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戦国異伝供書

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第五十七話 善徳寺の会盟その八

「真田源次郎殿という」
「ご存知ですか」
「武芸全般に秀でた見事な武者だとか」
「その御仁の名はそれがしも知っておりますぞ」
 氏康も笑って話に入った。
「知勇兼備の傑物だとか」
「否定しませぬ、しかも心根も非常によく」
 晴信は幸村のことを隠さなかった、その才が隠してもどうしても出てしまうまでのものであると思ったからだ。
 それでだ、義元と氏康にこう言ったのだ。
「これからが楽しみです」
「そうでありますな」
「真田殿は」
「あの者がおれば」
 それでとも言うのだった。
「当家に憂いはなしかと」
「ははは、まさに人でおじゃるな」
「人こそが国の柱ですな」
 義元も氏康も晴信のその言葉に笑って応えた。
「それは当家も同じこと」
「全くでおじゃるな」
「それでは」
「これからもお互いに励むでおじゃる」
「そうしましょうぞ」
 三家も応えた、そしてだった。
 それぞれ寺を後にした、晴信は甲斐に戻る途中で山本に首尾を聞いてからその内容に満足して頷いてだった。
 そのうえでだ、幸村にこう言った。
「お主の話が出たが」
「今川殿、北条殿と話をされた時に」
「うむ、その時にじゃ」 
 まさにというのだ。
「お二方はお主のことを知っていてな」
「それで、ですか」
「何かと話をした」
 そうだったというのだ。
「お主は知られておるぞ」
「それがしは有名なのですか」
「お主の資質は相当なものじゃ」
 それ故にというのだ。
「だからじゃ」
「両家でも知られておりますか」
「優れた者は必ず名を知られる」
 そうなるというのだ。
「だからな」
「それがしのことは」
「知られるものだ、やがて天下にだ」
 幸村の名がというのだ。
「知られるわ」
「そうなりますか」
「うむ、それでじゃが」
 晴信はさらに話した。
「お主にはこれからも働いてもらうが甲斐に戻るとな」
「その働きで」
「そうじゃ、越後の方をじゃ」
 そこをというのだ。
「行ってもらうか」
「そうしてですか」
「しかと調べてな」
 そのうえでというのだ。
「報を頼む」
「越後ですか」
「また上杉家との戦になる」
 晴信は鋭い目になって述べた。
「長尾殿は都の公方様に会われたな」
「そして名を一字与えて頂いたとか」
 それで輝虎という名になった、このことはもう晴信も幸村も知っているのだ。 
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