戦国異伝供書
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第五十三話 三度南へその一
第五十三話 三度南へ
政虎は春日山に戻るとすぐに越後の政に戻った、越後の政は特産品や佐渡の金のお陰でかなり楽だった。
それで田をさらに増やし街もだった。
整え堤や道もよくしていき治める仕組みもよくしていった、だがその中でも彼は周りもっと言えば天下の状況を調べさせていた。
そして奥羽についてだ、彼は家臣達に苦い顔で言った。
「相模の北条殿も厄介ですが」
「はい、奥羽の伊達殿も」
兼続が政虎の言葉に応えた。
「厄介ですね」
「東国で勝手をしています」
「周りの諸家を攻めて」
「乱しているので」
「仕置きをですね」
「せねばならぬとです」
関東管領としてだ、政虎は言うのだった。
「考えています」
「そうですね、ですが」
「はい、奥羽にはです」
「関東と比べて」
「中々兵を出せません」
「越後から奥羽へ行くことは」
「まずありません」
道はあるがその道は実に細くまた人の行き来もない、越後の北の端である揚北衆の新発田城から北はもう別世界の様に離れているのだ。
それでだ、兼続も言うのだ。
「我等からもそうで」
「あちらからもですね」
「羽州は最上家や大崎家がありますが」
「どの家も」
「はい、越後にはです」
そういった羽州の諸家もというのだ。
「来ないですし来る道も」
「狭いので」
「どうしてもですね」
「あちらからも来ず」
「越後から北は」
即ち奥羽の地はというのだ。
「全く違う」
「そうした国ですね」
「ですから伊達殿への仕置きは」
「北条殿に対して以上にです」
どうにもというのだ。
「難しいです」
「そうですね」
「伊達殿は奥州探題」
その家柄だというのだ、つまり奥州の仕置きを行うということについては関東管領となった政虎と同じだというのだ。
「その立場でありながらです」
「勝手はですね」
「許せないですので」
「関東管領として」
「仕置きをしたいですが」
「行き来も難しいので」
「しかも先の関東攻めでは北条殿を降せませんでした」
政虎はこのことにつちいても言及した。
「今北条殿は武蔵や上野に再び兵を進めていて」
「はい、政もです」
今度は本庄が応えた。
「行い」
「再び足場を固めていますね」
「そのうえでどうも下総、上総そして安房をです」
この三国をというのだ、相模から江戸湾を挟んで東にある。
「狙っている様です」
「里見家の領地を」
「その様です」
「そうですか、では」
「機をあらためて」
「再びです」
「北条家への仕置きをですね」
「行います」
そうするというのだ。
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