蒼と紅の雷霆
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蒼紅:第十八話 蒼き雷霆(アームドブルー)
前書き
必ず偽エンディング見なければならないって誰も予想出来ませんわ…
紫電の肉体が爆発していくのを見て、GVとソウは安堵の息を吐いたが、シアンが取り込まれていることを思い出し、叫んだ。
「しまった…!シアンっ!!」
「大丈夫ですよGV」
テーラの声が響くと、鏡からテーラとシアンが飛び出してきた。
どうやら夢幻鏡で助けてくれたようだ。
「ありがとう、テーラ」
「すまないテーラ…本当に…ありがとう…お前も無事で何よりだ」
「…ありがとうございます」
シアンの無事を確認したGVは座り込み、ソウも安堵の表情を浮かべてテーラに感謝した。
戦いの最中は常に険しかった表情が穏やかな物に変わっている。
これはきっと自分とシアンがソウにとって大切な存在になれた証なのだろう。
「ダートリーダー…壊れてしまいましたね…」
ソウの近くに散らばっているソウの愛用の銃の破片を見てテーラが呟く。
元々能力の都合上、どうしても銃への負担が大きい上にあのような酷使をしたのだ。
仕方ないところはあるが。
「…この銃は替えはあまりないからあまり無茶な使い方はしたくはない…だが、それに見合う物は取り戻せたな」
「お兄さん…!!」
笑みを浮かべるソウにシアンは感極まって抱き着いた。
「ぐっ!!」
「シアン!駄目ですよ、ソウは紫電から受けたダメージがあるんですから…」
「あっ!ごめんなさいお兄さん…」
「いや、後少しすれば力も回復するから問題ない…さっさとこんな場所から脱出だ」
この時のシアンはGV達が紫電と壮絶な戦いの末、打ち勝ったことにとても安堵を覚えていた。
これで怖くて狭い場所に閉じ込められなくていいんだと陽気なことすら考えていた。
GVやテーラだけでなくあの何時も無愛想なソウでさえ自分の無事を喜んでくれていることが素直に嬉しかった。
しかし、シアンは知らなかった。
この世界はどこまでも能力者に冷たいのだと言うことを。
何とか軌道エレベーターに乗り、仲間達の元に戻ろうとした時であった。
姿が見えなかったアシモフが姿を現したのは。
「何故、お前がここにいるアシモフ?指揮を取るべきリーダーがここにいていいのか?」
ソウが尋ねるが、アシモフはそれに答えずに口を開いた。
「ご苦労だったGV、ソウ…それに協力者の少女とシアン。紫電を倒すとは…お前達こそ、新たなる時代のキングとクイーンに相応しい」
「何を…言ってるの…?」
突然の言葉にシアンは戸惑うが、アシモフが発する雰囲気に以前テーラが見せた憎しみが重なり、シアンの表情を強張らせる。
「この騒動で皇神は混乱している…今が絶好のチャンスなのだ」
「アシモフ…?」
「GV、ソウ。お前達はフェザーを離れ、私が想像した以上に成長したようだ。フェザーに戻って来い。今ならその少女(シアン)にも居場所はある。シアンの歌と、この衛星拠点…そして、協力者の少女を含めたお前達の力があれば愚かな皇神や、無能力者共を地上から一掃することも可能だろう」
「!?」
「何だと?」
このアシモフの言葉には誰もが驚愕する。
「私はフェザーを設立し、この日が来るのをずっと待ち望んできた…。今こそ、我ら能力者が“自由”の名の元に立ち上がる時が来たのだ。さあ来い。共に自由ある世界を勝ち取ろう」
「………」
その言葉に無能力者への憎しみを持つテーラは同意しそうになった。
全てを明かせばエデンとフェザーの同盟も夢ではないのではと頭の中に考えが巡るが…。
「……GV…お兄さん…テーラちゃん…」
自分達の後ろで怯えているシアンを見て、GVとソウは表情を引き締め、テーラに迷いを生じさせる。
「大丈夫だよ、シアン…心配しないで…アシモフ…あなたには返しきれない恩がある…僕達に居場所を与えて育ててくれた…その恩を忘れるつもりはない…だけど!それが…そんな物が、あなたの野望だと言うのなら、あなたは…あの紫電やアキュラと同じだ!シアンを利用するつもりなら、僕が止める…!」
「そうか、残念だよ…GV…ソウはどうだ?」
「……無能力者がいなくなるのなら個人的に精々するが、お前がシアンとGVを利用するつもりなら俺は貴様と戦う」
「…残念だ、ソウ。以前のお前なら乗ってくれると思ったが、どうやら少し厳しく育て過ぎたようだ。言うことを聞かなかったが、以前の無能力者への憎悪を滾らせ、リベンジを望んでいた頃のお前の方が良かったな…デッドエンドだ」
「お前1人で俺達と戦うつもりか?」
「確かにこのままでは分が悪い…このままでは…な」
サングラスを外したアシモフ。
次の瞬間にアシモフの全身から雷が迸る。
「「「「!?」」」」
「迸れ、蒼き雷霆…我が敵を貫き滅ぼせ…」
そう呟くのと同時にハンドガンを構えた。
「蒼き雷霆だと…!?」
「雷撃の第七波動がお前達兄弟だけの物だと思っていたのか?答えはNOだ、アスタラビスタ…まずは幻覚の能力者である君からだ」
「っ!!」
この中で最も厄介なテーラに狙いを付けたアシモフはテーラに向けて銃弾を放った。
蒼き雷霆の雷撃が収束された一撃にテーラは防御も間に合わずに目を閉じるしかなかったが、痛みは何時まで経ってもやってこない。
「あ…ああ…!!」
「お、お兄さ…!!」
GVとシアンの愕然とした声にテーラはゆっくりと目を開けると…自分を盾にしてテーラを凶弾から守り、吐血しているソウの姿であった。
「ほう、これは思わぬハーベストだったな」
「…ソ…ウ…?」
「馬鹿…が…銃を、向けられて…ジッとしている奴が…何処…に…」
言い切る前にソウは仰向けに力なく倒れた。
「兄さん!!」
「いや、お兄さん…!!」
「ソウ…そんな…どうして…!?」
「し、知るか…体が…動いたんだ…勝手にな…」
カゲロウの機能をONにした状態では銃弾が素通りしてしまうために、テーラが狙われた直後に機能をOFFにしてテーラの盾となったのだ。
出血が酷い、このままではソウの命は保たないだろう。
「テーラ…怪我は…ないな…?」
「は、はい…あなたが…あなたが守ってくれましたから…」
血溜まりの中に沈む死にかけのソウの姿が、かつて無能力者に殺されかけた兄の姿と重なり、普段からは想像出来ない程に取り乱していた。
「ほう、まだ生きていたか…だが、長くは保つまい。今度こそアスタラビスタ…楽にしてやろう、ソウ…」
「止めろ!!」
GVが避雷針を撃ち込むが、カゲロウで透かされてしまう。
「やはり邪魔をするかGV」
「よくも兄さんを…!!2人共…兄さんを頼むよ…!!」
ソウをテーラ達に任せてGVはアシモフに向かっていく。
「どうしよう…血が…血が止まらないよ…!!」
「っ…!!大丈夫です…ソウは雷撃の…雷撃の能力者です…意識さえはっきりさせれば自分の能力で…」
唇を噛み締めるテーラ。
このままではソウの命が保たないだろうが、ソウの朦朧としている意識を何とかすれば自分の生体電流を活性化させて自然治癒能力を高めることが出来る。
「どうして…?アシモフにとってソウ達はそんなに容易く切り捨てられる存在なのですか…?」
自分もエデンの巫女だ。
時として冷徹な判断を下さねばならない時もあることくらいは理解している。
しかし何の葛藤もなくこんなことが出来るアシモフに愕然としていた。
「でも、先程の一撃を受けて、どうして…?」
先程の一撃はアシモフにとって確実に自分の命を奪う一撃だったはず、それを自分を庇って受けたソウが何故生きているのか…。
「テーラちゃん…これ…」
「あ…」
ハンカチで傷口を押さえていたシアンがソウの首にかけられている物に気付いてテーラに見せた。
カゲロウ用のペンダントと一緒にかけられているのはテーラがソウに贈ったペンダントであった。
どちらも原型も留めていないくらいに破壊されてしまっているが、間違いない。
「ソウは…このペンダントを着けていて…くれたのですか…これがソウの命を…」
胸に満ちる安堵の気持ち…しかし…。
「助けます…絶対に…!!」
このままではソウは助からない。
何としてでもソウを助けるとテーラは誓った。
「アシモフ…!!」
「この第七波動の高まり…やはり惜しいぞGV。その力なら私に代わり、新たな時代のリーダーになれただろうに」
「そんなことに興味はない!!」
「ふむ、やはり育て方を間違えてしまったようだな、仕方あるまい…今のお前は、我々の前に立ちはだかる…敵だ!!迸れ!蒼き雷霆よ!!ファイアッ!!」
カートリッジを切り替え、銃から放たれるのは銃弾ではなく見覚えのある避雷針。
同じ蒼き雷霆の能力者であるGVからすればそれが何を意味するのか理解している。
「くっ…(強い…能力なしでもフェザー最強の戦士と言われていたアシモフが能力を使うとここまで…でも、どうして…)」
紫電との戦いでカゲロウの機能に影響が出たのか、避雷針が掠ってしまった。
しかもこちらの避雷針は向こうのカゲロウで透かされる…元々の能力差も相俟ってこちらが不利。
「私が蒼き雷霆の能力者であることがそんなに不思議か?教えてやろうGV。かつて、南米の奥地で世界で最初の第七波動能力者が発見された…その者の第七波動は、電子を自在に操る“蒼き雷霆”…雷撃による高い戦闘能力と電磁場を利用した機動力…そして何より、電子技術が支配する現代社会において…あらゆる電子機器を意のままに操れる雷撃の第七波動は正に究極の能力。当時、旧来の発電方法に限界を迎えていた皇神の連中は…新たなエネルギー資源のキーとしてこの力に目をつけたのだ。皇神はエネルギー研究のため、雷撃能力者を量産する計画を打ち立てた。始まりの能力者から雷撃の能力因子を複製(クローニング)し、他の実験体へ移植するプラン…“プロジェクト・ガンヴォルト” 。だが、雷撃の能力因子に適合する者は極めて少なく、生きた成功例は突然変異の紅き雷霆の能力者であるソウを含めて僅か3名……その成功例が、この私とお前達兄弟というわけだ。余談だが、それともう1つ、蒼き雷霆に関するプロジェクトが存在する…量産した蒼き雷霆の能力者を生体ユニットにすることで強力な戦闘兵器を量産する“プロジェクト・ソウ”…お前の兄が最も関わっていたプロジェクトだ。」
紅き雷霆の出力が強すぎて機械制御は愚か、危険と言う判断をされて廃棄処分を決められ、ソウは施設の研究員達を殲滅して今に至る。
「………」
「GV…私もお前達兄弟と同じ境遇だ。お前ならば分かるだろう?世界は偏見に、差別に満ち溢れている…。力無き無能力者達が、如何に我々を迫害してきたか…能力者と無能力者は、決して相容れることは出来ない……では、滅ぼすしかあるまい?」
「そんなに無能力者に喧嘩を売りたいのなら…1人でやっていろ…!!」
「それにしてもあれは意外だった。初めて会った時はまるで血に飢えたビーストのようだったソウが他者を庇うとはな。時間の経過で以前のファングを失ってしまったようだ」
「兄さんも人間だ!!兄さんの在り方は昔から変わっていない…無能力者は今でも嫌っているけど、大切な人を守るためなら命を懸けることが出来る人だ!!…お前は僕達の理解者を気取るけど……僕達のことを何も理解してないじゃないか…!!お前は…身勝手な理由で兄さん達を殺そうとした…それだけは…絶対に許さない!迸れ!蒼き雷霆よ!僕の…僕達の怒りを受け取れぇっ!アシモフっ!!」
「…やはり、敵対を止めぬか…兄弟揃ってナンセンスだよ!GV!!」
「GV…頑張って…!!」
シアンはGVの勝利を願うものの、やはりアシモフとの地力の差があるのか徐々にGVは押されていた。
「………このままでは…シアン…歌って下さい…」
「え?」
このままではソウは助からないし、GVもアシモフに敗北してしまう。
ならばシアンの歌…電子の謡精の力でソウとGVの第七波動を高めればと思ったのだ。
「でも…私じゃ…」
「第七波動は意思の力です。あなたが2人を助けたいと強く願えば第七波動は必ず応えてくれます」
「………分かった…」
GVとソウを、自分を助けてくれた人達を助けるために初めてモルフォに頼らずに第七波動の行使をする。
“輪廻”の歌が響き渡り、電子の謡精の精神感応能力によって、GVとソウの第七波動の力を高めていく。
「これは…シアンの…力…?」
「っ…」
「ソウ、落ち着いて…少しずつ体の傷を癒して下さい」
急激な力の高まりに意識を取り戻したソウに第七波動で体の傷を癒すように促す。
「ああ…」
「チィ…させん!!」
雷撃鱗を展開しながらシアン達に突っ込むアシモフ。
歌を妨害しようと言うのだろうが、それをさせてやるほどGVは愚かではない。
「させるか!!」
雷撃鱗を展開してアシモフの雷撃鱗を受けると、アシモフがオーバーヒートを起こし、カゲロウが発動不可になる。
その隙に避雷針を撃ち込んで雷撃を流し込む。
「ぬうう!!」
流石のアシモフもオーバーヒート状態では攻撃を防げないようだ。
何とか立ち直ったアシモフはジャンプで位置を変えると、再び避雷針を撃ってきた。
「バニッシュだ!!」
「(この弾道の軌道は…オロチか!!)」
GVも使用する多人数との戦闘に特化したカートリッジ。
軌道を見切って、回避する。
「ターゲット…チェイサー!!」
今度は使用者の意思で弾道の軌道が変わるカートリッジ・ミズチだ。
しかもGVとは違い、技量の差なのか複数のマーカーを展開すると言う凄まじさだ。
アシモフの雷撃はGVの物と違って暴走状態のためか、避雷針1発でGVが避雷針3発撃ち込んだ分の威力だ。
シアンの加護を受けたGVは空中ダッシュと空中ジャンプが無限に使用出来る。
避雷針の回避に徹していたが、GVの隙を突いて雷撃鱗による突進を仕掛けてきた。
「くっ!!」
GVも雷撃鱗を展開し、アシモフの雷撃鱗を受け止めると、アシモフを再びオーバーヒートに追い込む。
「アンリミテッドヴォルト!!」
シアンの歌の加護の力は凄まじく、どれだけEPエネルギーを使用しても尽きないのでEPエネルギーを気にせずに攻撃出来るのだ。
アンリミテッドヴォルトで強化された雷撃によってアシモフは追い詰められていく。
「まだ…終わらん!!」
雷撃を纏わせた拳を床に叩き込むと、雷撃が床を走る。
GVはそれをジャンプでかわすとアシモフがSPスキルの詠唱を始める。
「迸れ、蒼き雷霆よ…滾る雷火は信念の導、轟く雷音は因果の証、裂く雷電こそは万象の理…ヴォルティックチェーン!!うおおおおおっ!!!」
凄まじい勢いで展開される雷撃の鎖。
圧倒的な攻撃範囲を誇るSPスキルの発動にGVはシアン達を見遣るが、既にテーラが夢幻鏡で安全な場所に移動していた。
GVも空中ジャンプで離脱を図るものの、時間が足りずにヴォルティックチェーンの雷撃によってダメージを受ける。
「ぐはっ!!」
「GV!!」
「シアン!歌を続けて下さい!!まだソウは危険な状態です!!」
GVがダメージを受けたことに思わず歌を中断してしまうシアンだが、まだソウは危険な状態から脱していないので歌を促す。
結果としてそれはGVの強化にも繋がるので、シアンはGVに駆け寄りたい気持ちを抑えて歌を歌う。
「あぐ…っ…ヒーリング…」
「させんぞ」
アシモフの手が回復しようとするGVの首を掴み、壁に叩き付ける。
「がはっ!!」
「アスタラビスタ…GV」
銃をGVに向けるアシモフだが、GVは全ての力を振り絞って第七波動を解放し、アシモフを弾き飛ばす。
「迸れ!蒼き雷霆よ!!掲げし威信が集うは切先!夜天を拓く雷刃極点!齎す栄光、聖剣を超えて!!グロリアスストライザー!!!」
まだ未完成の…それでもスパークカリバーを大きく上回る威力を持つ真の力を解放した蒼き雷霆の聖剣がアシモフに炸裂する。
GVの最強のSPスキル・グロリアスストライザーをまともに受けたアシモフは致命傷を負い、膝を着いた。
暴走状態の蒼き雷霆が沈静化していると言うことは最早アシモフは死ぬ寸前と言うことなのだろう。
未完成とは言え、フェザー最強の戦士であるアシモフを倒したグロリアスストライザーの威力が分かると言うものだ。
「くっ…」
テーラとシアンに支えられながら起き上がったソウにGVは思わず安堵の息を吐いた。
「…流石だ…ガンヴォルト…その力…お前こそ…新たなる世界のリーダーに相応しい…」
「…そんなものになるつもりはない…僕は…今の僕の家族を守ろうとしただけだ」
「ああ…そうだろう…な……だが…能力者の台頭は…もは…や…止めら…れん…お前達も…その流れに…抗うにしろ…乗るにしろ…いずれ……逃れられぬ戦いに…巻き込まれていく…ことに…なる…だ…ろう…」
「………」
「お別れ…だ……能力者の…未来は…お前達…兄弟に……託す…グッドラック…」
それだけ言うとアシモフは全く動かなくなった。
「…死んだか……あいつには…一度も勝てなかった…勝手に暴走して…勝手に…」
複雑そうな表情を浮かべるソウに、テーラも複雑そうに見上げた。
口や態度では素っ気なくしていても、ソウなりにアシモフのことを慕っていたのかもしれない。
「GV…」
「シアン……」
シアンが声をかけてきた。
この戦いで傷付いたGVに残った大切な家族…。
「……」
皇神を倒し、親代わりでもあったアシモフをも倒したGVは心身共に疲弊していた。
シアンはそんなGVにかける言葉が見つからず、軌道エレベーターはそのまま下降し、地上に帰還した。
「GV!!ソウ!!って…お前ら…それ…」
「そ…そんな……」
帰りを待っていたジーノとモニカが見たのは心身共に疲弊したGVと、重傷を負い、シアンとテーラに支えられたソウと…。
「アシモフ…!?まさか…死ん…で…?」
「…………」
GVは応えようとせず、ソウもシアンもテーラも閉口して何も言おうとしない。
モニカはそれを無言の肯定と受け取った。
「…嫌っ!!そんなっ…そんな……アシモフ……」
ぼろぼろと涙を浮かべ、モニカはその場に力なくくずおれる。
GV達は、仲間達に振り返ることもなく軌道エレベーターの外へ去っていく。
「お…おい、GV?何だよ!何があったってんだ!?アシモフはどうして…!? 何でソウもそんな怪我をしてんだよ!?」
「止め…」
『GV達に触れないで…!!』
事情を聞こうとするジーノを止めようとシアンが言い切るよりも先にモルフォがGV達を護るように不可視の力でジーノを弾いた。
夜が明ける。
蒼き雷霆・ガンヴォルト…紅き雷霆・ソウ…長い夜が明け、ようやく訪れた朝に彼らは何を思うのだろうか?
シアンは、優しくGVに声をかけた。
「大丈夫だよ、GV…私達はずっと…ずっと…GVの味方だから…GVに行きたいところがあるなら、私も一緒に行く…GVはどこに行きたい?」
「…僕は…………」
GVが何かを呟いたようだったが、ジーノはそれを聴き取ることは出来なかった。
遠ざかる彼らの姿を、ただ立ち尽くし、眺めるしかない。
やがて、彼らの姿は立ち昇る朝日の中へと消えていったのであった。
「…………」
テーラは不安そうに空を見上げた。
皇神で最も厄介な存在であった紫電は倒れたことにより、自分の仲間達は遥かに活動しやすくなった。
しかし、それは…。
「(私は…どうすればいいのでしょう…)」
彼らと温かな時間を過ごしすぎたテーラはソウ達のことで苦悩する。
「テーラ…?」
「いえ、何でもありません…ソウ。まずは隠れ家に戻りましょう。必要な物を回収しなくては…私達は恐らく、皇神だけではなくフェザーにも追われることになります」
「…だろうな、フェザーの創設者であるアシモフを殺したんだ。全く…余計なことをしてくれたなあいつは……最後の最後まで頭に来る奴だったよ…一度も勝たせてくれずに…死ぬなんてな…」
「ソウ…あなたも…アシモフのことを…」
「あいつは気に入らない…それだけだ」
行く先をひとまず隠れ家に決めたGV達はそのままゆっくりと前進していくのであった。
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