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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第二十話




――場所はバンエルティア号の甲板。そこで僕は、今木刀を構え、目前に立っている相手に踏み込む瞬間を待っていた。


「――……どうした?打ち込んでこないのか…?」


「――……ッ」



いや、訂正しよう。打ち込めずにいた。正直、今までよくクラトス師匠に打ち込みにいったな、と言いたいくらい、今目前に立つ人は凄まじい威圧を放っていた。
改めて……クラトス師匠達がいまだ本気でないのを再確認と、自分より遥か上に立つ人の実力差が分かった。


「来ないなら…此方から行くぞ」


「――く…ッ」


そう言って構えたと同時に更に相手から吹き上がるように出る威圧。
くっ……兎に角対応しないと…!


「――光龍槍っ!」


「っ……魔神剣・双牙ァッ!!」


相手の剣から真っ直ぐとこちらに向け放たれた光の矢をなんとか避け、そのまま斬撃を放つ。




「――ふんっ!」


だが、相手はその二つの斬撃をいとも簡単に…剣一振りで相殺した。何あれ、チートっ!?

――だけどそれは少なくとも予想の内だ。


「――ハァァァァァッ!!」


先程の魔神剣・双牙はあくまで相手に接近する為に先行させた囮。魔神剣が相殺される瞬間まである程度近付き、相殺された瞬間、一気に接近して木刀を力の限り奮う。

――だが…


「――…ほぅ……中々考えた物だ」


「――……な…っ!?」


振った木刀は相手に当たる前に、いつの間にか体勢を戻した剣で防がれる。


「くっ……ハァアァァッ!!」



防がれたと分かった瞬間、今動ける限りで木刀を振るい、連撃として相手に打ち込もうとする。
この距離で防がれた以上、攻めるしかない。後退の隙を見せた瞬間にやられてしまう。

だが、その連撃も、相手はいとも簡単に防いでいく。


「――ふむ……私のこの距離から即座に後退という判断を選ばなかったのはよし。打ち込みの箇所も、大ざっぱに見え、的確に相手の急所になりかねん場所を選んでいる。中々、いい判断だ。だが――」



相手がそう言った直後、防ぎに回っていた剣が大きく振るわれたと思った瞬間、大きな風圧を感じ、その勢いで木刀が手から離れてしまう。
ッ……しまった!


「――まだまだ、あまいっ!!」

「――がアッ!?」


相手のその声が聞こえた直後、腹部に何かが触れた感覚と強い衝撃を感じ、僕の身体は勢いよく吹き飛び、甲板の地面へと打ちつけられた。



―――――――――――――


「――ふむ。戦ってみて分かったが、君はまだまだ強くなれる。中々、楽しみだ」


「――…はい。ありがとうございました」



僕は改めて、先程まで模擬戦の相手をしてくれていた、新しくアドリビトムに入った、『ジアビス』のヴァン・グランツさんに礼をする。

正直、この人が来たときは本当に驚いた。
それで、僕はヴァンさんに模擬戦を頼んだのだ。結果は惨敗。文字通り手も足も出なかった。
しかも多分……ヴァンさんはまだ本気じゃないだろう。
本当にチートじゃない、この人?






「君の戦い方は中々だと、私は思っている。それこそ来て数日だが、このギルドの皆が君の事をよく話す訳が分かった。……良ければ、ルークやアッシュとも戦ってやってくれ」


「はい……。あの……手も足も出せなかったのにこんな事言うのはアレですけど……良かったらまた、模擬戦お願いしてもいい……ですか?」


僕の言葉に、ヴァンさんは小さく笑みを見せた後頷いた。
正直、確かに手も足も出せないくらいの惨敗だったけど……これから闘っていくにはきっとこのくらいの強さが必要……なんだろう。

今はまだ自分にとっては遥か遠く、高い相手だけど……超えたいと思った目標がもう一つ、増えた。



―――――――――――――


「霊峰アブソール……?」


「ん……そこに精霊が居る……みたい」


僕の問うような言葉に、メリアは小さく頷いてそう応えた。
なんでも精霊が『霊峰アブソール』という場所にいる事が分かったらしく、今メリアが向かうメンバーに僕を入れようとしている所であった。

精霊、か……。と、言うとやっぱり氷のセルシウスだろうか…?もし、そうだとしたら……前作のように、彼女の…メリアの正体がディセンダーだと、分かられてしまう場面だろうか。


「……分かった。じゃ、一緒に行くよ」


僕の言葉を聞くとメリアは嬉しそうに一度頷いた後、アンジュにメンバーが決まった事を伝えに行った。

もし、メリアの正体が精霊に分かってしまうなら、僕の事ももしかしたら……分かられてしまうかもしれない。
もし、分かられてしまったのなら……その時はきっと……皆に話さないといけないのだろう。



―――――――――――――


――霊峰アブソール…。




うん……精霊でセルシウスまで思い出せてたんなら、何故僕は肝心な事を忘れてたんだろう……。


「――……寒っ」


「……うん……寒いね」



霊峰アブソールは絶賛、辺り一面が雪景色でした。
あまりの寒さにそうぼやいてしまう僕とエミル。


「…そうか?そこまでひどい寒さじゃないと思うけど」


「……別に…寒く…ない……」


それに対して寒さなど特に気にしてない表情で僕達の前を歩くカイウスとメリア。
うん……メリアはともかくカイウス、君はその服装で何で寒くないのさ…?


「ふ、二人とも凄いね……」


「そうか?まぁ、俺の場合はいざとなったら獣人化して毛皮まとえるしな」

「そう言えば、カイウスは獣人に変身出来るリカンツだったね……それもあるのかな?それにしても、初めて変身した姿を見た時はびっくりしたな」


「俺は、エミルが闘う時に出る妙な人格の方がびっくりしたけどな」


「あぁ、それは僕も同意出きるかも…」


「うぅ…ご、ごめん…」


カイウスの言葉に思わず同意して言ってしまうと、エミルが申し訳無さそうにそう言って俯いた。






「いや、もう俺達は付き合い長いから慣れたけどさ。それに、アドリビトムには人間だけじゃなくて、色んな種族がいるから、誰が珍しいっていうのはないよな」

「…そうだね。それに、種族の差を感じないし。……精霊も、そうかな?ヒトとあまり変わらないのかな」


「どう、だろうね……。僕のイメージ的にはヒトに似てそうな気がするけど」


エミルの言葉に僕は少し考える仕草を見せてそう応えた。因みに僕のイメージしたのは言わずもがな、セルシウスである。


「ヒトと心を通わせてくれるのかな…。僕は…、不安だな。何かありそうな気がするし…」


「エミル……何か不吉な事を言うのは止めとこう。色々、不安になる」


「ぁ、ごめん……」


僕の言葉にエミルは再び申し訳無さそうにそう言って、僕達は再び歩き出した。

そして、 エミルのこの発言が見事に的中する事を、この時はまだ知らなかった。




―――――――――――――


寒さと降り積もった雪と現れる魔物を抜けて、漸く山頂につくと、そこには上手くは見えないが、確かに人影があった。


「だ、誰かいるよ…」


「精霊……じゃ、無い……」


「でも、アンジュさんの指示じゃ目的地はここなんだけどな。あの人に聞いてみるか」


カイウスの言葉に全員が頷くと、その人影に歩み寄っていく。
近付いていく毎に徐々に見えてきたのは、その人影の後ろ姿と長い、赤の髪。あれ……でもあの服装……何かで見たことあるような……。


「あ、あの……すみません…。…精霊を探しているんですけど……」


「――精霊を探している、だと?」


エミルの言葉に反応し、振り返った姿に、思わず僕は少し驚いてしまう。
そうだ、この人は確か『ラタトスク』の……リヒター・アーベントだ。


「…あ……、…その、僕達は…ギルドの者で…精霊を……探していて………」


「精霊に会わせる事は出来ない。早々に立ち去れ」


リヒターさんの剣幕に、エミルは恐る恐ると要件を述べるが、リヒターさんはそれを直ぐ様その、応えた。


「でも、俺達は精霊に聞かなきゃいけない事があるんだよ。話がしたいだけなんだ」


「話だと?――そんな嘘は、今まで訪れた者は皆言っていた」

カイウスの言葉に呆れたような溜め息を吐いた後そう言葉を出すリヒターさん。

嘘って………どういう事…?


「あの、すみません。……嘘って…一体…」


「惚ける気か?お前達の目的は、精霊を捕らえ星晶がある場所を探知させる為に利用したいだけなのだろう?」


……まさか……盛大、疑われて勘違いされて……ます?







「い、いいえ……そんな事は…、絶対に……」


「精霊を知ってるんだな?あんたこそ、何者なんだよ!」


リヒターさんの威圧に、恐る恐るながらエミルが弁解しようとした所で、カイウスがそう言って前に出た。

ちょ、カイウス!その言い方じゃ更に勘違いされて……


「俺は、リヒター・アーベント。ここにいる精霊と契約し、この地と精霊を守る者だ。精霊に会いたくば、俺に勝ってみせろ」


そう言ったと同時に、武器であろう斧と剣を構え、此方を睨んできたリヒターさん。
うわぁ……やっぱり、こうなるのか…。


「そういう事か。よし、行くぜ!みんな!」


そして、更に勘違いさせてしまった原因の彼は、俄然やる気で武器を既に構えてた。


「あ、え、あの……」


「エミル……諦めて戦おう。カイウスの事は…後でルビア辺りに言ってたっぷり痴話喧嘩してもらおう」


「……とにかく……戦う…」

いまだ上手く状況を理解出来ないエミルにそう言うと、僕達は武器を構える。
うん、カイウスには絶対、後でルビアと痴話喧嘩してもらおう。

ただ今から闘うのは……確実に気を抜けない相手だという事だ。


――こうして、精霊を巡る戦いは始まった―





 
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