八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百四十一話 お茶の後でその三
「そこは」
「あの人は凄いそうですね」
「もう高校時代どころか」
「中学生の頃からですか」
「いえ、小学生の頃から」
「それは凄いですね」
「ですから無茶苦茶なんですよ」
破天荒というかぶっ飛んでいると言うべきかだ。
「何もかもが」
「小学生からというのはまた」
「親父は特別です」
文字通りの特殊人間だ。
「ですからそうしたことでは」
「普通の人とは違う」
「そう考えられて下さい」
「そうですか」
「ですから」
それでとだ、僕は早百合さんに再び話した。
「僕と親父は違いまして」
「恋愛については」
「今のところにしても」
「縁がないですね」
「はい、無縁です」
もうこの言葉そのものだ。
「将来はやっぱりそうしたことも」
「経験したいですね」
「思っていますけれど」
それでもだ。
「今のところは」
「そうですか、ですが私もようやくわかりましたが」
「いいものですね」
「恋の様に甘いといいますが」
微笑んでこうも言ってくれた。
「本当にです」
「甘いですか」
「はい」
本当にという言葉だった。
「私としては」
「そうなんですね」
「この言葉を言った人は大悪人ですが」
「タレーランでしたね」
「あの人はどうも」
「フランス革命を生き残っただけあって」
あんな裏切り裏切られで状況が目まぐるしく変わっていった時代の中にあってだ。
「生き残った人ですからね」
「それだけあって」
「フーシェも酷いですが」
何でも犬猿の仲だったらしい、そしてナポレオンを陥れる時は手を結んだのだから余計に酷い話だ。
「あの人も酷いですからね」
「不倫に汚職に謀略に」
「悪の限りを尽くしていますね」
「そうした人の言葉ですが」
「恋は甘いものというのは」
「このことは事実です」
「そうなんですね」
「今はお団子の様だと申し上げておきます」
早百合さんはここではこう言った。
「このお店では」
「確かそこは」
「はい、コーヒーですが」
「恋の様に甘くは、でしたね」
「絶望の様に黒く地獄の様に熱くで」
天使の様に純粋でだ。
「そう言っていましたので」
「本来はコーヒーですね」
「ですが今はお団子を食べていますので」
「それでお団子ですね」
「お茶には甘いものは入っていません」
市販のアイスグリーンティーは入っているけれどこのお店のお茶は純粋なお茶でそうしたものは一切入っていない、だからそうは言えない。
「ですかお団子です」
「そうなりますよね」
「純粋かどうかはともかく」
「黒くも熱くもないですね」
「お団子は」
もっと言えばコーヒーもだ。
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