| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ダンジョンに邪魔だゴッ太郎がいるのは間違っているだろうか

作者:咲さん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 次ページ > 目次
 

始動するゴッ太郎

 
前書き
一時期Twitterで話題になった【牛乳のひみつ】という漫画の二次小説です 

 
俺の名前は蛇間駄 後太郎。以前は牧場に勤務していた。牛を殴りたくて殴りたくてしょうがなかった俺は牛を殴る事を日課の楽しみにしていた。
当然周りにバレないように細心の注意はしていたつもりだった。
しかし何故か牛への虐待がSNSで拡散され、俺は牧場をクビになる羽目になってしまった。牧場主同士でのネットワークがある為、他の牧場で雇われるのは難しいだろう。牛を殴る事を生き甲斐にしていた俺は気軽に牛を殴れなくなってしまった事に絶望し首を吊りその生涯を終えた。


「……さい」
「目…さい」
「目覚めなさい」


その声で目が覚め、周りを見ると何もない真っ白な空間だった。目の前に目を向けると人間とかけ離れた美貌の持ち主がいた。
「貴方はお亡くなりになりました」


当たり前だ。首を吊ったのだから。


「貴方は選ぶ事ができます。1つ目は輪廻転成の輪に戻り新たな生を選ぶ事。もちろん記憶は残りません。」
「2つ目は地獄に堕ち終わらぬ責め苦を受け続ける事。」
「3つ目は異世界に転生して記憶を持ったまま新しい人生を歩み続ける事です。」

「異世界への転生?」

「はい。記憶を持ったまま好きな世界を選び生き直す事が出来ます。」

「なら牛を好きに殴れる世界に俺は行きたい‼︎」

「特典などはどうしますか?」

「牛を殴れれば何でも良い!適当に決めてくれ!」

「分かりました。それではよい転生を」

女神は思う。かつて人類史上ここまで牛を殴る事に執着した人間がいただろうかと。彼の人生を覗き見たが牛を憎むようなエピソードは特になかった。幼少期、物心付いてからあったのは牛を殴りたいという純粋な欲求のみ。まるで牛を殴る為に生まれてきたような人間だ。
(好きに牛を殴れなくなるので彼は恐らくファミリアには入ろうとしないでしょう…自動でステータスを更新する機能を付けておきますか)

なにを隠そう彼の悪行が広まる原因となってしまったSNSの #邪魔だゴッ太郎クソコラグランプリ のタグを面白半分で作ったのは彼女であった。自殺の原因を作ってしまい罪悪感を感じた彼女は少しでも彼の願いが叶いやすくなるよう転生特典を考えるのであった。

ダンまち世界に誰よりも牛を愛し牛を殴る男が転生した。この事によって物語は大きく変わっていく事になる。





迷宮都市オラリオ。【ダンジョン】と呼ばれる地下迷宮を保有し世界の中心呼ばれるに相応しい巨大都市だ。
そんなダンジョンに潜り魔石やドロップしたアイテムなどを売り生計を立てる人間を冒険者と言う。強力なモンスターが蠢くダンジョンはいつ命を落としてもおかしくない。しかし冒険者として名を挙げれば大きな名誉と金銭を得る事ができる為、危険を顧みず冒険者になる若者は後を絶たない。今日もダンジョンで若い命が散ろうとしていた。

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ⁉︎』

「ほぁああああああああああああああああああっ⁉︎」
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬッ!

新人冒険者のベル・クラネルはモンスターに追いかけられていた。
Lv1の自分では攻撃を与える事ができない中層のモンスター《ミノタウルス》
攻撃が通らない以上喰い殺されるのは時間の問題と言えた。
『ヴゥムゥゥンッ‼︎』
振り下ろされた蹄はなんとか躱したが足場が崩れ足を取られてしまう。
ゴッと背中が壁にぶつかる。行き止まりだ。逃げ場はないらしい。
(ああ…僕はここで死ぬのか)
カチカチと歯を鳴らし泣き噦る。
(結局…女の子との出会いなんて無かったな…)
目の前で蹄を振り下ろすミノタウロスを見ながらその短い人生に幕を下ろそうとしていた。

正史であれば剣姫に助けられ恋に発展するのだが、この世界には牛型モンスターに執着するある男がいた。

「「「「「邪魔だ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」」」」」

次の瞬間『ゴッ』と大きな音がしたかと思うと、ミノタウロス上半身が吹き飛び下半身のみとなっていた。

「え?」

状況を理解できずにいる僕と断末魔すら上げられずに死んだミノタウロス。呆然とする僕が見たのは一人の成人男性であった。

鼠色の服を身に纏った平均的な体格の男。ダンジョン内であるにも関わらず帽子をしている。冒険者というより作業員を思い浮かべるその姿。何よりその身体には一切の武器も防具も付けていなかった。ただ、その血に塗れた拳がミノタウロスを倒した方法を物語っていた。

ミノタウロスの死骸を見るその瞳には隠しきれないほどの喜色が見て取れた。

人々の危機に現れ颯爽と敵を倒し、名乗らずに去る。まさしく僕の憧れていた英雄そのもの。僕は煩いほどに鳴り響く胸の高鳴りを抑えながらただ歩き去るその男を呆然と見送る事しか出来なかったのであった。

アイズ・ヴァレンシュタインはそんな現場を後ろからずっと眺めていた。
ファミリアでの遠征の際、ミノタウロスが上層に逃げ出してしまい、その後処理の為に奔走していた。新人冒険者が襲われているのを見かけ、助けようとしたが自分はいらなかったようだ。と思いながら彼について考える。
確かにミノタウロスを仕留める事が出来る者は数多く存在する。しかしタフネスを売りとするミノタウロスの上半身を丸ごと消し飛ばす程の怪力を持つ者が果たしてこのオラリオに何人いるか。

「知りたい…」

最近伸び悩んでいる自分のステータス。彼の力の秘密を知れば何か変わるかも知れない。力に飢えるアイズはその好奇心を抑える事が出来なかった。
横を通り過ぎ、去って行った後太郎を追いかけ声を掛ける。

「…ねぇ」

「あ?誰だお前は」

後太郎は牛を殴り殺した喜びに浸っていたのを邪魔され若干不機嫌ながらも声を返す。

「私は…私はアイズ・ヴァレンシュタイン」

不機嫌ながらも冷静な思考で判断する
(有名冒険者じゃねぇか。揉めると面倒なことになりそうだな…最悪牛狩りにも影響があるかもしれねぇ。愛想良くしておくか。)

「あぁ、かの有名な剣姫さんか!俺みたいな一介の冒険者に何か用か?」

「あなたの強さの秘密を教えて欲しい」

頭が真っ白になった。倒した所を見られたのか⁉︎自分はミノタウロスを倒せば倒すほど強くなります!などと言ってしまったらこの少女は真似してミノタウロスを狩りまくるだろう。そしてその話が冒険者達に知れ渡ったりしたらミノタウロスを狩れなくなってしまう。
誤魔化したとしても自分が牛型モンスターに執着しているのは少し調べれば分かるだろう。
牛型モンスターに何かあるはずだ。と思われてもおかしくはない。
最悪、ロキ・ファミリアにより大規模なミノタウロス狩りが行われてしまう。それはマズい。
かと言って正直にスキルの事を言ったとしてもレアスキルとして知れ渡り、神々達の厄介ごとに巻き込まれ牛狩りの時間が減ってしまう。
(ここで消しておくべきか?)
自分の超パワーを知られてしまった以上、大手ファミリアによる探りは必ず来るだろう。この女とさっきの冒険者を殺し、知らぬ存ぜぬを押し通せば誤魔化せるだろう。と考え行動に起こそうとした。

「邪…」

「おいアイズ!」

行動を起こすその寸前でロキ・ファミリアの冒険者がこちらにやってくるのが見えた。流石に全員を殺し証拠を隠滅し逃げ切るのは無理だと判断し行動をキャンセルする。

「…レアスキルの影響だ。内容は言えないがな」

後太郎に出来たのはそう言い残し立ち去る事だけだった。

「誰だあれ?」

「あっ、ベートさん」

「ミノタウロスは倒したか?」

「ううん。あの人が倒した」

「ああ、アイツか…」

先程横を通り過ぎて行った冒険者を思い出す。

後太郎はギルドや冒険者の間での知名度はかなり高かった。
突如オラリオに現れ、冒険者登録はせずファミリアにも入らず防具も武器も持たず中層のミノタウロスを狂ったように倒している狂人がいると。後太郎は自分の異常性を隠せていると思っていたようだが、血塗れの男が大量にあるミノタウロスのドロップアイテムを換金していく時点で噂になるのは当たり前であった。
それが分からぬ彼は自然と神々の好奇心を集め、厄介ごとに巻き込まれるようになっていく事になるのであった。














蛇間駄 後太郎(じゃまだ ごたろう)

 Lv.不明
 力 :???
 耐久:???
 器用:???
 俊敏:???
 魔力:???

≪魔法≫
【アニマルライツセンター】


・付与魔法
身体能力の超アップ

詠唱式:【邪魔だ】

≪スキル≫
【乳牛撲殺】
・早熟する。
・牛を殴りたいと言う想いが続く限り効果持続。
・牛型モンスターに対して物理ダメージの超上昇
・牛型モンスターを倒せば倒すほど強くなる 
< 前ページ 次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧