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吸血鬼になったエミヤ

作者:炎の剣製
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039話 学祭準備編 世界樹伝説

 
前書き
久しぶりにこっそりと更新します。 

 


「昨晩はお楽しみでしたね、シホ様……♪」
「…………」

そんな、ただでさえもう癖になってしまっている片頭痛を起こしそうなタマモの発言で、昨晩は徹夜でお化け屋敷の制作に取り組んでいたシホ含む3-Aは疲弊していた。

なにやらその前日辺りにネギをデートに誘え!という盛り上がりを見せていたが特にシホは関心を示そうとせずに「ネギ先生も大変ね……」とまるで他人事のように見ていた。
ただ、エヴァが楽しそうな笑みを浮かべていたからこれはなにか巻き込まれそうな気配がする……とはシホの低い直観でもある。

まぁ学園祭前日なのだからしょうがないのだが、そんなセリフを聞いてシホは半目になってタマモを呆れた目で見ていた。

「やっ! そんな汚物を見るような視線を浴びせられてはこのタマモ、なにか心の奥から込み上げてくるようなものがございます! でも、それもシホ様の視線であれば悪くないかも!!」
「はいはい……そんな特殊性癖は発芽させないでいいからさっさと世界樹前広場まで向かうわよ?」
「わかりましたー」

なぜ世界樹前広場?という疑問があるであろうが、それは徹夜を開けて一旦解散となって、しかしシホはこれといって部活には入っていない帰宅部の身なのでこのまま手伝いをしようかと思っていた。
……一時期、また弓道部にでも入ろうかと思っていたのだが、自慢ではないがただでさえ今の自身の実力は弓道部になど収まりきらずに変な目で見られてしまうのは確定的事実であろう。
そしてさらにただでさえ『魔弾の射手』などという似合わないあだ名を貰っているのだから今更な感じではある(どこかの探偵の敵である教授がほくそ笑んでいることなどシホにはまったくもって知った事ではない)。
そんな時に仕事用の携帯に着信が入ってきたのだ。
シホはおもむろに出てみると相手は高畑であった。

『姉さん、今大丈夫かい?』
「タカミチ……? どうしたの? 何か用事?」
『うん。学園長から事前に話は聞いていたと思うけど……集会を開くから世界樹前広場まで来てもらってもいいかい?』
「ああ……なるほど。了解したわ。すぐに向かう」

と、そんな会話があったためにシホとタマモもすぐに現場へと向かうのであった。









……そんなこんなで世界樹前広場までやってくると、すでに人払いの結界が設置されているのか不自然に人が少なかった。
その少ない人が魔法の関係者なのだろう。
見れば小太郎や高音・D・グッドマン、佐倉愛衣……そして教師陣は学園長を始め、タカミチ、刀子、瀬流彦、ガンドルフィーニなどの姿もあった。

「お! シホの姉貴! あんたも呼ばれてたんやな」
「ええ。それより……刀子さん、お久しぶりです」
「はい、先輩! 先輩はその後の調子などは大丈夫ですか……?またなにか隠し事はしていないですよね?」
「暗い事は今はないから大丈夫よ。…………それよりなにかしら知っている気配があるのは気のせいかしらねぇ……?」

シホの視線の先にはシスター・シャークティの後ろに隠れている一人のシスターの姿。
小声で「やべっ……」と声を出していたのをシホは吸血鬼の耳で聞こえていたために、

「まさか、あなたも関係者だったなんてね……ねぇ? 美空?」
「うひぃ!? 許してエミヤン!」

とうとう観念したのか美空も顔を出してきた。
そこにシャークティが、

「すみません、シホさん……この子には後でシホさんなどの話を聞かせておきます」
「わかりました」

そんなどこか和やかな空気が続いている中で、

「うむ。調子はよさそうじゃの、シホ殿」
「学園長。はい、最近は自身でも驚くほど安定していますね」
「それはなによりじゃ。ところで……なにやらエヴァがお主を従者にしたとか自慢げに話してきたのじゃが、本当かの……?」

そんな学園長の話に一瞬ざわめく一同。
さもありなん。エヴァがシホの事を引き取ったのは関係者には知られている事ではあるが、まさか仮契約するなどさすがに見過ごせない感じである。
しかしシホもそんな様々な思惑ある視線に気にせずに、

「ええ、まぁ……油断した隙に契約させられてしまいまして。手に入れたのがこれです」

素直に白状してパクティオーカードを提示するシホ。
そんなどこかあっけらかんな感じで出されたために一同も気が抜けたのか、

「普通は隠すところではないですか、先輩……? しかしあの吸血鬼め! よくも先輩の唇を!!」
「まぁまぁ……別に取って食われるわけではないですし、自由にしていいとも言われていますので特に気にはしませんかね。使える手も増えたわけですし……」
「と、いうと……シホ殿のパクティオーカードはかなりのものなのかの?」
「はい。なんか超希少なものらしいんですけど……『贋作の王』というものです」
「「「「「な、なんだってーーーーーー!!!!?」」」」」

そんな周りの反応についシホはビクッと震えてしまった。
そこまでのものなのかと言う感じで。

「なんと……! ウルトラレアである『贋作の王』を手にするとは……シホ殿も運が良いの」
「そうなんですか……?」
「うむ。オークションにでも出せば史上最高額を出すのもわけない代物じゃ。なにせ仮契約者の数だけ能力を無限に増やしていけるというものじゃからな」
「やっぱりそうなんですねー……シホ様、素晴らしいです」

タマモがご主人の事を褒められたのかシホの事を絶賛していた。

「で、でしたら……シホさん! 私のアーティファクト『オソウジダイスキ』を登録しませんか!?」
「愛衣!? いいのですか!?」
「はい! シホさんならきっと有効に使ってくれると思いますから」

そんな愛衣の申し出に、さすがに断ることもないだろうと思い、

「それじゃ……『登録』」

カードを合わせた瞬間、光り輝いてシホのカードに愛衣のカードが追加された。

「ありがとね、愛衣ちゃん」
「はい!」

そこにシャークティも歩いてきて、

「でしたら、シホさん。美空のカードもどうですか?」
「美空も持っているの?」
「うっ……ま、まぁ」

恥ずかしそうにカードを出す美空。

「ですが、いいんですか? 愛衣ちゃんのを貰った後に言うのもなんですが仮にもエヴァとの契約のものなのに、こんなに簡単に差し出してくれるなんて……」
「構いません。この場にいるものはほとんどがシホさんの事を知っていて、悪用しないと信じていますから」
「なにか、重たいですね……まぁ悪用はしないと誓っておきます」
「なら、いいではないですか」
「わかりました。美空、いいわね?」
「ええい! 持ってけドロボー!」

自棄になったのかさっさと登録しろと言わんばかりに差し出してくる美空。
苦笑しつつもカード同士を合わせて『登録』と唱えるシホ。
こうして美空のカードの能力も手に入れたシホなのであった。





こうしてなんとか場も落ち着いてきたのでシホは学園長に尋ねた。

「それで学園長。本日はどのような事を……?」
「うむ。その件なのじゃがまだ来ていないネギくん達が来てから話そうと思う」
「ネギ先生も……? まぁ呼んでいますよね」

しばらくするとネギと、そして刹那の二人が世界樹前広場までやってきた。

「ネギ君、待っとったぞ」
「あ、あの……学園長、この人達は……? シホさんにアヤメさんや小太郎君もいる……」
「うむ。ここにいる者達は麻帆良学園に散らばっている魔法先生、および生徒達じゃ」
「えーーーー!?」

ネギの大声を皮切りに、挨拶を交わしていく一同。
刹那も知らなかったようで見るからに驚いている顔をしていた。

しばらくして場が落ち着いたのを見計らって学園長が本日の話し合いの議題を話す。


―――曰く、生徒の間で噂で持ち切りの『世界樹伝説』。
これはまさに本当の事で22年に一度の周期で告白という限定で願いを叶えてしまうというもの。

その話を聞いてシホはすぐにあるものを連想した。
そう、聖杯戦争にシステムが似ていると……。
しかも性質が悪い事に告白した人はその世界樹の魔力もあってか告白成就率は120%。
まさに呪い級の代物だという。

ネギが言う。

「恋人になれるならいいんじゃないですか?」
「とんでもない。人の心を永久的に操ってしまうなど魔法使いの本義に反する。好きでもない人と恋人になりたくないじゃろ?」

それを聞いてなにかしらショックを受けているネギをよそにシホは確かに、と思っていた。

「(告白限定とはいえ、願いを叶えてしまうなんて……聖杯みたいに汚れていないだけいいとしても性質が悪すぎる……絶対に阻止しないとね)」

シホはもうすでに協力する気でいた。
そんな時にシホの耳にある起動音が聞こえて来た。
そして即座に黒鍵を投影してその場所へと正確に放った。
遅れて神多羅木も無詠唱の魔法を放っていたがシホには及ばなかった。
黒鍵が突き刺さって遅れて魔法が炸裂してなにかしらの機械が粉々に砕け散る。

「学園長……視られていたみたいです」
「そのようじゃの」

ふと、シホは視線を横に向けるとなぜかさよもその場で聞いており、なにをしているのかと頭を悩ませるシホであった。
まぁ、いいかと思うシホをよそに話は進められていき、

「さて……たかが告白と思うなかれ! コトは生徒達の青春に関わる大問題じゃ。但し魔法の使用に当たってはくれぐれも慎重に! よろしく頼むぞ!! 以上解散!!」

その言葉を合図に人払いが解けたのか一気に人が集まってくる。
愛衣などは先ほどの機械の持ち主を追ったらしいがシホはそれよりさよに関して何故いたのかと聞こうと感じていた。

「シホさんにアヤメさんはこの後はどうしますか?」

そんな時に刹那がそう話しかけてきた。

「そうね……特に今は用もないことだしタマモと二人で市場を周っているわ」
「わかりました。それではまた後程」
「シホさん、またあとで」
「シホ姉さん、またな」
「姉貴、後で修行を手伝ってな」

そんな感じでネギ、カモ、刹那、小太郎達と別れたシホ。
個人的にもタマモとも話をしておきたいと思っていたのでちょうどいいという感じである。

「それで、タマモはさっきの話を聞いてどう思った……?」
「どうと申しますと、やはり聖杯戦争のシステムに似ているという感じでしょうか?」
「よかった。タマモも同じ感想だったのね」
「はい。願いを叶える……しかも告白限定と来ました。わたくしと致しましてはぜひ阻止したい案件ですね」

目がスッと鋭くなるタマモ。
自身の過去を振り返る時によく見せる目であり、シホとしてもあまり見たくないタマモの一面である。

「呪い級だから、絶対に阻止しましょう」
「はい。シホ様の仰せのままに……」

真面目なやり取りをしている時に、今度は個人用の携帯に着信が入ってきて画面を見るとなんとそこにはあの衛宮家族の家の番号でありシホは即座に電話に出る。

『あ、シホさんかい?』
「切嗣、さん……」

電話の相手は切嗣であったのだ。
それで思わず記憶も思い出せた事もあり涙腺が緩みそうになるシホ。

『ん? どうしたんだい? なにか泣きそうな声であるけど……』
「…………、いえ。大丈夫です。それでどうしたんですか?」
『うん。今新幹線内で掛けているんだけど明日には麻帆良に到着すると思うんだ。士郎やイリヤとアイリも来ている。だから学園祭ではシホさんに案内でもと思ってね……大丈夫かい?』
「はい! 大丈夫です。任せてください」
『そうか、よかったよ。士郎とイリヤも会いたがっているから明日はよろしく頼む』
「任せてください」
『それじゃ待ち合わせ場所は―――……』

そんな感じで打ち合わせもして、通話は終了した。

「シホ様? 大丈夫ですか……?」
「うん……精一杯持て成そうね」
「はい!」

こうしてシホの予定も計らずして決まった瞬間であった。


 
 

 
後書き
次から学園再編に入りますね。いつになるか分かりませんが……。 
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