怨恨
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第四章
「うわ、凄いな」
「天霧さんいや今は東さんか」
「東さんすらってしてるね」
「お顔も身体も」
「凄いね」
「・・・・・・・・・」
由美は周りの声に応えなかった、そうしてだった。
すすすと前に出て同窓会が開かれるパーティールームに入った、皆そんな彼女を見て首を傾げさせてしまった。
「挨拶なし?」
「何で?」
「褒めたのに」
「どうして?」
誰もが無視されたことに首を傾げさせた。
「悪いこと言ってないのに」
「今もすらっとしてるって」
「そう言ったのに」
「どうしてなんだ?」
「私達無視されたの?」
このことがどうしてもわからなかった、だが同窓会のはじまる時間になり皆部屋に入った、そこで店の料理や酒を楽しみつつだった。
皆であれこれ話をした、高校時代の昔話を。それは彼等にとっては甘酸っぱくも懐かしいいい思い出だった。
だがその話の間も由美は話さない、それで彼女の隣の席だった岡部友子が彼女にビールを飲みつつ話をしてきた。
「あれっ、東さん白ワインなの」
「・・・・・・・・・」
由美は友子の質問にも無視だった。
そうしてワインを飲み料理も鍋の中の野菜や鶏肉ばかり食べている、それで友子はそのことも言ってきた。
「唐揚げ頼む?美味しいわよ」
「ビールも飲もう」
「折角久し振りに会ったんだしね」
こう親し気に声をかける、それでも返事がないので。
友子はたまりかねて彼女に昔の話をはじめた。
「私達一学期の時隣同士の席だったよね」
「うっせえデブ」
ここで由美ははじめて口を開いた、だが。
その言葉は静かだが敵意と憎悪に満ちたものだった、その声で言うのだった。
「手前昔私に何言った」
「えっ!?今何て」
「手前ずっと隣から私にデブだの臭いだの言ってたよな」
「そんなこと言わないわよ私」
友子は今現在の自分の高校時代の記憶から答えた。
「そんな酷いこと」
「私は覚えてるんだよ」
由美は友子に憎悪に満ちた目を向けて彼女の高校時代の記憶から話した。
「全部な」
「だからそんな酷いこと」
「毎日言ってただろ、それが今どうだよ」
由美は自分の記憶を必死に辿りつつ答える友子にさらに言った。
「ブクブク太りやがって、デブは手前だろ」
「デブってそんな」
「デブは手前だよ、手前女のデブは見苦しいって言ったよな」
「だから言ってないわよ」
「言ったよ、手前は覚えてなくてもな」
それでもというのだ。
「私は覚えてるんだよ」
「私が言ったって」
「臭いだの夏になったら暑いだのな、私が傍にいたら」
「だから言ってないって」
「言ったよ、私は全部覚えてるんだよ」
「言ったの、私が」
「そうだよ、いつもいつもな」
友子に今も掴みかかりそうな感じで言っていた。
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