緋弾のアリア 〜Side Shuya〜
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第1章(原作1巻) 緋色の改革者(リフォーマー・スカーレット)
第03弾 〜Finishing battle(決着)〜
前書き
第3話です。
彼女が驚きの声をあげると、周りも驚きの声をあげた。
武偵高で逆刃刀を持ってるのが珍しいのだろう。そんなに騒ぐ必要もないと思うがな。
「……あんた珍しいもの使ってるのね」
「そうか? そんなに逆刃刀が珍しいのか?」
「防刃服を身に纏ってる武偵が殺傷能力の無い近接武器を使うなんて稀なことでしょ?」
「確かにそうかもな。だが、武偵法の中で何を使おうと個人の自由じゃ無いのか?」
「それもそうね」
彼女は俺の言葉に頷いた。
「でも、逆刃刀だからって舐めてもらったら痛い目見るぜ!!」
辞めろ……こっちの俺。好戦的になるんじゃない。俺はもう嫌なんだ……。
そんな思考とは別に、俺は両手に持った逆刃刀を構えて彼女に迫って行く。彼女は再び小太刀を構えなおして迎え撃つ体勢をとる。
近づいた俺は、右手に構えた刀で右から左へと、横一文字に斬りかかる。
彼女は左手の小太刀を受け止める形に構える。
「これで!」
「クッ……!」
そして、互いの刃が火花を散らしながらぶつかり合った。
「そこだ!」
火花が散った瞬間すかさず左手の刀で再び斬りかかる。
その瞬間、俺の頭の中を光の速さである一つの記憶が駆け巡った。
「ッ?!」
「?!」
その記憶は、思い出したくもない。バーストモードと抜刀を封じる原因を作った出来事。その時、鈍った思考で俺は納得していた。
———これは、あの時のことを……ッ!!
トラウマになった出来事を断片的であるが垣間見た。
「———隙だらけよ! その一瞬が命取りになる!!」
「———ッ!?」
その言葉で現実に引き戻された。そして次の瞬間、俺の手元にあった二本の逆刃刀が弾き飛ばされていた。
そう、今の一瞬の隙に彼女が弾き飛ばしたのである。
一瞬の隙に起こった出来事を脳が処理し切る前に、彼女は斬りかかってきた。
———ガキンッ!
その攻撃を、彼女の渾身の一撃を、俺は手首で押さえていた。そしてそのまま、小太刀を押し上げ間合いを取り、両腕のYシャツと学ランの袖の間からあるものを取り出した。それは———折りたたみ式の、トンファーである。
トンファーを左右の手に構えた俺は一旦落ち着くためにその状態を維持した。
対する彼女は俺の様子を見るためかこちらを向いて小太刀を構えたままである。
そして、呼吸が整ったと感じたあたりで一気に詰め寄った。素早く詰め寄った俺はそのままの勢いで一気に突きを数発繰り出す。そのうちの1発が彼女の左肩の端の方を捉えた。
「……ウッ!! この!!」
彼女が唸るような声を出していたが、すぐさま小太刀で反撃してきた。
左手に持ったトンファーがガキンという音と共に弾かれ、空中を回転しながら、後方の地面に突き立った。
「……チッ」
それを見ることしかできない俺は、舌打ちしながらすぐさま切り替える。
しかし俺は、右手に残ったトンファーのみで二本の小太刀を去なさなければならない。
二本の小太刀を去なしながら、俺は後退して行く。容赦のない連撃、隙が全くと行っていいほど無い。これは気を抜いた瞬間にやられる。
しかし俺もただ守っているだけでは無い。策は講じてある。だが、これはほとんど賭けといってもいいことである。
それでもやるしか無いのだろう。その為にタイミングを計っていた俺は、ある程度のところで地面を思いっきり蹴って後退し、連撃を潜り抜けて1メートル程後ろに下がり再び地面を蹴って相手の方へ向かって行く。
「これでもくらいなさい!!」
「ほっ!」
彼女の放つ攻撃を俺は神回避で避ける。
そして、俺はトンファーの持ち手を離し端の方を掴んで、地面に突き立っているトンファーに思いっきり突き立て、棒高跳びの要領で彼女を飛び越えた。
飛び越えた、つまり成功。俺はこの賭けに勝ったのである。そして飛びながら周囲に視線をやる。
その光景を見た一同は騒然としていた様子だった。
俺が飛んだ先にあるものそれは、さっき弾かれた二本の刀。
それを掴もうとする俺に彼女が勘付いた。
「そうはさせない!」
彼女はそれを阻止するべく、小太刀を持って向かってくる。
それに対して俺は、空中で地面の方向に頭を向けたままフルオートのDEを抜いてそのまま発砲した。この射撃で、俺の所持していた銃弾が底をついた。
「しまった!」
彼女は、予測していなかったようでその弾を小太刀で弾き守る体勢に入った。その、瞬間を俺は逃さなかった。刀を掴んだ俺は、一気に詰め寄りそして彼女の左手の小太刀を防御の上から弾き飛ばした。
「ハァ!!」
そんな甘いガードでこれが防げるわけ無いだろ。
「!?」
瞬間的なことに驚いた彼女はそこで一瞬、硬直していた。
「———やったわね!!」
だが、彼女は硬直が解けると同時に、俺の振るった攻撃に対してカウンターを入れてきた。
次の瞬間俺の右手の刀は、又しても弾かれていた。そのまま、俺たちは同時に持っていた刀を振った。
「はあぁぁぁぁ!!」
「これで終わりよ!!」
お互いの叫び声の後、激しい1つの金属音が施設内にこだました。
「……」
俺は沈黙していた。
「……?!」
彼女は何が起きたのか分からない様子だった。
直後、地面に何かが刺さる音がした。
この時、お互いの持っていた刀は手元に無かった。
今のは刀が刺さった音だ。
「この!!」
彼女は諦めずに飛び掛かってきた。
「……!?」
突然の事に俺は反応できなかった。
呆気にとられているとは言え、硬直が長すぎた。
ここでようやく思考が起動した俺は彼女の攻撃を防ぐための方法を考える。しかし、何も思いつかない。
そして彼女が徒手格闘で俺に触れるその瞬間———キーンコーンカーンコーンと昼休み終了のチャイムが鳴った。
今、お互いの手元に武器は無いが二人とも立っている。
つまりこの試合———引き分けである。
後書き
今回はここまで
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