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蒼と紅の雷霆

作者:setuna
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蒼紅:第三十二話 帰還

エデンの拠点のベラデンにテンジアンが深手を負いながらも帰還してきた。

そこにパンテーラが迎え、膝をついたテンジアンの元に駆け寄る。

「お兄様、大丈夫ですか?」

「ああ、問題ないよ。オリジナルの紅き雷霆の力は僕達の想像以上だった」

「…無事に逃げられたようで何よりです」

「逃げてきた…と言うよりも、見逃してもらったと言った方が良いかもしれないな」

「………」

テンジアンが説明してくれた。

リゾートホテルでソウに敗北してからのことを…。

「アキュラ…あの無能力者が現れたのですね」

「恐らくアレは生きては帰れないだろう。彼の逆鱗に触れたアレはもう殺されているはずだ。」

「愚かですね…実力の差も理解出来ずに挑むとは…」

「…そうだね……彼とはまたホテルで話をしたよ。君の言う通り本当に彼は不器用で優しい男だ………残念だよ、もう少し出会い方が…少しでも早く彼と出会えていれば彼は僕達の理解者となってくれたかもしれない」

「はい…ですが…」

「分かっている…君が気持ちを押し殺してまでやっているんだ。僕も今度は油断も慢心もせずに彼に挑むつもりさ」

「お兄様…お気を付けて」

テンジアンがポーンの兵士に運ばれていくのを見ながらパンテーラは祈りを捧げるのであった。

そしてアキュラの研究施設ではノワの看病を受けていたアキュラが目を覚ました。

「こ…こは…」

「お目覚めですかアキュラ様…」

「ノワ…俺は…ぐっ!」

少し動いただけで体が激痛に苛まれる。

「動いてはなりませんアキュラ様。ヒーリングでも完治しない程の傷を負っていたのですよ」

「そうか…俺は奴に…!ロロは…どうなった…?」

「……ロロは大破しましたが、メモリーは奇跡的に無事でした。予備のABドライブを使えばすぐに復帰出来るでしょう…問題はアキュラ様のお体です。お体のダメージが酷く、ヒーリングですら完治しない程のダメージを受けていたのです。しばらく休息を勧めます」

「そんなことを…」

「アキュラ様…万全の状態でも敵わなかった相手にその状態で勝てると言うのですか?ロロも神園博士の形見も失った状態で?」

「っ……」

ノワの冷静かつ的確な言葉にアキュラは唇を噛み締める。

SPスキルのストライクソウを使う暇もなく、一度目の戦闘も二度目の戦闘も返り討ちにされてしまった。

初見の攻撃や目潰しもあったのも確かだが、不意討ちまでしながら一方的にやられてしまったと言う事実はアキュラを精神的に追い詰めていく。

アメノウキハシで敗北してからアキュラはソウの戦闘データの解析を繰り返していた。

ヴァイスティーガーは残光の第七波動と蒼き雷霆の第七波動を組み合わせることで機動力は紅き雷霆に匹敵する程になり、解析を繰り返して負ける要素はこれで粗方潰すことが出来たと判断し、もう負ける要素は何処にもない。

そしてあのホテルで再会した時にソウに挑んだ結果があの惨敗だった。

「…無様だな…二度も奴に敗北した上に父さんの形見やロロまで破壊されて…!」

「紅き雷霆…ソウ…今のアキュラ様では勝てないかもしれませんね…」

ノワの言葉にアキュラは拳を握って俯くが、少しして顔を上げた。

「仕方がない…ノワ、宝剣の能力者の疑似第七波動をビットによる再現を試みる…一度見られている物ばかりだが、無いよりはマシだろう…まずはロロの修理だ…用意をしておいてくれ」

「分かりました。ただしお体が完治してからですよ?ミチル様もアキュラ様のことを気にしておいででしたから」

「ミチルが…分かった…大人しくしていよう…」

ノワはアキュラに一礼すると、部屋から出ていく。

「ヴァイスティーガーの損傷も甚大か…本当に…無様だな…父さんの意志も果たせず、奴の良いように嬲られていただけだった…俺にもっと力があれば…」

ブリッツダッシュの小回りの利かなさを利用され、雷撃鱗でヴァイスティーガーの機能をクラッキングされて一度目は敗北した。

二度目に至ってはフェイクカゲロウとカゲロウの共通の弱点である攻撃以外は透かせないことを突かれて痛撃をもらい、そのまま嬲られる。

それだけでも充分過ぎるくらいに屈辱的ではあるが、一番の屈辱はソウがアキュラに何の脅威も感じていないということだ。

まるでそこらの有象無象と変わらないと言うかのように。

「俺は諦めんぞ…!必ず貴様をこの手で…!」

アキュラの決意が込められた声が部屋に響いた。

そしてホテルから帰還したソウはエデンの兵士の装備を回収し、それを身に纏って戻ってきた。

流石に血濡れの状態ではオウカの家に戻れないと判断したからだ。

「戻ったぞ…テンジアンのミラーピースの代わりに鉄屑の物を回収した。これで良いだろう」

ミラーピースをモルフォに差し出し、それはそのままモルフォに戻っていく。

『…うん、大分…力が戻ってきたわ…』

「そうか、シャオ。新しい戦闘服の補充をしてもらえないか?あの屑のせいで台無しになったからな」

「うん、いいけど……あまりああいう戦い方はしないでね?見てるこっちが痛いからさ………気持ちは分からないでもないけど」

シャオが気まずそうに言ってくる。

アキュラが並みの能力者より強く、過激な能力者蔑視の人物のために攻撃が熾烈になるソウの気持ちは分からないでもないが、あのような嬲り殺すような戦い方は見ていて気分の良いものではない。

「あんな屑にかける慈悲はない。第一俺は何度もチャンスをやった。それを不意にしたのは奴なんだぞ…逃がしてしまったが、途中で死んでくれればありがたいんだがな…」

「君ね…まあ、過ぎたことをとやかく言わないけど…」

シャオは溜め息を吐いて話を切り上げる。

自分はあくまで協力してもらっている立場なのでこれ以上は言えないからだ。

「風呂に入る前に整理をしておこう。敵の主力であるG7はジブリール、ニケー、ニムロドを倒し…テセオとアスロック、テンジアンと…今でも姿を見せない能力者を含めて4人生き残っている…奴の分も含めて俺達は4枚回収した。エデンにはまだ5枚のミラーピースがある…GV、シアンとモルフォに異常はないか?」

「その点は問題ないと思うよ。4枚のミラーピースを取り返したことで元のサイズにはまだ戻れないようだけど大分安定しているらしいし」

一応GVに尋ねてみるが、今のところはシアンとモルフォに問題はないらしい。

「そうか…動こうにもエデンの本拠地も分からん上に残りの1人が何処にいるのか分からん…今まで通りに依頼をこなしつつ、奴らの動きを待とう…俺は風呂に入る。お前達も早く休め」

残りのG7の居場所が分からないので、しばらくは簡単な依頼をこなしつつ、相手の出方を待つしかないと言うことになったのであった。 
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