八条学園騒動記
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第五百四十一話 研究室に戻ってその十二
「しかしな」
「それでもだったんだね」
「苦労して作風も変えたりしてな」
「やっていたんだ」
「締め切りとか逃げたこともあった」
「それやったら駄目だよね」
作家としてとだ、タロは言った。
「流石に」
「うむ、しかしな」
「それでもなんだ」
「霧隠才蔵という仇名もあった」
「隠れるのが上手だからか」
ライゾウはその仇名の由来がすぐにわかった。
「だからか」
「そうであった」
「そんな一面もあったのかよ」
「常に何本もの連載を抱えておってな」
このことは亡くなるまでだった。
「それでじゃ」
「現行の締め切りに間に合わないこともか」
「あってな」
「逃げたこともあったんだ」
「しかし結局最後はな」
「描く人だったんだな」
「誰よりも漫画を愛しておった」
何はどうでもまずはこうだったというのだ。
「それが為に死の床にあってもな」
「描いていた」
「そうだったんだ」
「残念ながら本人が完結させられなかった作品もあった」
作者自身が死去したせいでだ、手塚治虫にもこうした作品があるのだ。ネオ=ファウスト等がそうだ。
「あと雑誌が休刊か何かしてな」
「それでか」
「未完のままだね」
「ずっとそのままの作品もあった」
「そんな作品もあったのかよ」
「何か嫌だね」
「わしもそう思う」
まさにとだ、博士もこう答えた。
「また言うが作品はな」
「完成、完結させてか」
「命を持つんだね」
「左様、だから手塚治虫作品にしても」
「完結させてない作品がある」
「そのことは残念なんだね」
「打ち切りでもよい」
博士はこれもいいとした。
「どうであっても完結しておるからな」
「それでもよくて」
「とにかく未完は駄目なんだね」
「そうなのじゃ、多くの作品を終わらせた人だが」
「未完の作品もある」
「そういうことだね」
「左様じゃ、まあその話は後にして」
博士はまた話した。
「そろそろ降下じゃ」
「旅が終わって」
「それでだね」
「さて、今度の旅は肥前星系の長崎に行って」
次の旅行のこともだった、博士は話した。
「ハウステンボスに行くか」
「確かそこオランダの街だよな」
「昔のあの国の雰囲気を再現したんだったね」
「それで今もその雰囲気のままじゃが」
「何かあるのかよ」
「そのままでも」
「建物はオランダでも日本の雰囲気が強いのう」
それはあるというのだ。
「やっぱり日本にあるからのう」
「まあそこはな」
「仕方ないね」
二匹もそれは仕方ないとした、そうしてだった。
メカラドンは降下し博士は遂に神戸に戻った、着陸した地点は研究所のすぐ傍で歩いて帰ることが出来た。そして研究室に入ったのだった。
研究室に戻って 完
2019・9・24
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