戦国異伝供書
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十八話 去った後でその七
「かなりです、特に六郎が」
「海野六郎じゃな」
「はい、六郎は二人いますが」
海野六郎と望月六郎だ、この二人だ。
「しかしです」
「そちらの六郎の方がじゃな」
「はい」
まさにというのだ。
「水についてはです」
「優れた者じゃな」
「はい」
まさにというのだ。
「それこそ十勇士随一のです」
「水練の達人でか」
「水の術の使い手です」
「それはよいことじゃな」
「とかく岩や木の中ならば」
水の中だけでなく、というのだ。
「十勇士達はです」
「誰よりも速く進めるか」
「左様であります」
「そのことも頼もしいな」
「はい、拙者にとっては」
まさにと言うのだった。
「またとない家臣であり義兄弟であり」
「友であるな」
「左様であります」
まさにというのだ。
「十人共」
「そして十勇士達と同じ様にじゃな」
「拙者もです」
幸村自身もというのだ。
「水練に馬術にとです」
「そして忍術にもじゃな」
「日々励んでおりまする」
いざという時に備えてというのだ。
「日々」
「そうじゃな、そう考えるとな」
「忍術は置いておきまして」
これは特別な術だからだ。
「やはり武芸は」
「馬と水じゃな」
「この二つが第一かと」
「いざという時に逃げる為にも」
「そして普段進む為にも」
この時も考えてというのだ。
「その二つは」
「常にじゃな」
「鍛錬すべきかと。兵は馬には乗りませぬが」
「それでもじゃな」
「よく歩けば}
それでというのだ。
「進むのもです」
「速いのう」
「そして泳ぎも知れば」
「川も進めるしな」
「船もなく流されず」
そうしてというのだ。
「進めるので」
「よいな」
「ただ戦の場に強いだけでは真の強兵ではありませぬ」
「進む時や退く時には」
「素早ければ」
それがというのだ。
「最もよいので」
「そうじゃな、ではな」
「兵達の鍛錬もですな」
「それを入れていこう」
こう言ってだ、晴信は領国を治めると共に家臣達だけでなく兵達の鍛錬も進めていった。戦がなくとも彼は動いていた。
それは景虎も同じだった、彼は川中島から帰ってすぐにだった。
甲斐と越後の境を固めさせてそうしてであった。
ページ上へ戻る