戦国異伝供書
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第四十九話 小田原へその二
「そうした方だからな」
「決して臆病ではない」
「そうだというのですな」
「うむ、だからまずは沼田城に入り」
上野の要地の一つであるこの城にというのだ。
「それでじゃ」
「あの城においてですな」
「北条家の軍勢を迎え撃つ」
「そうなりますか」
「そうなるのか、ではな」
そう思ってだ、実際にだった。
柿崎は自身が率いる先陣を先に進ませた、そうしてまずは沼田城を目指した。そして景虎も本陣において言った。
「今は戦はないでしょう」
「今は、ですか」
「ありませぬか」
「はい、ですが」
今はなくともと周りに言うのだった。
「沼田城に入れは」
「その時にですか」
「戦になりますか」
「あの城に入った時に」
「はい」
こう言うのだった。
「わたくしはそう見ています」
「左様ですか」
「では今は、ですか」
「周りに気をつけつつも」
「それでもですな」
「まずは沼田城に進む」
「そうします、ただ戦はないと思っても」
それでもとだ、景虎は周りにさらに言った。
「奇襲は有り得るかも知れません」
「だからですか」
「油断はしてはならない」
「そう言われますか」
「そうです、決してです」
このことはというのだ。
「怠りなきよう」
「承知しました」
「常に斥候を多く出しておきます」
「前にも左右にも」
「そして後ろにも」
「そうするのです、ただ上野を預かる北条家の将幻庵殿は知の人」
このことでよく知られている、初代早雲の子の人血である彼は北條家の重鎮そして当主氏康の知恵袋にもなっているのだ。
「状況を見極められてです」
「動かれる」
「そうした方ですか」
「あの御仁は」
「はい、ですから油断すれば」
自分達がそうすればというのだ。
「すぐに攻めてきます」
「それも奇襲を仕掛けてくる」
「そうしてきますか」
「その時は」
「おそらく」
そうだというのだ。
「ですから」
「物見、斥候は常に多く出し」
「敵の攻めに気をつける」
「そうしていきますか」
「これからも」
「そうです、敵の動きもです」
周りへの警戒だけでなくというのだ。
「見ていくべきです」
「ですか、ではです」
「物見の数を増やしていきます」
「これからも」
「そうしていきます」
「お願いします」
こう命じてだった、景虎は戦がない状況でも油断せず北条家の動きを警戒しつつ軍を進めていた。そしてだった。
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