夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百七話 若草山にてその十三
「わかっていないことがまだ多いのよね」
「拙者達が来るまでというか」
クッツェーが言ってきた。
「石に覆われる以前のことは」
「技術とか文明はあってもね」
「歴史が」
「あまりわかっていないわね」
「空白の時代がありますね」
「明らかにね」
「ほんまに」
「長い間それぞれの地域に分かれていて戦争も多かった」
このことはアチェベが言った。
「このことは歴史書にありますが」
「途中からね」
「はい、世界が石化して海に覆われる」
「それまでの間は」
「どうにもです」
それはと言うのだった。
「わかっていませんね」
「そうなのよね」
「歴史書に残っていなくて記憶にも残っていない」
フルルは薄いアイスブルーの目を光らせて話した。
「何もかもがわかっていない」
「ええ、けれどね」
「そこに何かあったのは事実やから」
「そうよ、書かれていなくて残っていなくても」
アレンカールはフルルにこう返した。
「そこに確かなものがあったことはね」
「事実ね」
「間違いなくね」
こう言うのだった。
「そのこと自体は」
「そうね」
「言語も貨幣も度量衡も一つになった」
その全てがというのだ。
「そうなるにはね」
「何もなくてならない」
ニャメも言った。
「政がないと」
「そうよ、まずね」
「どの国でもそうだったし」
「あれでしょ」
アレンカールはニャメにも話した。
「中国の始皇帝ね」
「中国を統一して皇帝になった時に」
「そうよ、全部一つにしたわね」
「文字も貨幣も度量衡も」
「全部一つにして」
その政策を話すのだった。
「完全に中国を一つにしたわね」
「ただ武力でそうしたのではなく」
「これで中国は一つの国になったのよ」
その時からというのだ。
「その時まで商や周という国があったけれど」
「王朝はありましたね」
「けれど多くの諸港がいて」
「それぞれの国でしたね」
「日本の教科書やと春秋とか戦国とか言われてる時代か」
ホンワナは日本で読んだ教科書の内容を思い出した、そうしてそのうえで真剣な顔でそのうえで話すのだった。
「長い戦乱の時代で」
「それぞれの国の独立性が強くてね」
「中国は一つの国ではなかった」
「そうだったのよ、それがね」
「始皇帝の政策によって」
「全部一つになったから」
文字や貨幣、度量衡といったものがだ。
「道の幅までね」
「そしてこの世界も」
「全部一つでしょ」
そうしたものがというのだ。
ページ上へ戻る