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代々江戸っ子でも

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第一章

               代々江戸っ子でも
 海音寺里美は代々それこそ曾祖父どころか少なくとも明治の頃から葛飾に住んでいる生粋の江戸っ子である。もう骨の髄までのそれである。
 だが彼女の仕事先は秋葉原だ、しかも。
 メイドで有名な子の店だが漫画やライトノベル、同人誌を売っている本屋の店員である彼女の外見は黒髪を文字通りパツキンに染めて派手なメイクに化粧をした誰がどう見てものギャルだ。よくその外見を店長に言われる。
「海音寺さんその恰好は」
「あたしのポリシーってことで駄目ですか?」 
 ギャルの口調だがニュアンスは江戸っ子のそれでの返答だった。
「これは」
「高校かららしいね」
「ガクチューの頃からです」
 つまり中学生の時からというのだ、今は店の制服であるズボンにブラウスにエプロンだがイヤリングやブレスレット等のイヤリングに仕事柄本を持ったり運ぶことが多いので短くしている爪もアートが施されている。
「それで今もです」
「その恰好だね」
「仕事は祖父ちゃんの教えで手ェ抜かないんで」
 大工をしている祖父の、というのだ。
「安心して下さい」
「仕事振りはいいよ」
 このことは店長も認めた。
「それは。けれど秋葉原にね」
「ギャルはですね」
「メイドの街だからね」
「それとアイドルですね」
「まあ個性はそれぞれだけれどね」
「たまには違う毛色もいいってことで」
 店長に納得してもらってそのうえで真面目に働いている、本屋の店員としては優秀で店長からも他の店員からも頼りにされている、常連客からの評判もいい。 
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