夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百十七話 枢軸の者達の素顔その十三
「だからな」
「善人ではないか」
「悪人だとは思うがな」
「そうなんか」
「我々自身はな、だが戦の場を出るとな」
その時はというのだ。
「出来る限りな」
「そういう風にしてるか」
「子供達と遊ぶこと等は好きだからな」
「そうなのか」
「あくまで普段は普段だ」
ゴンチャロフは強い声で言い切った。
「戦とは違う」
「そこは一線を引いてるか」
「酒は戦の場でも飲むがな」
「それはあかんな」
即座にだ、小泉は言い返した。
「飲んでどうして働ける」
「それはそちらの事情だ」
ドフロエフスキーが小泉に返した。
「ロシアの寒さならだ」
「仕事中でもか」
「飲まないとだ」
それこそというのだ。
「身体が冷えて動けない」
「それで飲むか」
「それはロマノフ朝の頃もソ連の頃もだ」
どちらの時代でもというのだ。
「圧政と言われていたがな」
「圧政を敷いても酒は自由か」
「さもないとロシア人は死ぬ」
ドフトエフスキーは言い切った。
「寒さでな」
「難儀な話やな」
「だから戦の時も飲む」
「それで戦えるんか」
「逆に酒がないと戦えない」
「そこもロシアか」
「そうだ、覚えておくことだ」
こう言って実際にドフトエフスキーはまた日本酒を飲んだ、ロシアの五将軍の者達は今は北極の浮島の星の者達のもてなしを受けた。
そして最後の和菓子を前にしてだ、五人はこうも言った。
「ふむ、羊羹か」
「これもまたいいな」
「実に美味そうだ」
「では最後はだ」
「これと茶を楽しもう」
五人共にこにことしていた、そうして食べる姿はこの世界で女帝雷帝そしてインドの双璧と共に恐怖の代名詞となっている顔は何処にもなかった。小泉達は後にこんなことを言った。
第百十七話 完
2019・6・8
ページ上へ戻る