夢幻水滸伝
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第百十一話 北極と地下世界その十二
「イギリスから出てはじめて美味を知ったとな」
「カレーは美味いで」
「カレーはインドの料理だ」
その元はというのだ。
「イギリスで変わったとはいってもな」
「カリーがな」
「だからそれは言うな」
カレーはというのだ。
「というかイギリス人はカレーばかり食べていないか」
「他に食うもんがないとな」
「そして朝食とティ―セットだな」
「マクドナルドもあるで」
「それはアメリカ」
「中華街は美味しいもんがあるわ」
「それは中国だ」
玲子の突っ込みは容赦がない。
「結局ないではないか」
「ダウンタウンもそういえばな」
「美味いものがなかったな」
「そういえばな、けれど日本に来て」
そして住む様になってというのだ。
「食生活が変わったわ」
「やはりそうだな」
「お米が主食になって」
日本はこちらが主食なので当然のことだ、尚先進国は皆パンだの米を食べると頭が悪くなるだの言っていた東大教授がいたがこの教授は何処からか金を貰っていたという、戦後日本の知識人の腐敗の一旦であろう。
「生ものもお味噌汁も食べる様になって」
「梅干しもだな」
「納豆もな」
こちらもというのだ。
「食べる様になった」
「それは何よりだ、だが私は納豆は」
玲子はこの食べものについてはやや微妙な顔になってこう述べた。
「子供の頃苦労した」
「今では普通に食べていないか」
「それはそうだが」
日毬にもややバツが悪そうに答える。
「しかしだ」
「子供の頃はか」
「あの匂いと糸がだ」
どうにもというのだ。
「抵抗があってな」
「関西でも結構食べる様になったというが」
「私の親の世代からようやくな」
大体その辺りからとのことだ、関西でも納豆がよく食べられる様になったのは。
「そうなったそうだが」
「それでもか」
「私はだ」
玲子自身はというのだ。
「子供の頃苦労した」
「そうか、関東ではな」
日毬はこちらの地域の者として話した。
「納豆は普通だが」
「朝もよく食べるな」
「この学園の食堂と同じくな」
そうなっているというのだ。
「私もよくだ」
「朝はか」
「納豆に味噌汁、漬けものに鮭かメザシだ」
こうしたメニューだったというのだ。
「贅沢だな」
「そうだな、確かにな」
「その朝食でだ」
「一日をはじめていたか」
「納豆はだ」
まさにというのだ。
「一日のはじまりに最高だ」
「そうだな、だがな」
「中々か」
「納豆には馴染めなかった」
「あのですね」
ここで横溝がこう言った。
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