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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百四十話 二重奏その十

「そうも思います」
「そうですか」
「そして今です」
「早百合さんもですね」
「幸せを感じています。ショパンは逆に」
「ああ、失恋していますね」
 僕は三色団子を食べつつ応えた、木の串に刺さっている赤白緑の団子はもうお団子の定番と言っていいだろう。
「ジョルジュ=サンドと」
「それで意気消沈しました」
「不幸のドン底ですね」
「それに落ちたので」
 だからだというのだ。
「まことにです」
「幸せは、ですね」
「すぐ近くにあり」
「不幸もですね」
「その人には重大なことでも」
 それこそ一生を左右するまでにだ、時として。
「やはり客観的に見ますと」
「近くにある些細なものですね」
「そうかと」
「そんなものですね」
「義和さんもまた」
「幸福と不幸は」
「近くにある些細なもので」
 それでというのだ。
「幸せはです」
「僕が気付けば」
「すぐ手が届くでしょう」
「そうですね、僕自分を幸せだと思っています」
 僕は早百合さんにはっきりと答えた、それが出来た。
「家があって学校に通えて友達も多くて」
「だからですね」
「早百合さん達がいてくれて畑中さん達がいてくれて」
 八条荘があってだ、よく世界的な企業グループの経営者の一族で八条荘の大家として収入もあってと特別なことが言われる。確かにそうしたこともかなり幸せなことだけれど僕の幸せはこうしたことだけじゃない。
「それに親父もいますし」
「お父様ですね」
「本当に台風みたいな親父ですけれどね」
 親父についてはどうしても苦笑いで話してしまう。
「ですが」
「それでもですね」
「あれで結構いいところもあるんで」
 少なくとも暴力は振るわないし僕のことも見ていてくれている。
「あの親父もいてくれて」
「幸せですか」
「はい、本当に幸せは」
「身近にありますね」
「これ以上望んだら過ぎてるかも知れないですが」
 幸せがだ。
「お袋もいてくれたら」
「お母様ですか」
「もうこれ以上はです」
「望まれないですか」
「それ位ですね」
「はい、まあ」
「でしたら」
 それならとだ、早百合さんは僕に微笑んで話してくれた。
「必ずです」
「お袋のこともですか」
「適えられます」
「戻ってきますか」
「そうなると思います」
「そうですかね、本当に何処に行ったのか」
 こう早百合さんに話した。 
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