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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep42第二次オムニシエンス決戦開戦~Final Stage~

ディアマンテことメサイア・エルシオンはただひとり、最上階の中央に展開されている巨大モニターを眺めていた。映しだされているのは“オムニシエンス”へと降下してきた管理局の29隻の戦艦。彼は「フッ」と笑みを零し、“オラシオン・ハルディン”の結界を解く。

「ディアマンテより全勢力へ通達。我らが主、マスター・ハーデの心を踏みにじった偽善者どもが、ここオムニシエンスへと降り立った。協力を求めておきながらのマスターの逮捕未遂。許されるモノではない。ゆえに偽善に満ちた管理局へ罰を与えろ!! 出撃っ!!」

ディアマンテは次々と各部署へと指示を出していく。かつては“レジスタンス”と呼ばれていた“テスタメント”武装隊。スカリエッティの技術力を流用して開発された“ガジェット”の改良型。Ⅰ型と称されたカプセル型に、Ⅲ型と称された大型の球状型が揃えられている。
そして“空軍アギラス”。全ての機体を集結、新たにロールアウトした機体を含め、その機数は200機を超えている。それら全てを迎撃に向かわせた彼は、次に“オラシオン・ハルディン”の管制システムへ指示を出す。

「アインヘリヤルⅠからⅩ、騎士の洗礼ⅠからⅧ、全砲門を回廊へ変更。目標は管理局所属艦29隻。女帝の洗礼はチャージ続行。次弾目標、時空管理局支局」

≪オラシオン・ハルディン了解≫

“女帝の洗礼”の周囲を守護するすべての砲塔・砲台が動き出す。“レスプランデセルの円卓”から距離3km付近に29隻の艦が降下を終え、一斉に武装隊が進軍を開始している。

「大人しくしていれば、“我”が支配する新世界で下僕として生きられるものを」

椅子の上にふんぞり返りながら鼻で笑うメサイア。

「はぁはぁ・・・やはり・・来たのですね、管理局、はぁはぁ・・が・・・」

「マスター、やはり休んでいた方がいいのでは・・・?」

「セレス・・・」

そんな彼の居る最上階へと姿を現したのは、苦しそうに肩で息をするセレスと、彼女を隣で支えるサフィーロことルシリオン。そしてセレスの“テスタメント”設立の動機となった、殉職した彼女の姉・トパーシオ・フィレス。真名をアウローラ・プレリュード・フィレス・カローラ・デ・ヨツンヘイム。この3人だ。
3人は幹部の席のある中央まで向かい、セレスは己の席に座り、ルシリオンとフィレスは彼女の両隣の席に座る。メサイアは3人が現れたことで居住まいを正し、黙りこむ。

「はぁはぁ・・・ふぅ・・・【カルド隊、聞こえますか?】」

【・・・ボSu、聞こえmaす】

セレスは幹部独自の回線での念話で、カルド隊に呼びかける。カルド隊は現在まで“エヘモニアの天柱”で待機していた。何故なら第一級命令発令により怒りと憎しみで暴走寸前になったため、民間人への被害を恐れたルシリオンが待機を命じていたからだ。
セレスの念話に応じたのはリーダーであるカルドだったが、既にその存在に異常をきたしていた。セレス達はそれに対し眉を顰めたが、そのまま念話を続ける。

【・・・待機命令を解きます。これが最後です。あなた達の願いを果たしなさい】

【【【了解しmAした。Bosuに感謝Wo】】】

彼女は念話を切りメサイアへと視線を移す。

「はぁはぁ、ディアマンテ、あなたも出撃()てください。指揮は私が執ります」

「・・・っ! 了解しました。出撃します・・・!」

メサイアはフードの中で不満に顔を歪めたが、それを悟られないように最上階を後にした。セレスはそれを見送り、肘掛にもたれかかり激しく咽る。ルシリオンとフィレスが彼女の元へと駆け寄り、背中を擦ったりして落ち着かせる。

「げほっえほっ、ありが、とう・・はぁはぁ・・・ふぅ・・・。あなた達にも命令します。トパーシオ、全てが終わるまであなたは自室で待機」

「なっ・・!? どういうこと、セレス!? どうして私は待機なの!?」

フィレスの口調が急に大人びて、彼女はセレスへと抗議を訴える。それは姉として妹へ口にした初めての不満だった。セレスは姉・フィレスへと、その桃色の瞳を向けた。

「お姉ちゃん。お願いだから言うことを聞いてください」

「っ・・・判った。トパーシオ了解・・・。【サフィーロ、妹をお願い。無茶をしないように止めてあげて】」

セレスの弱々しい視線と縋るような言葉に、フィレスは渋々だがその命令を了承した。そして最上階を後にしようとし、最後にルシリオンへと念話を送った。ルシリオンは【了解】とだけ答えて、フィレスの背を見送った。

「サフィーロ・・・。少し・・いいですか?」

セレスはルシリオンへと呼びかけながら、彼の握り拳を握る。彼は「どうしました?」とセレスの目の前まで移動して片膝を付き最大の礼をとって、彼女の濡れる桃色の双眸を見詰める。セレスは少し間を置いた後、静かにこう告げた。

「マスターとして、あなたに最後の命令を出します」

そう言って彼女は身体を折って、ルシリオンの唇に自らの唇を重ねた。

・―・―・―・―・―・

数え切るのも億劫な数の航空・地上部隊員たちが“アドゥベルテンシアの回廊”内を進軍する。
そんな彼らの目に移るのは壮絶な光景。最終防衛基地“オラシオン・ハルディン”の砲塔・砲台から放たれ続ける砲撃。それらが全て自分たちが降りてきた艦へと向かい、そして艦は最大出力のシールドを張って防御に徹するという状況。
そんな航空隊へと迫るのは、200機を悠に超える黒き翼を持つ空軍、戦闘機“アギラス”。その中でも特に彼らが驚いたのは、地上を進む数百機の“ガジェット”の存在だった。

「恐れるな! 俺たちがここで勝たなければ、管理局は破壊される! 中でも本局の破壊だけは何としても防がねばならない!」

時空管理局と“テスタメント”の最後の戦い、第二次オムニシエンス決戦。管理局と世界の存亡を懸けた決戦の火蓋が切って落とされた。

≪ここの通行料は高いぞ。 もちろん出世払いは不可だ≫

≪さあ、決着をつけようか! 偽善者共め!≫

≪斃れたすべての戦友たちの無念よ、蘇れ・・・!≫

“アギラス”200機のリーダー格から、200人を超える航空隊へと通信が入る。確認できるエンブレムは12種類。すでに全滅しているはずの部隊の姿もあった。

『この戦闘に勝って、あなた達テスタメントを止めて、世界の平和を取り戻す!』

≪平和を取り戻す、だと? この戦いの火種を生み出した管理局が、ふざけるなッ!≫

航空隊員の1人が“アギラス”部隊の先頭を翔ける牡羊座部隊アーリエス・リーダーへとそう言い放った。すると人工AIでありながら鼻で笑うという人間臭さを以って返答する射手座部隊サヒタリオ・リーダー。
この会話が開戦の合図となり、“オムニシエンス”の空で人間と機械の熾烈な空戦が始まった。人としての小ささを活かした事細かな機動の航空隊と、大きな機体とAMFを活かしたダイナミックな機動の“アギラス”部隊が衝突する。
エアインテークが弱点だと判明しているが、上手くそれを突けない航空隊が少し押され始める。

「フリード! ヴォルテール!」

――ブラストレイ――

――大地の咆哮(ギオ・エルガ)――

そこに航空隊を巻き込まないように、エリオとキャロが駆るフリードリヒと、その後方に佇むヴォルテールから炎熱砲撃が放たれる。一斉に回避運動を執った“アギラス”だったが、何機かが直撃を受け消滅した。

――紫光掃破(ハーツイーズ・ドライヴ)――

そして今度は“モード・バスター”のレヴィによる砲撃が、航空隊と空戦を繰り広げる数機の“アギラス”を捉える。しかし撃墜させることが出来ずに終わり、「あーもぉ」とレヴィが不満そうに呟いた。

「エリオ君、アギラスが来た!」

レヴィがひとり“アギラス”の密集空域へ向かった直後、エリオとキャロの2人が乗るフリードリヒへと上空から迫る“アギラス”が6機。エンブレムは少女の横顔にリボン。乙女座部隊ビルゴだ。レヴィがそれに気付き反転してくる。レヴィが戻るより早く6機のビルゴが、フリードリヒへと砲撃を撃とうとした。しかしその瞬間、遥か後方より途轍もないエネルギーを伴った砲撃が一直線にその6機を破壊していった。

「アレは・・・!」

「なんで・・・!?」

「ええぇぇぇぇッ!!?」

振り返った視線の先、キャロの従えしヴォルテールと並ぶ巨大な白き怪物が居た。エリオとキャロとレヴィは驚愕する。そんな3人に通信が入り、1つのモニターが展開された。

『やっほー! 間に合って良かった♪ 今から私たちも参加するから!』

「ルーちゃん!?」「ルー!」「ルーテシア!? なんで!?」

モニターに映るのはルーテシアだった。先程の砲撃の主は白天王。ルーテシアの従える使い魔のようなものだ。ルーテシアは白天王の左手に乗り、この戦場へと姿を現した。

『詳しいことは省くけど、シャルロッテさんに呼ばれたから。少し危ないかもしれないけど、友達を手伝ってあげて、って』

シャルロッテがクロノに頼んでいたこととは、ルーテシア参戦のことだった。
“オムニシエンス”攻略の戦力向上。シャルロッテは、以前からルーテシアの白天王に目を付けていた。今は薄れている魔族としての血、そして魔力とは言え、その圧倒的な出力による攻撃手段。そんな白天王を従えるルーテシアを参戦させる。シャルロッテがクロノに頼んだ願いの1つが今、エリオとキャロとレヴィの元へと舞い降りた。

『とりあえず、まずはあのアギラスとかゆうのを破壊し尽くすよ。白天王!』

ルーテシアの号令の元、白天王の腹部にあるクリスタルから砲撃が放たれた。キャロも負けじと「ヴォルテール!!」と指示を出し、ヴォルテールに砲撃を撃たせる。ここに、二大巨大生物と“アギラス”部隊の戦いが始まった。

・―・―・―・―・―・

ところ変わり地上。
300人以上の地上部隊と共に“アドゥベルテンシアの回廊”内を駆けるのは“特務六課”の地上班。迫るガジェットと武装構成員たちとの戦闘を繰り広げながらも、徐々に“レスプランデセルの円卓”の入り口、“オラシオン・ハルディン”へと進撃する。進撃する300人近い地上部隊の先頭で“ガジェット”を粉砕しては武装構成員を吹っ飛ばしていくのは・・・

「ガジェットだろうが構成員だろうが、どれだけ集まっても・・・!」

――ヴァリアブルシュート――

「もうこれ以上の暴走はさせない!」

――クロスファイアシュート――

「「退けぇぇぇぇッ!!」」 「退きなさい!!」

――リボルバーナックル――

――リボルバースパイク――

――ストームトゥース――

「邪魔しないでほしいっスよ!」

――エリアルキャノン――

「大人しく道を開けろ・・・!!」

――オーバーデトネイション――

「邪魔をしないで!」

――イノーメスカノン――

「やるわね、みんな・・・!」

――繋がれぬ拳(アンチェイン・ナックル)――

“特務六課”のティアナとスバル、協力者ティーダとクイント、そしてミッドチルダ西部の一地方を管轄する108部隊。つまりゲンヤ・ナカジマ三佐の率いるナカジマ家姉妹だった。何故彼女たちが居るのかと言うと、これもまたシャルロッテの提案だった。
彼女は、母クイントの最後の時間を、たとえ戦場であってもナカジマ家と共に過ごしてもらいたい、とクロノに頼み込んでいた。そしてそれは許可され、こうして母クイントと娘たちのギンガ、チンク、ディエチ、スバル、ノーヴェ、ウェンディは同じ時間を過ごしていた。
ちなみに父ゲンヤもすでにクイントと再会し終えていた。短い時間だったが、2人だけの話も終え、今はある1隻の艦内で待機している。

「お見事です、母上」

「さすが母さん。無駄のない良い一撃でした」

「あら、チンクもギンガもなかなかよ♪」

「あたしは!? あたしはどうっスか!?」

ウェンディは元気いっぱいに自分を指差し、

「あ、あたしも、どうだったかな・・・か、母さん・・・」

ノーヴェは少し恥ずかしそうにしながら、

「あたしはどうでしたか、お母さん」

ディエチは少し遠慮気味に、それぞれクイントへとそう尋ねる。

「ちょっ、そんなこと言ってる場合じゃないよ!?」

「まだまだ来ますよ!」

迫り来ていた“ガジェット”群を一掃してすぐにクイントへと集まるナカジマ家姉妹。スバルとティアナが、何陣目かの“ガジェット”群と武装構成員へ指を差して注意する。そこに「おおおおおおッ!!」と咆哮が響く。

――鋼の軛――

地面から白い帯が幾条も突き出し、“ガジェット”を貫き破壊しては武装構成員たちを捕えた。それらはスバル達の後方に佇む狼形態のザフィーラの仕業だ。

「お前たち家族の再会に水を差すのは気が引けるが、時間もそうはない。急ぐぞ」

ザフィーラはゆっくりと先頭のスバル達の元へと歩み寄るとそう告げ、さらに迫りくる武装構成員たちと“ガジェット”群を見据える。ザフィーラの言葉を聞いたスバル達はそれぞれ頷き、再度地上部隊と共に進撃を再開した。

・―・―・―・―・―・

空と地の狭間を飛行するのは、シャルロッテを先頭とした“特務六課”飛行隊。目標は、新たに姿を現した敵戦力、8隻の“スキーズブラズニル”艦隊。
管理局の戦艦は、“騎士の洗礼”と“アインヘリヤル”の砲撃の的として機能しているため、なかなか動かせない状況だ。それ以前に動こうにも“騎士の洗礼”と“アインヘリヤル”による絶え間なき砲撃がそれを妨害し、常に最大シールドを展開しなければ、撃沈させれてしまうという状況で断念。
それに、戦艦という的が無くなれば、次の目標は航空・地上両部隊となる。そのような最悪の結末を回避するためにも、そのまま砲撃の的として徹するしかなかった。

『スキーズブラズニルは全体的に魔力障壁を張っていて、神秘を扱える私たちしか突破できない。そこで、私たちはここで分散して各スキーズブラズニル内に侵入、その巨体を支えるコアを破壊する。コアは確か操舵室にあるはずだから、発見次第、即時破壊ってことでよろしく!』

シャルロッテは、なのは、フェイト、アギトとユニゾンしているシグナム、リインフォースⅡとユニゾンしているヴィータへとそう告げる。そして、彼女が憶えている“スキーズブラズニル”の見取り図データを“トロイメライ”から各デバイスへと送信する。受信を終えたことを確認したなのは達はそれぞれ『了解』と返し、5人は一斉に散開して戦場へと向かおうとする“スキーズブラズニル”の甲板へと突撃していった。

・―・―・―・―・―・

――スキーズブラズニル1番艦・甲板。

水色の刀身を持つ長刀型デバイス“トロイメライ”を手にしたシャルロッテは、一対の真紅の翼を羽ばたかせ、“スキーズブラズニル1番艦”の障壁を突破して甲板に降り立った。全長2000m、全幅300mの巨大帆船“スキーズブラズニル”。その操舵室のある内部へと進入するために、甲板を歩きだそうとしたとき、“ガジェット”Ⅰ型とⅢ型、その数40機が姿を現した。

「・・・面倒だし、時間も掛けられないから手早く終わらせてもらうよ。トロイメライ!」

≪Explosion≫

炎牙(フェア)・・・」

≪Verbrennen≫

崩爆刃(ブレンネン)!!」

真紅の炎を纏った刀身から放たれる、爆発力の高い炎刃の一閃が甲板目掛けて打ち込まれた。直後、甲板は船体を揺らすほどの大爆発を起こし、迫り来ていた“ガジェット”群もろとも甲板は内部へと崩れ落ちた。

「あ~あ、結構もろいな。やっぱりオリジナルに遠く及ばないレプリカか。そりゃそうだよね。8隻も召喚すれば、1隻に対する神秘も脆くもなるか」

崩壊に巻き込まれないように宙に避難していたシャルロッテは“トロイメライ”を右肩に担ぎ、ゆっくりと降下、ずっと奥に青く光るコアを見つけた。

「はい。これでまずは1隻。げ~きちん♪」

≪Explosion≫

シャルロッテはカートリッジを4発連続ロードし、“トロイメライ”の刀身に漆黒の影を纏わせる。


凶牙(シャッテン)・・・奈落刃(ヘレ)!!」

そして大きく振り上げ、術式名の叫びと共に振り下ろした。振り下ろされた刀身から7つの影の刃が螺旋を描きつつ、真っ直ぐにコアへと向かって、コアを粉砕した。それから数秒、“スキーズブラズニル1番艦”の船体が大きく揺れ始め、高度を徐々に落としていく。シャルロッテは崩壊に巻き込まれないために脱出。

『えーっと、キャロかルーテシア、聞こえる?』

“アギラス”相手に戦っているキャロとルーテシアに念話を入れる。彼女は2人に対しあるお願いをした後、次の“スキーズブラズニル6番艦”へと目指す。そして、“スキーズブラズニル1番艦”は地面に沈む前にボロボロと崩れ去り消滅した。

・―・―・―・―・―・

――スキーズブラズニル2番艦・甲板

なのははシャルロッテのカートリッジを1発ロードして、“スキーズブラズニル2番艦”の障壁を突破、甲板へと降り立った。直に降り立って「大きい・・・」と、その大きさを改めて実感していた。

「レイジングハート。シャルちゃんから貰った見取り図から見て、操舵室はどこ?」

≪ここから船尾へと向かって距離800m。ちょうど船体の真ん中です≫

なのはは“レイジングハート”からの返答に思案している。そんな中、前方から“ガジェット”の群れがこちらに向かって来ているのが見えた。

「レイジングハート、ここからガジェットとコア、纏めて撃ち抜ける・・・?」

≪もちろんです。マスターと私の前に撃ち貫けぬものなどありません≫

なのはの問いに自信満々で答える“レイジングハート”。

「あはは、そうだね。それじゃあディバインバスターで一気に決めるよ・・・!」

それを聞いたなのはは、戦時下でありながら笑みを零した。そしてなのはのディバインバスター・エクステンションによって、“スキーズブラズニル2番艦”は沈んだ。

・―・―・―・―・―・

――スキーズブラズニル3番艦・内部

“スキーズブラズニル3番艦”内部を、黄金の閃光が目にも留まらぬ疾さで翔ける。フェイトも他のメンバー同様にシャルロッテのカートリッジを1発ロードして障壁を突破、そのままの勢いで内部へと突撃していた。

「バルディッシュ、操舵室まであとどれくらい・・・?」

≪このまま直進。距離400m≫

「ん、了解」

通路を全速力で飛行して操舵室を一直線に目指すフェイト。そんな彼女の前に“ガジェット”のⅢ型が姿を現す。

「プラズマランサー」

≪Get Set≫

「ファイア!!」

フェイトは一瞬の迷いも見せずに、前方の“ガジェット”Ⅲ型へと5発のプラズマランサーを射出。神秘対策の無い“ガジェット”は、AMFを展開していたにも関わらず防げず、フェイトの攻撃を受け爆散した。フェイトはスピードを落とさずに直進、そして広い操舵室へと辿り着いた。

「これがコア・・・」

フェイトの目の前に、細長い正八面体の青いクリスタルが浮いていた。フェイトは“バルディッシュ”をザンバーフォームへと変える。

「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

――ジェットザンバー――

コアへと全力の振り下ろしの一撃を叩きこんだ。火花を散らし拮抗する黄金の刃とコア。そしてパキンッと音が操舵室に響き、コア全体にヒビが走っていく。フェイトは任務完了と判断して、すぐさま“スキーズブラズニル3番艦”から脱出するために、操舵室を後にした。

・―・―・―・―・―・

――スキーズブラズニル4番艦・甲板

「アイゼン!」

≪Schwalbe Fliegen≫

ヴィータは甲板上に群がる“ガジェット”に、魔力を纏った誘導操作弾シュワルベフリーゲンを精確に打ち込んで、次々と爆散させていく。さほど時間を掛けずに1機残らず掃討し終えて、ヴィータは「うしっ」甲板へと降り立った。

『ヴィータちゃん、カルド隊との戦いを前に無茶してませんか?』

「心配すんな、無茶なんてしてねぇよ。それよりさっさとコイツを沈めねぇと・・・」

リインフォースⅡにそう返し、ヴィータは見取り図を面前に展開。すぐ真下にコアのある操舵室があることが判明。

「なんか楽な仕事だったな。まぁその方が助かるんだけどさ」

『そうですねぇ。でも、油断はダメですよ?』

「判ってるよ。アイゼン、ギガントフォルム」

≪Jawohl. Gigant form≫

“グラーフアイゼン”を小型のギガントフォルムへと変えたヴィータ。そして目の前に、自身の頭部以上の大きさを持つ鉄球を作り出し、頭上に飛ばす。

「そぉぉらぁぁぁぁッ!!」

≪Komet Fliegen≫

真紅の魔力を纏った鉄球を、ギガントフォルムとなっている“グラーフアイゼン”のヘッドで打ち出す。打ち出されたコメートフリーゲンは甲板を突き破り、ヴィータの足元に位置する操舵室、そのコアへと一直線に進み粉砕した。

「よっしゃ! 次だ!」

『はいですっ!』

その様子を、眼下に出来た穴から見たヴィータとリインフォースⅡは「次!」と、ゆっくりと崩れゆく“スキーズブラズニル4番艦”を後にした。

・―・―・―・―・―・

――スキーズブラズニル5番艦・甲板

シグナムは足元に展開したベルカ魔法陣の上で目を瞑り、眼下に存在する“スキーズブラズニル5番艦”の操舵室、そこにあるコアへと意識を集中していた。
彼女が手にしているのは、大型の弓となった“レヴァンティン”。遠距離戦闘用の形態ボーゲンフォルムだ。
甲板には、バラバラに切断された“ガジェット”の残骸が散らばっている。シグナムは障壁突破と同時に甲板に群がっていた“ガジェット”を、シュランゲフォルムの“レヴァンティン”で一掃していた。

「翔けよ、隼・・・!」

シグナムはゆっくりと魔力で出来た弦を引く。そして彼女の右手に、もはや槍とも言っていい長さの矢が生まれる。狙うべきは操舵室にあるコア、ただ一点のみ。シグナムの双眸は、たとえここから視認できずともしっかりとコアを認識した。

≪Sturm Falken !!≫

そして矢は放たれた。一直線にコアへと突き進み、何の対抗も受けずにシュツルムファルケンはコアを射抜き粉砕した。

『おお! さっすがシグナム! 何でも出来るんだな!』

「お前が私と共に居てくれたからこそだ。コアを失った以上、このスキーズブラズニルはそう長くはないだろう。急いで離れるぞ、アギト」

『おうよ!』

アギトは嬉しそうに応え、シグナムは激しく揺れ始めた“スキーズブラズニル5番艦”から離脱した。 
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