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戦国異伝供書

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第五十一話 関東管領就任その二

「外はな」
「今川家とはより縁を深め」
「北条家ともじゃ」
 今まさに政虎が攻めんとしているこの家ともというのだ。
「縁を深めてじゃ」
「やがては」
「勘助の言う通りにな」
 軍師である彼の、というのだ。
「三国で結び」
「そのうえで」
「あの者に向かえる様にし」
「美濃にもですな」
「進める様にしよう」
「そうしますな」
「だからじゃ」
 今はというのだ。
「足場を固めるぞ」
「わかり申した、内に外に」
「それを整えていこうぞ」
 こう言ってだ、晴信は政虎が自分達に向かっていない今を好機としてそのうえで政を進めていくことにした。
 そして実際に北条家にも使者を送った、北条家の主である氏康は武田家の使者である甘利に対して笑って話した。
「武田殿に告げられよ、当家としてはな」
「この度のことはですか」
「願ってもなきこと」
「うむ、丁度な」
 氏康は甘利に話した。
「越後から客人が来ようとしておる」
「お客人が、ですか」
「貴殿等もよく知っているな」
「長尾殿ですか」
「そちらでは長尾殿と呼ぶか」
「お館様がそう言っておられますので」
 それでとだ、甘利は氏康に答えた。
「ですから」
「家臣である貴殿達もじゃな」
「長尾殿とお呼びしています」
「成程のう。それで話を戻るが」
「はい、長尾殿のこともあり」
「こちらとしてもじゃ」
 北条家にしてもとだ、氏康は笑って答えた。
「よきこと」
「では、ですな」
「武田殿に伝えられよ」
「手を結びたいと」
「やがて縁戚を結ぶか」
「はい、それでは」
「その様にな」
 北条家は快諾した、そして今川家もだ。
 義元は使者に来た板垣に心地よいという笑顔で答えた。
「もう言うまでもないでおじゃるよ」
「このことについては」
「当家は武田家と戦う理由はないでおじゃる」
 こう言うのだった。
「だからでおじゃる」
「このことについては」
「断る理由はないでおじゃる。ただ」
「ただ、とは」
「武田殿は随分と尾張のうつけ殿を気にされているでおじゃるな」
 義元は板垣にこのことを話した。
「そうでおじゃるな」
「よく話されています」
 その通りだとだ、板垣は義元に答えた。
「我等にも」
「そうでおじゃるな、しかしでおじゃる」
「織田殿はですか」
「大うつけでおじゃる」
 義元は巷での信長の評をそのまま信じていた、それで今もこう言うのだ。
「所詮は。まあ家臣の末席にでもでおじゃる」
「加えられると」
「麿は命までとは考えていないでおじゃる」
 攻める相手でもというのだ。 
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