手伝わせない理由
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第三章
「そのことがあって」
「そうよ、皆あんたを高校は普通科に行かせてね」
「大学は経済学で」
「会社では事務や会計をしてもらってね」
そうしてというのだ。
「現場には出さなかったのよ、建築現場ってやっぱり危ないわね」
「ええ、ヘルメット被って作業服着て安全靴と手袋でも」
そうしたもので身体を守っていてもとだ、由梨も家の仕事なのでわかっている。
「危ないわ」
「そうでしょ、それでね」
「顔に怪我したり」
「身体に怪我をしてね」
「傷が残る様なら」
「そんなことあったらいけないからね」
だからだというのだ。
「皆あんたを現場には出さないの。他の女の人もね」
「皆なのね」
「そんなことがあったら駄目だから」
「うちの会社ではなの」
「そうしてるの、あんたは家族だから絶対にうちの会社に就職するから」
このことが決まっていたからだというのだ。
「そうしたのよ」
「そうだったのね」
「ええ、だから今思うのよ」
笑顔になってだ、祖母は由梨に話した。
「本当によかったわ」
「そうなのね」
「そう、だからね」
それでとだ、祖母はさらに話した。
「その奇麗な顔でね」
「今からっていうのね」
「式に出るんだよ」
「ええ」
祖母の言葉を聞いているうちにだ、由梨は家族そして親戚の自分への気持ち、想いをわかってだ。思わず目に涙を浮かべてだった。
そのうえで笑顔になって祖母にこう言った。
「今からそうしてくるわ」
「それでね」
「幸せになるわ」
こう祖母に言ってだった、由梨は式場に向かった。その彼女に祖母だけでなく家族の者達が来た。そうして奇麗な顔の由梨を幸せの場に送り出した。大切な彼女を。
手伝わせない理由 完
2019・5・8
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