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夢幻水滸伝

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第百十六話 荒ぶる善その十三

「何度話をしてもな」
「合わんな」
「そうだな、しかしだ」
「ああ、こうして一緒に飲むお酒もお刺身もな」
「美味いな」
「ほんまにそやな」
「それでそっちはどうだ」
 日毬は山葵を刺身で包んでそれを食べつつマリーナに問うた。
「今は」
「枢軸のことか」
「圧政と敷いていると聞いている」
「聞こえが悪いな、力と法律で治めてるだけや」
 マリーナも刺身を食べる、だが彼女は山葵を醤油の中に溶かしているのでその食べ方は違っている。
「それだけや」
「歯向かう者には容赦しないな」
「そんな連中許してたら国が収まらんしな」
「そこでそう言うのがロシアだな」
「こっちにはこっちのやり方があるんや」
 マリーナは平然として返した。
「そっちもそれは同じやろ」
「日本の統治とは違うというのか」
「というかその二つがないとや」
 力と法律がというのだ。マリーナというか枢軸では法律よりもまず力があってこそという考えなのだ。
「あかんやろ」
「力なき正義は正義ではないか」
「法律もな」
 こちらもというのだ。
「力なくしてどうして従わせられる」
「それを言うとな」
「そっちもやろ」
「そうだ、だがその力はな」
「心でかいな」
「制御するものだ、法律にもよってな」
 日毬は法律を上だ、力ではなく。
「そうするものだ」
「法律が先かい」
「即ち心がな」
「そういうのを正しゅうしてからか」
「力があるべきだ」
「力があってそれで心やないか」
 マリーナはおちょこで酒を飲んで言った、ここで日毬はマリーナにすぐに酒を入れた。実は酒はお互いに入れ合っている。それも無言で。
 その日毬から酒を受けてからだ、マリーナはまた言った。
「それは自分だけやないな」
「太平洋と地下世界の者はな」
「そやな、甘いな」
「力を第一にしていないからか」
「結局力がないとな」
 マリーナは確信している顔で言った、目にも感情が出ているが日毬と同じく赤目族であるが故にサングラスをかけているのでそれは傍目にはわからない。
「しゃあないわ」
「何もならないか」
「そや、こっちの考えやとな」
「完全に意見が違うな」
「そやな、いつも通りな」
「まさに水と油だ」
「水やなくてお酢やったらよかったけどな」
「それだとドレッシングだ」
 日毬は酢のものを食べつつ言った、野菜と蛸をそうしたものだ。見ればマリーナもその酢のものを食べている。
「それはそれでいいが」
「水やないっていうんやな」
「ここで言うな」
「そうか、ほな今は引っ込めるな」
「そうしてくれ。だがな」
「だが?何や」
「民を虐げていないことも聞いている」
 日毬は天婦羅の中の烏賊を食べた、これも実に美味かった。
「枢軸ではな」
「アホ抜かせ、そんなことはや」
「しないな」
「誰がするんや」 
 マリーナは豆腐を食べつつ怒って言った。
「そんなこと」
「枢軸でもだな」
「あのな、うちも他のモンも弱いものいじめはせんわ」
「決してだな」
「いじめってのは屑のすることや」
 マリーナは忌々し気にこうも言った。 
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