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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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若い男女が密室で行う事

 
前書き
「恋人同士が密室で行う事」の続編です。
作中歌のリズムは前話と同じです。 

 
(グランバニア城:宰相執務室付属の応接室)
ピエッサSIDE

マリーちゃんの機嫌が頗る悪い。
でも何故だか練習熱心になっている。
こんな事はラインハット王太子妃様が見学された翌日以来だ。

機嫌の悪さと練習熱心さの訳を知りたかったが、本人に聞いたら絶対に拗れると思い、本気で嫌だったけどスポンサーでもある宰相閣下に尋ねる事にした。
出来る事なら練習熱心さを持続させたい……機嫌が悪くなっても、その方法が存在するのなら知っておきたかったからだ。

宰相閣下の執務机の前に立ち、なるべくオブラートに包んだ表現でマリーちゃんの状態を話し訳を聞いた。
すると少し考えた(素振りかもしれない)あと、隣接する応接室に(いざな)われた。

密室で尊敬する宰相閣下と二人きりになることに表情で嫌悪感を表したら、ユニさんが『私も同席しましょうか?』と言ってくれた。
心から安堵したのだが、尊敬し信頼する宰相閣下が『彼女(私の事)以外には聞かせられない話だから、他者が同席するのなら話さない』と言いやがって、渋々二人きりで密室に入った。




「さて……マリーの機嫌が悪かった事だよね?」
「いえ……機嫌が悪かったけど練習熱心だった事についてです」
彼女が不機嫌だったのを興味本位で聞きに来たと思われたくなかったので、きっちり訂正をする。

「やれやれ……めんどくせぇ女だな」
「……………」
私がこんな面倒臭い事を言うのも、目の前に居る尊敬し信頼できる性格の素敵な宰相閣下様が私らのスポンサーだからである。

「あいつさ……こんな歌を口遊んでいたんだよ」
そう言って閣下は歌い始めた。

♪ファンの子観に来たコンサート♫
♪新曲出したら一等賞♫
♪ユ~ラリ揺れてるサイリウム キレイだな♫
♪いいね いいね 歌姫(アイドル)っていいね♫
♪みんなで仲良くチケット購入♫
♪「あ、高い」って思っても支払うんだろうな♫
♪君も買いなよ チケット買いな♫
♪げん げん 現金払いで 売(ばい)買(ばい)倍(ばい)♫

「さ、最低な歌です……ね」
「ああ……俺もそう言った」
こればっかりは尊敬し信頼できる性格が素敵で憧れの的な宰相閣下様と同意見になる。

「んで、俺は君らの……主にマリーの活動内容を陛下に逐次報告してるのさ。この歌も勿論報告した。そしたらこんなアンサーソングを即興で歌ってくれたんだ」
そう言って閣下は歌い出した。

♪父親観ていたコンサート♫
♪音程外すの一等賞♫
♪言うほど実力微塵も無い 才能無い♫
♪いいの? いいの? そんなんでいいの?♫
♪みんなもそろそろ気付くと思う♫
♪ゆったりのリズムは聴くには堪えない♫
♪ぼくは知らんよ お前の仕事♫
♪完全 ノータッチで バイバイバイ♫

「ま、まさか……その歌をマリーちゃんに聴かせたんですか!?」
「聴かせるに決まってんじゃん」
決まってねーよ!

彼女を練習熱心にさせる方法を知りたかったが、こんな歌を歌う訳にもいかない。
結局私には役に立たない。
家族か性格の悪い人間にしか歌う事の出来ない歌だ。

ユニさんすら同席させなかった理由がよく分かる。
そして私には聴かせた、この男の根性の悪さも……



 
 

 
後書き
こんな歌を即座に思いつくリュカさんは凄い。
そして一語一句間違わず本人に聴かせるウルフ君も凄い。
因みに凄いのは性格の悪さね。 
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