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戦国異伝供書

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第五十話 再び向かい合いその三

「返り討ちに遭います」
「あの守りでは」
「勝てません」
 そうだというのだ。
「負けはしませんが」
「勝つことはですか」
「出来ないです」
 こう兼続に話した。
「ですから」
「この度は、ですか」
「武田が隙を見せない限り」
「我等もですね」
「戦わず」
 そしてというのだ。
「今はこの場で我等もです」
「守りを固めることですね」
「そうします、わたくしの考えでは」
 政虎は自分の考えも述べた。
「やはり攻めて」
「そうしてですね」
「勝つことがです」
 それがというのだ。
「望ましいですが」
「それは、ですね」
「出来る状況でないので」
「我等も陣の守りを固め」
「様子を見ます、ですが長くはいられないです」
 この川中島即ち敵地にというのだ。
「ですから」
「機を見てそのうえで」
「下がりましょう」
 政虎は不本意さを顔に出していた、彼としては武田家の軍勢を攻めて一気に勝利を収めたかったのだ。
 だがそれが出来る状況ではない、それがわかっているからこそ言うのだった。
「この度も」
「そうしますか」
「はい、その時が来ないことを祈ります」
 やはり雌雄を決したいのだ、だがそれは政虎の考えでだ。
 晴信は戦をしようとしなかった、ただ陣の守りを固めていた。そのうえで諸将に対して言うのだった。
「よいか、決してな」
「攻めぬことですな」
「間違っても」
「陣を崩さず」
「守りに徹するべきですな」
「このままじゃ」
 こう言うのだった。
「座っておれ、よいな」
「承知しております」
「お館様のお言葉の通りに」
「それではですな」
「我等については」
「このままですな」
「このまま守りを固めていくべきですな」
「兵達にはたらふく食わせてな」
 晴信は飯について言うことも忘れていなかった。
「そうしておくのじゃ」
「そのうえで力を養わせ」
「英気もですな」
「そしてそのうえで」
「万が一にも備えておく」
「そうしていきますな」
「そうじゃ、しかと守ってじゃ」 
 そのうえでというのだ。
「守っていくぞ」
「それでは」
「ではですな」
「守りを固め」
「そうして」
「そうじゃ、敵が去るのを待つのじゃ」
 上杉家の軍勢がというのだ。 
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