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戦国異伝供書

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第五十一話 関東管領就任その四

「しかしな」
「北条殿がですな」
「長尾殿に攻められている」
「ならですな」
「北条殿は小田原に籠られる」
 晴信は氏康の戦い方を見抜いていた、政虎の鋭鋒を避けてあの堅城に籠ってやり過ごそうとするというのだ。
「ならばな」
「盟約を結んだ我等も」
「うむ、戦わぬにしてもな」
「出陣をですな」
「それをじゃ」
「考えねばなりませんな」
「そうなるであろうな」
 こう山本に言うのだった。
「その時は」
「そうでありますな、では」
「出陣のこともな」
「考えていきますか」
「今川殿もそうであろうがな」
 義元、彼もというのだ。
「盟約を結んだならばな」
「このことは当然ですな」
「そうなるな、ではな」
「その用意もですな」
「今は考えておくだけだが」
 それでもというのだ。
「していこうぞ」
「さすれば」
 山本は晴信の言葉に頷いた、晴信は政虎が関東に出兵している間に彼がすべきことを進めていた。そしてその政虎は。
 上野からさらに兵を進めていた、だがその彼のところにある報が来ていた。
「そうですか、北条の一万の大軍がですか」
「はい、城を囲み」
 旗本が政虎に本陣で話していた。
「そうしてです」
「攻め落とさんとですね」
「しています」
「わかりました」
 政虎は旗本の言葉に一言で答えた、そうしてこう諸将に言った。
「わたくしはこれより城の救援に向かいます」
「はい、ではどなたを送られますか」
 北条は政虎に問うた。
「この度は」
「わたくし自身が」
 政虎は北条の問いにこう答えた。
「そうさせて頂きます」
「殿ご自身がですか」
「幸いその城はこの本陣に近いので」
 だからだとだ、政虎はさらに言った。
「ですから」
「殿ご自身がですか」
「二十数騎程を引き連れ軽装で向かいます」
「いや、それは無謀ですぞ」
 柿崎は政虎のその話に驚いて声をあげた。
「幾ら何でも」
「いえ、わたくしが自ら馬に乗りです」
「二十数騎を引き連れてですか」
「城に入ります」
「一万の北条の軍勢が囲んでいる城を」
「はい、敵は若し我等が城を救いに来るなら当家の然るべき将帥がそれなりの兵を率いて来ると思うでしょう」
 政虎は柿崎に述べた。
「わたくしは主力を率いて南下すると」
「そこを、ですか」
「それが戦の王道です」
 普通の戦の仕方を考えるとそうなるとだ、政虎は言うのだった。
「ですがそれは時がかかり敵も備えを整えます」
「だからですか」
「はい、わたくし自らです」
「僅かな兵を以てですか」
「一気に向かい」
 そしてというのだ。 
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