夢幻水滸伝
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第百十七話 枢軸の者達の素顔その七
「日本酒も然りだ」
「それで飲むな」
「今みたいに」
「蕎麦とも合うしな。ではな」
ここでだ、チュッチェフはざるそばを一枚食べ終えた。そのうえで店員を呼んで微笑んでこう言った。
「お姉さんもう一枚お願いします」
「ざるですね」
「はい、そちらを」
こうエルフの店員に言う、その様子を見てだった。
インペルは意外といった顔で彼に言った。
「自分さっきの態度は」
「どうした」
「えらく紳士的で柔らかかったな」
「そうか」
「私等と接するよりもな」
「君達とは今は勢力が違う」
チェッチェフはインペルにこのことから話した。
「ましてやがて戦う」
「それでか」
「そうだ、交流も親しくしていても」
それでもというのだ。
「それはプライベートではない」
「公のもんになるからか」
「その様に接している」
「何や、真面目か?」
「真面目ではない、分けているのだ」
公私のそれをというのだ。
「それだけだ」
「そうなんか」
「しかし先程はな」
「プライベートか」
「そうだ、ロシア人はプライベートではな」
「ああ、ロシア人気質やな」
「それが出る」
こう言うのだった。
「それでだ」
「さっきのが自分のロシア人気質か」
「そうだ、ロシア最大の財産は何か」
チェッチェフはおかわりで来たざるそばを観つつ話した。
「君達はわかるか」
「こっちの世界でもある馬鹿でかい土地と水と資源やないな」
ルルフォもざるそばを食べつつ応えた、見れば彼もインペルもそろそのざるそばがなくなってきている。
「それは」
「そうだ、それは国民自体だ」
彼等こそがというのだ。
「ロシア人の心こそがだ」
「ロシア最大の宝か」
「そうなんか」
「素朴でかつ親切でしかも無欲とな」
「そこまでの美徳を持ってる」
「それがロシア人か」
「この世界でも健在だ、家と仕事とパンとウォッカがあれば」
この四つさえあればというのだ。
「どの様な苦難も耐えられるしな」
「寒さも平気か」
「その四つがあれば」
「如何にも。無論我々は日々枢軸の国力を上げることに腐心していてだ」
国を治め世界を救う者としてだ、彼等もそうしたことに心血を注いでいるのだ。
「民の暮らしもだ」
「よくする様にか」
「励んでるか」
「人はこの四つだけでは駄目だ」
先に挙げたそれ等だけではというのだ。
「家もより立派でサウナも見事なものでな
「仕事もええ仕事やな」
「そうやな」
「そうだ、食事もパンにだ」
「さらにやな」
「色々あるべきやな」
「ピロシキもボルシチもあってだ」
チュッチェフはインペルとルルフォにさらに話した。
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