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ある晴れた日に

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96部分:小さな橋の上でその十二


小さな橋の上でその十二

「わかったらさっさと行けよ」
「わかったわよ、このギター男」
「あんたが川に落ちればいいのに」
 悪態をつきながらも橋に進む。見ればその間にもう加山が橋を渡ってしまっていた。
「加山、御前もう行ったのかよ」
「うん、悪いけれどね」
 今橋の前にいる野本に対して答えていた。
「だってここにクイズがあるし」
「げっ、そこにかよ」
「っていうか地図に書いてるよ」
 向こう側で驚く野本に対して述べていた。
「ちゃんとね」
「あれっ、そうだったのか?」
「そうだったのかっておい」
 また正道が呆れた顔で野本に突っ込みを入れる。
「そんなのわからねえのか?地図位よ」
「俺地図持ってねえからよ」
「それ理由にならないし」
「っていうかあんた地図何処にやったのよ」
「さあな」
 明日夢と奈々瀬への返答はこんな調子だった。
「何処に行ったのやら。鞄の中にあると思うぜ」
「駄目だこりゃ」
「どうしようもないわ」
 呆れた声で肩をすくめる明日夢と奈々瀬だった。
「いつものこととはいえ」
「どうなのよ、これって」
「もっとちゃんとしたら?」
「加山が持ってるからいいじゃねえかよ」
 そしてやはりどうとも思っていない野本だった。
「そんなのよ」
「何でこいつこんなに馬鹿なんだろうね」
「中学校の時かららしいけれど」
「馬鹿でも世の中困らないからいいんだよ」
 まだ強引にこう言い切る野本だった。そんな居直る彼に対して今度声をかけたのは正道だった。呆れた声であったがそれでも言った。
「おい」
「何だよ」
「早く橋渡れよ」
 言うのはこのことだった。
「あれこれ話してても何にもならないからよ」
「ああ、そういえばそうか」
「そういえばかじゃなくてそうなんだよ」
 今の正道の言葉はかなりおかしかったが誰もそれには気付かなかったし突っ込まなかった。だからとりあえずは何の問題もなかった。
「とにかくな」
「橋を渡れってんだな」
「そうだよ。早く渡りな」
「ああ、それじゃあな」
「落ちるなよ」
 橋に足をかけた野本に対してまた言った。
「気をつけろよ」
「俺が落ちるっていうのかよ」
「まあお猿さんってそういうの得意だから」
「大丈夫だろうけれど」
 ここでまた言う明日夢と奈々瀬だった。
「落ちてもあんた泳げるでしょ」
「だったら落ちてみてもいいんじゃないの?」
「・・・・・・御前等、俺を何だと思ってるんだよ」
 今の二人の言葉には彼とても呆然とするしかなかった。
「しかもそこまで言うか?ったくよお」
「とにかく早く渡れってことよ、私達が言いたいのは」
「わかった?」
 追い打ちまで来た。
「わかったらさあ」
「早く渡ってよ」
「わかったよ。じゃあよ」
 何はともあれ彼も渡りだす。それを見てから二人は今度は正道に顔を向けて言ってきた。
「じゃあさ、音無」
「何だよ、その名前」
 奈々瀬に対してまず速攻で突っ込みを入れる。
「ひょっとして仇名かよ」
「そのつもりだけれど駄目かしら」
「駄目に決まってるだろ。俺は音橋だ」
 何故か音無と言われると不機嫌になる彼だった。
「その呼び方止めろよ。いいよな」
「わかったわ。じゃあ止めておくわ」
「当たり前だよ。とにかくだよ」
「ええ」
「御前等先渡れよ」
 彼の方から言ってきた。
「ほら、先にな」
「先にって」
「あんたが先に行かないの」
「俺は最後でいいんだよ」
 こう言うのである。
「最後でな。だから早く行けよ」
「そんなに言うのならいいけれど」
「またどうして最後なのよ」
「別に最後でもいいだろ?」
 いぶかしむ二人に対してまた言うのであった。
「俺がトリでもな」
「まあ音楽は前座レベルだしね」
「そういうのでトリでもいいわよね」
「御前等いつも一言多いんだよ」
 やはり音楽のことを言われるといささか以上に本気になるのだった。
 
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