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ある晴れた日に

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688部分:日の光は薄らぎその十八


日の光は薄らぎその十八

「そんなのはよ」
「そうかな。かなり怪しいけれど」
「いいだろ?とにかく俺もな」
「プレゼントは用意するんだね」
「当たり前だろ、最高のを用意しておくからな」
 このことは彼もはっきりと言った。
「さて、何がいいかな」
「私達もね」
「そうだね」
 千佳と加山は二人で顔を見合わせて頷き合っていた。
「何かいいものをね」
「用意しておこう」
「皆決まったね」
 恵美が最後に微笑んで言ってきた。
「明日夢は言うまでもないしね」
「ええ、そうよ」
 実際に彼女の隣から言ってきた明日夢だった。
「言うまでもないし聞くまでもないでしょ」
「その通りよ。それじゃあね」
「皆有り難うね」
 先は俯いて真剣な顔になって皆に述べた。
「未晴の為に。そこまでしてくれて」
「それはいいよ」
 桐生が微笑んでその咲に対して告げた。
「もうね。皆それは同じだから」
「同じなの」
「竹林さんの為だからね」
「それで未晴の為に」
「だからね。贈ろう」
 穏やかな声で彼女に話す。
「皆でね」
「うん、じゃあ」
「それで」
 皆笑顔で微笑み合ってそのことを約束する。雪が次第に多くなってきたので病院の中に入ることにした。しかし病院に入るところで恵美はふと後ろを振り向いた。
「んっ!?」
「どうしたの?恵美」
「ちょっとね」
 怪訝な顔で明日夢に返す。丁度病院の玄関への階段を登るところだった。
「感じたのよ」
「感じたって?」
「あいつの気配ね」
 ここで顔は曇った。
「それを感じたけれど」
「あいつの」
「そうなの。まさかと思うけれど」
「けれど。いないわよ」
「そうね」
 周りを見回す。確かに姿は見えなかった。
「気のせいかしら」
「そうじゃないの?意識してるとどうしてもね」
「感じるってことね」
「そうよ。気にしないでいいわよ」
「わかったわ。それじゃあ」
「中に入ろう」
 明日夢はあらためて恵美に言う。既に皆病院に入っている。残っているのは二人だけだ。
「寒いしね」
「そうね。それじゃあ」
「中に入ってそれでね」
「ええ」
「また未晴と」
 こう彼女に話した。
「一緒にいよう。中でね」
「そうね。それじゃあね」
「もう皆言ってるよ」
 こう言ってであった。皆を追いかける二人であった。今は二人はそれで未晴に考えを移した。
 しかしであった。病院の中を通り過ぎた一台の車の中に吉見がいた。彼が運転する外車であった。黒く塗装したポルシェに乗っているのである。
 そうしてその中で笑っていた。邪悪な笑みを浮かべて言うのであった。
「よし、これでいいね」
 こう言ってそのまま姿を消す。だが彼は知ってしまった。暗雲が太陽を覆おうとしていた。


日の光は薄らぎ   完


                 2010・1・21
 
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