戦国異伝供書
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第六十話 死闘その二
「音を立てずな」
「そうしてですな」
「秘かに妻女山の後ろに回り」
「そしてそこからですな」
「敵の陣を攻める」
「そうしますな」
「そうする、そして」
そのうえでとだ、高坂は周りの旗本達に言うのだった。
「その時は思いきりな」
「声をあげますな」
「そして音を立てる」
「攻めるその時に」
「そうしますな」
「石も投げ鉄砲もあるが」
これもというのだ。
「鉄砲は当たらずともよい」
「左様ですな」
「あの音がいいですな」
「あの音は敵を驚かせる」
「そのこともありますので」
「是非ですな」
「鉄砲も使う」
これもというのだ。
「当家にはあまりないが」
「ですな、どうも」
「鉄砲は西国です」
「堺ではよく売られていてです」
「国友でも造られています」
「島津家は多く持っているとか」
薩摩日本の南西の端のその家の話もした。
「種子島で大いに造らせて」
「鉄砲はあちらから伝わりましたしな」
「三好家が多く持っているとか」
「そして美濃の斎藤家も」
「尾張の織田家も」
「あれは役に立つ」
鉄砲はとだ、高坂は確かな声で述べた。
「お館様も言っておられる」
「他の直臣の方々もですな」
「その様に言われていますな」
「鉄砲はよいものだと」
「戦に大いに使えると」
「放つ弾に当たると敵を倒せるだけではない」
無論このことが大きいがだ。
「あの音もな」
「それもですな」
「随分とよいですな」
「あの音で敵を驚かせる」
「そのことにもよいですな」
「戦は敵を驚かせるとな」
それでというのだ。
「かなり大きいな」
「時に攻める時は」
「その時にですな」
「大きな音はよい」
「敵を驚かせて動きを止めるからこそ」
「そして心を止めて」
まさにというのだ。
「だからな」
「左様ですな」
「それではですな」
「これからは当家もですな」
「鉄砲を備えますな」
「今以上に」
「高いうえに我等は鉄砲を造れぬ」
高坂はこのことには困った顔で述べた。
「だからな」
「どうしてもですな」
「鉄砲は多く手に入れにくいものですが」
「当家にとっては」
「それでもですな」
「何とかですな」
「多く手に入れて使いたいですな」
「千丁は欲しい」
鉄砲、それをというのだ。
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