戦国異伝供書
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第四十九話 小田原へその九
「貴殿はこれより上杉家となり」
「そしてですね」
「それがしから名を差し上げたいですな」
「わたくしにですか」
「それがしの名から一文字」
それをというのだ。
「授けたいのですか」
「そこまでして頂けるのですか」
「上杉家を継がれるので」
だからこそというのだ。
「受け取って頂きます」
「わたくしが上杉様の名を頂くとは」
「それがしの名は憲政なので」
元服した時に授けられるその名はというのだ。
「その政から一文字」
「上杉様の家の名ですね」
「それを授けたいのですが」
「ではわたくしは」
「はい、景虎といいましたな」
「その名にですか」
「それがしの政をお渡しするので」
それでというのだ。
「政虎になりますか」
「政虎ですか」
「はい、上杉政虎です」
その名にというのだ。
「その名に」
「それでは」
「その名をですね」
「名乗らせて頂きます」
「その様に」
まさにと言うのだった。
「是非」
「それでは」
「そしてなのですが」
憲政は名を授けてからさらに言った。
「関東管領になられ」
「その叙任ですか」
「それはです」
「はい、西国となる越後ではなく」
「やはりです」
「関東となりますね」
「然るべき場において」
そこでというのだ。
「その叙任をです」
「わかりました」
「そして近いうちに」
憲政の話は続いた。
「上洛されて」
「上洛ですか」
「そして公方様にもです」
即ち将軍にというのだ。
「会って頂くことになります」
「そちらもですか」
「ありますが」
「わかりました」
景虎はまた素直に答えた。
「さすれば」
「その様にですね」
「させて頂きます」
こう答えたのだった。
「上洛の件も」
「それでは」
「その様に」
「では万事は」
「公に」
その為にと言うのだった。
「その様に」
「では」
「上洛もさせて頂きます」
こう言ってそうしてだった、景虎は上杉家を継いでそのうえで名を上杉政虎とした。そして上洛もすることになった。
こうして長尾家は上杉家となり家臣達はこのことを祝い宴を開いた。政虎は主の座で酒を飲んでいたがここでだった。
ふとだ、彼はこんなことを言った。
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