麗な眉を顰めさせての言葉だった。
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